「魚民の虫1000匹混入事件」からみる企業のコンプライアンスが重要な理由
(画像=なってぃ/stock.adobe.com)

飲食店の食事に虫が…。このようなことは昔からあることだが、最近はSNSの普及もあり、その情報が真実かフェイクかに関わらず、短時間で拡散するようになった。最近も「魚民」のモツ鍋に虫が混入していたという情報が一気に広まった。「飲食店とSNS」を考える。

「虫混入」のツイートが瞬く間にネットで拡散

2021年11月16日、Twitterで「魚民 赤羽店やばすぎた」「モツ鍋頼んだら、1,000匹くらい虫が入ってた…」と、画像付きであるユーザーが投稿した。画像には、別の皿に取りわけたモツ鍋の表面に無数の虫が浮いている状況が写っていた。

この投稿は、瞬く間にネット上で拡散した。そして、ウェブメディアの「J-CASTニュース」が魚民を運営するモンテローザに取材をしたところ、モンテローザ側は虫が混入していた点について事実だと認め、謝罪の言葉を語ったようだ。

騒動のことがすぐに社内共有されていなかった?

もちろん、料理に虫が混入すること自体、全く褒められたことではないが、飲食店を多数展開している企業であれば、このようなことが起こることも想定しておくべきだろう。起こる可能性のある事態をあらかじめ考慮しておけば、実際に虫が混入してしまったときにとるべき対応を決めておける。

モンテローザもこのような「危機管理マニュアル」的なものを社内で用意していたと思うが、今回の魚民における虫混入では実際にはどのような対応をとったのか。

報道によれば、虫の混入があった旨を客側が店員に伝えると、不在にしていた店長の代理を務める店員から、お詫びとしてデザートをサービスする提案があったという。その後、モツ鍋などの料金を無料にする提案もあったが、結局、食事代が全額無料になったようだ。

今回は、現場のこの対応についての是非には触れないが、報じられている内容の中で問題と言えそうなことがひとつある。モンテローザ側がこの騒動があったことを知ったのは、お客様窓口にあった問い合わせからだったということだ。

危機管理において「迅速な情報共有」は最も重要な要素のひとつである。報道内容が真実であるならば、類似の別のトラブルも本社で迅速に共有されていない可能性があり、再発防止対策などが疎かになっていることも考えられる。

メニューに問題が起きたとき、飲食店はどう対応すべきか?

前述の通り、飲食店で出されたメニューに何らかの問題があると、今の時代、SNSですぐに拡散する可能性が高い。そのため飲食店側は、もしそのことが紛れもない事実であれば、謝罪や今後の対応などについてすぐに何らかの発信をするのがベターだと考えられる。

具体的には、店舗や運営会社の公式ページで「お詫び」などを掲載したり、店舗の公式TwitterアカウントでそのURLを共有したり、といった具合だ。

もちろん、具体的な再発防止策を検討するのには一定の時間を要するが、「第1報」としてのお詫びや今後の方針などはすぐに発信するべきだろう。そのような迅速な対応が、最終的に客からの早期の信頼回復につながるケースが多い。

「バイトテロ」に対する対策・対応も重要

ここまで、魚民のモツ鍋に虫が混入していたトピックを紐解きつつ、一般論として飲食店側がすべき対応について考えてみたが、「飲食店とSNS」という切り口では、バイトテロの話題も避けて通れない。

「バイトテロ」とは?

バイトテロとは一般的に、飲食店やコンビニなどで働くアルバイト店員が店内で不適切な行為をする様子をSNSに投稿し、その投稿が炎上することを指す。アルバイト店員にとってはちょっとしたいたずらのつもりでも、店舗経営に大きな影響が出るケースが少なくない。

店側はどのようにバイトテロを防止する?

店舗側は、バイトテロを完全に防ぐ手立てはない。仮に、店舗内にスマートフォンなどを持ち込むことを禁止しても、休憩スペースに店舗の食材や商品を持ち込み、悪ふざけに使われる可能性もあるからだ。

バイトテロが極力起きないようにするためには、SNSのリスクに関する研修をアルバイト店員に対して行うなど、日頃から対策を講じることが大切である。店舗とアルバイト店員の信頼関係が高まるよう努めることも対策になる。「店舗に迷惑はかけたくない」と思ってもらえれば、自然とバイトテロが起きるリスクは小さくなる。

もしバイトテロが起きてしまったら?

もしバイトテロが起きてしまったら、出した食事に虫が混入したケースと同様、早期に適切な対応をとることが非常に重要となる。どのような形で謝罪をするのか、店舗の運営会社は事前に決めておくのが賢明だ。

「対岸の火事」だと思わずに

スマホが広く普及したことで、店舗を訪れる客の多くも、アルバイトとして働く店員の多くも、当然のようにスマホを持っている。そのスマホが店舗運営を揺るがす騒動の火種となることを、改めて店舗責任者や経営者を認識しておくべきだ。

大手飲食店の料理やスーパーマーケットの商品に問題が発生した、というニュースを目にすることは少なくないと思うが、「対岸の火事」だと思わず、危機意識を常に持つようにしたい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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