ストロングブームに幕?「低アル」流行の兆し、主要三社の戦略は?
(画像=SteveCukrov/stock.adobe.com)

アルコール濃度が高めの酎ハイ系飲料が席巻し、「ストロングブーム」が起こった日本だが、最近は逆に「低アル」ブームの兆しが見える。各社が続々と低アルコールの商品を発売しており、売上も好調だという。なぜ、今「低アル」が広がりつつあるのだろうか。

「低アル」ブームの兆し

低アルコールの酒類が増えている主な要因は2つある。キーワードでいえば「健康志向」と「ESG投資」だ。

アルコールの過剰摂取は、健康を害する原因となる。アルコール依存症や急性アルコール中毒だけでなく、飲むたびに肝臓などに負担がかかり、肥満にもつながる。肥満が進めば、生活習慣病の発症リスクが高まる。

最近、「ESG投資」という言葉をよく目にするようになった。ESGは「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の頭文字をつなげた言葉で、これらに配慮している企業に対して積極的に投資することを「ESG投資」と呼ぶ。

前述のとおりアルコールはさまざまな健康被害の原因になるため、ESG投資の観点ではアルコール度が低いお酒を販売している企業のほうが投資家から評価されやすい。そのため、各社は低アルコールの製品にシフトしているのだ。

アルコール飲料各社の「低アル」戦略を解説

各社の低アル戦略を見てみよう。

アサヒ:2021年6月に「BEERY(ビアリー)」を発売

低アル製品で先行しているのがアサヒで、2021年6月にアルコール度数を0.5%に抑えた「BEERY(ビアリー)」を発売している。BEERYの公式サイトでは、以下の文が掲載されている。アサヒの微アルに対する考え方を如実に示す文章なので、そのまま引用したい。

「時代は変わった。みんな、一日の中に、心地いい時間を、自由に見つけている。そんな時間には、ビールのようなうまさを楽しめて、ちょっと心地よくなれるくらいが最高だ。新しい時代の、新しい楽しみ方。それが『微アル』。いよいよ、日本に『微アル』の時代がやってくる!」※引用:BEERY公式サイト コンセプト

これまでは、「何かをしながらビールを飲む」というシーンはあまり多くなかった。ビールはアルコール度数がある程度高いため、酔っぱらいながら何かをするというのは、あまり心地良いものではなかったからだ。

しかし、微アルの商品であれば料理やゲーム、読書などをしながら心地良い酔いも同時に楽しめるという。

サッポロビール:2021年9月に「The DRAFTY(ザ・ドラフティ)」を発売

サッポロビールも2021年9月に低アルコールの商品を発売している。アルコール度数が0.7%の「The DRAFTY(ザ・ドラフティ)」だ。アサヒと同じように、サッポロビールが公式サイトに掲載している文章をそのまま紹介しよう。

「麦芽100%生ビールを原料にビール好きが納得するうまさを実現。もっと自由に、あのうまさと、あの嬉しさを。アルコール度数0.7%なので、ココロにもカラダにも気兼ねすることなく、自分時間をより自由により楽しく過ごすためのビールテイスト飲料です。」※引用:The DRAFTY公式サイト

強調している点はアサヒビールと似ており、さらに「微アルコールあるある」として「明日は早朝会議、でも大丈夫。」「残業終わり、これなら気軽に。」などを紹介している。

キリン:アサヒやサッポロビールの様子を伺っている?

最近キリンはノンアルコールや低アルコール商品の開発に注力しており、これらの商品の販売数量を2021年までに2018年比で115%にする目標を立てた。その理由のひとつが、飲酒による健康被害だ。

しかし、実際に「低アル」「微アル」の商品が増えているわけではなく、今のところは先行するアサヒやサッポロビールの様子を伺っているように見える。

ストロング系はもうブーム終了?

では、ストロングブームは間もなく終わってしまうのだろうか。民間調査会社のインテージが実施した調査によると、酎ハイやビールなどの酒類うち、アルコール度数が9%台の商品の販売金額シェアは、2021年1月から8月まで連続で低下している。

ストロング系の商品のアルコール度数は9%台だ。2020年の販売金額シェアは34.4%だったが、2021年1〜10月は29.0%まで低下している。まだストロング系を楽しんでいる人は多いと思うが、それでも以前よりは減っていることになる。

アルコール飲料を販売しているメーカーは、今後はどのような商品が消費者に「刺さる」のかを知るために、常に流行を先取りしなければならない。当面は低アルで攻めることになるだろうが、すでに「ポスト低アル」を考えているメーカーもあるかもしれない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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