この記事は2021年12月24日にSBI証券で公開された「<日株戦略特選!>来年度大幅増益・株価上昇期待の銘柄は!?」を一部編集し、転載したものです。
2021年は12月第5週(27日~30日)を残すのみとなった。昨年末の終値は、日経平均株価が2万7,444円17銭、TOPIXが1,804,68ポイントだったので、2021年の日本株は何とか前年末比プラスを維持して終わることができそうだ。
2022年はどんな年になるか。十干十二支(じっかんじゅうにし)でいうと「壬寅(みずえのとら)」で、「壬」と「寅」はともに「始まる」に縁がある漢字。寅年だけを振り返っても「~が始まる」で表現できる出来事は多かったようだが、それが波乱の始まりであることが多く、来年は注意深く物事を運ぶことで報われるかもしれない。
今回は「2022年の活躍銘柄」を予想する。
目次
1. 2022年に大幅増益 & 株価上昇が期待できる銘柄は?
企業業績の方向感を重視し、大幅増益が見込めるにもかかわらず、割高感が乏しい銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行った。条件は以下の通り。
・東証1部上場銘柄
・銀行、保険、証券・商品先物を除く
・時価総額500億円以上
・アナリストカバレッジが2社以上ある
・今期市場予想営業利益(Bloombergコンセンサス)が黒字転換、または10%超の営業増益予想
・今期市場予想EPS(同)が過去4週間で上昇
・来期・再来期の市場予想営業増益率が10%超
・時価総額(12月23日現在)が来期市場予想営業利益の25倍未満
下の図表は、上記をすべて満たした銘柄を、来年度の予想営業増益率が高い順に並べたものだ。
2. 抽出銘柄を解説
上に掲載した図表1から抽出した銘柄の一部について、投資ポイントを紹介する。
2.1. 抽出銘柄解説(1) ―― 株式会社ラウンドワン
屋内型複合レジャー施設を展開。ボウリングやゲーム機器、カラオケ、各種スポーツ、ビリヤード、ダーツなど多くの遊戯施設を楽しめる。
日本を中心に米国などにも展開。2021年9月末時点の店舗数は、国内98、米国46、ロシア1、中国1など合計146店舗だ。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2021年の3期は売上高が609億円と、前期比41.8%の減少。営業損益は192億円の赤字となった。
会社側は2021年11月5日(金)、2022年の3期の業績予想を修正。新型コロナウイルスからの回復が遅れたこともあり、予想営業利益は当初見通しの61.2億円から6.5億円に下方修正された。しかし、時短要請に伴う協力金計上があり、予想経常利益は53.9億円から63.2億円(黒字転換)に上方修正された。
平常時(2019年の同月)と比較した月次既存店売上高は、10月9.5%減から11月4.1%減とマイナス縮小。足元はオミクロン株感染拡大で不透明感は残るが、それが一巡して、経済活動再開が本格化すれば、業績の回復は続くと市場はみている。
市場予想営業利益は今年度の11億円から、来年度は130億円、再来年度が152億円と拡大が見込まれている。なお、株価は2019年末が1,058円であり、コロナ前の水準以上にはなっている。
▽株式会社ラウンドワンの値動き
期間:2021年7月1日〜2021年12月24日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
2.2. 抽出銘柄解説(2) ―― ミネベアミツミ株式会社
ベアリングや小型モーターを得意とする総合電子部品メーカー。2017年にミネベアとミツミが統合して誕生した。情報通信機器や家電、自動車制御モーターに使われる小型ボールベアリングでは、世界シェア60%を誇る。
売上構成比(前期)はボールベアリングなどの機械加工品が16%、モーターなどの電子機器が35%、アナログ半導体や機構部品などのミツミが36%などとなっている。
2022年3期、第2四半期(11月5日発表・累計)は売上高5,302億円(前年同期比14.8%増)。営業利益196億円(前年同期比113.3%増)。これを受け、2022年3期の営業利益は870億円から900億円へと上方修正(今期2回目)された。
主力のミニチュアボールベアリングは、EV化が進むことによって、1台当たりの搭載数量が加速的に増加すると期待される。また、オムロンの半導体工場を買収しており、アナログ半導体も中期的成長ドライバーとして期待できそうだ。
同社はSBI証券企業調査部の調査対象銘柄だ。同部は2021年11月30日(火)付けのレポートで、目標株価を4,000円から4,450円に引き上げた。投資判断は「買い」を継続としている。構造的に退潮が懸念される事業が見当たらないため、当面は増益基調が続きそうだ。
▽ミネベアミツミ株式会社の値動き
期間:2021年7月1日〜2021年12月24日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
2.3. 抽出銘柄解説(3) ―― 富士電機株式会社
1923年に古河電気工業と独シーメンスの合弁企業として設立された。電気エネルギーを効率的に使うパワーエレクトロニクスが技術的基盤。一般産業向けに広く普及するパワー半導体のほか、プリンタに使われる感光体、HDDを構成するメディア媒体、自動販売機、コーヒーマシンなど広範囲にわたる製品を開発し、販売している。
2021年3期に売上高は8,759億円(前期比2.7%減)と伸びなかったが、営業利益は485億円(同14.3%増)、純利益419億円(同45.6%増)と最高益を更新。このうち、売上高1,575億円、営業利益177億円を確保した半導体事業がけん引役となっている。
2022年3期、第2四半期(累計)は売上高3,976億円(前年同期比11.4%増)、営業利益163億円弱(同207.7%増)。会社側では通期の予想営業利益は670億円(前期比37.9%増)と見込んでいる。
半導体事業の中心はパワー半導体だ。高い電圧を扱うことができる半導体で、発熱・破損しやすいものの、電力損失を少なくできるのが特徴。パワー半導体の使用により、エアコンの消費電力は「10年で40%減少した」といわれる。
なお、パワー半導体の世界トップ企業は独インフィニオンテクノロジーで、国内では三菱電機がトップ、同社は第5位。
EV(電気自動車)やハイブリット車では、ガソリン車に対して数倍から10倍程度のパワー半導体が必要になるといわれており、今後も市場は拡大し、同社業績も成長しそう。
SBI証券 企業調査部は同社もカバーしている。予想営業利益は2022月3期680億円、2023年3期788億円、2024年3期888億円と拡大の見込み。2021年11月8日(月)付けのレポートでは、目標株価は7,000円で、投資判断は「買い」と評価している。
期間:2021年7月1日〜2021年12月24日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
2.4. 抽出銘柄解説(4) ―― JSR株式会社
化学メーカーであり、半導体やライフサイエンス(生命科学)に注力している。売上構成比(前期)は半導体やディスプレイなどの材料を主力とする「デジタルソリューション」が50%、自動車向けにABS樹脂を供給する「合成樹脂」が26%、バイオ医薬品を開発する「ライフサイエンス」が18%となっている。
2021年の3期は、売上高4,466億円(前期比5.4%減)となり、営業損益は616億円、最終損益は551億円。それぞれ赤字だった。エラストマー(合成ゴム)事業が自動車生産停滞の影響を受けたのだ。
2022年の3期は回復傾向。2021年の4期~9期の売上高は、1,682億円(前年同期比20.8%増)、コア営業利益は230億円(同38.5%増)、営業利益は228億円(同60.9%増)。
2022年の3期(通期)について会社側は、コア営業利益を95億円増額の525億円に、営業利益を93億円増額の523億円に上方修正した。
祖業でありながら業績不振のエラストマー事業について、2021年5月にENEOSへの売却を決定。「デジタルソリューション」と「ライフサイエンス」への集中する体制となった。
デジタルソリューションの主力である半導体用フォトレジスト事業では、最先端の露光技術であるEUV(極端紫外線)に対応し、高い市場シェアを有している。9月には米国のインプリア社の完全子会社化を決定。この会社は回路線幅が3nmから1nmに移行する時に採用が予想される「メタルレジスト」の技術を有している。半導体用フォトレジスト事業の競争力はさらに強化された。
同社についてはSBI証券企業調査部がカバー。2021年12月8日(水)付けのレポートでは、目標株価4,300円、投資判断「中立」としている。
▽JSR株式会社の値動き
期間:2021年7月1日〜2021年12月24日(日足)。当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数
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