本記事は、天田幸宏氏の著書『個人事業主1年目の強化書』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
「共同経営」の誘いに気軽に乗らない
共同経営がうまくいく確率は
10%未満独立して事業や仕事が安定してくると、様々なオファーが舞い込むようになります。それはうれしいことですが、何でも「YES」というわけにはいきません。
とりわけ、「共同経営」の誘いには注意が必要です。
長年、3,000人以上の多くの起業家を取材してきてわかったことがあります。残念なことに、共同経営でうまくいっているケースはほとんどないのです。
とくに独立して数年程度での共同経営はよくて1年が限度。それ以上続いているケースはほとんど記憶にありません。共同経営がうまくいくのは、実質ナンバー1とナンバー2が明確になっているケースです。
共同経営においてモメやすいのは、「金の使い方」と「金の管理方法」についてです。いまや日本有数のカフェチェーンXも最初は共同経営だったそうです。
しかし、あるときから事業資金の管理方法をめぐって創業者の2人は対立。1人は会社の通帳すら見せてもらえなくなり、半ば追い出される形で会社を去ったというのは業界では有名な話です。
相手に依存する共同経営はとくに注意
なぜ、共同経営においてトラブルが絶えないのでしょうか。それは、意思決定の方法や責任の所在が不明確なままで、事業をはじめてしまうことが多いからです。
なんてことはないのですが、経営経験が未熟なうちは、こうしたことさえ決めずに事業をスタートさせてしまうことが意外と多いのです。
また、価値観の異なる相手と一緒に経営を行うこと自体、不確定要素とリスクが満載なのだという意識の低さも影響しているでしょう。
さらに、うまくいかない原因のひとつは、相手に依存してしまうことにあると思います。たとえば、自分の足りないものを相手に埋めてもらうというのも一種の依存になります。
はじめはよくても関係が一度悪化するとそれが火種になり、決裂へとまっしぐらです。
本来、パートーナーシップは多種多様のはずです。共同経営だけが正解ではありません。一歩引いた形で「社外取締役になる」というのもよいですし、資金提供だけの「出資」というのも立派なパートナーシップです。