CEOにふさわしい人物像とは

それでは、企業はどのような人物をCEOに選任すべきだろうか。

CEOに求められる資質

「CGS ガイドライン」(令和4年再改訂)には、CEOに求められる経営力について言及した部分がある。「各社が置かれた経営環境に応じて検討されるべきものであり、普遍的なものは存在しない」という前置きがありながらも、ある程度共通性のある必要な資質・能力はあるとしている。その共通性のある必要な資質・能力として、下記の7つが挙げられている。

  • 困難な課題であっても果敢に取り組む強い姿勢(問題を先送りにしない姿勢)と決断力
  • 変化への対応力
  • 高潔性(インテグリティー)
  • 胆力:経営者としての「覚悟」。企業価値向上の実現に向け、個人的なリスクに直面しても限界を認めず、利害関係者からの批判を乗り越え果断に決断する力
  • 構想力:経営環境の変化と自社の進むべき方向を見極め、中長期目線に立ち、全社的な成長戦略をグローバルレベルで大きく構想する力
  • 実行力:構想した成長戦略を実行する力
  • 変革力:業界や組織の常識・過去の慣行に縛られない視座を持ち、組織全体を鼓舞しつつ、「あるべき像」の実現に向けて組織を変えていく力

コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(令和4年再改訂)

この7つは「信頼できるリーダーであること」と「変化に柔軟に対応できること」の2つに集約することができるだろう。

信頼できるリーダーであること

CEOに求められる要素としては、リーダーシップが欠かせない。

CEOは会社の経営陣を統括して企業の価値を高めることが求められるため、社内外から信頼される人物であることが非常に重要である。

いかに自社のビジネスに対する知識や経営に関する知識が備わっていても、周囲の意見を無視する人物や、逆に周りからの影響を受けやすく次々と方針を変えるような人物では、安心して社員はついていけないだろう。

変化に柔軟に対応できるリーダーであること

経営環境や経営課題は、日々変化する。CEOは自社の企業が置かれた環境の変化に対応しながら、同時に日本全体が置かれた変化も見据え、足元の対応と未来を見据えた対応の両方の舵取りが求められる。

例えば、国内ではコロナ禍や原材料費の高騰を経て、現在は再び人材不足が問題となっている。

労働人口の減少問題は、言うまでもなく少子高齢化に伴って発生している。働き方を見直すことによる労働参加率の上昇といった取り組みだけでは補えなくなるだろう。

高付加価値型の産業構造にシフトする流れが避けられず、それに伴うデジタル投資が不可欠となる。