【上場1期前】主幹事証券会社の選定など
上場1期前までに主幹事証券会社の選定を行っておくことが必要だ。ただ状況が許すのであれば上場2期前、3期前など早い時期から選定を行うことをおすすめしたい。主幹事証券会社の役割は、主に以下の通りだ。
- 上場する市場の選択についてのアドバイス
- 上場に向けたスケジュールの作成
- IPO企業の成長戦略の分析
- 証券取引所の上場審査に提出する書類の作成
- 証券取引所の上場審査についてのアドバイス
- 株式の売り出し・公募についての助言
特に上場する市場をどこにするかの選定は重要だ。市場によっては、株式の取引量が少なく取引が成立しない場合もある。そうなると投資家に見つけてもらうことが難しくなる。また市場ごとに上場基準が異なる点にも気をつけておきたい。以下では「東証1部」と「東証2部」の上場基準の一部を紹介する。
東証1部、東証2部でも上場基準にかなり大きな違いがあることが分かるだろう。自社がどの市場基準をクリアできるかをしっかりと考えてから上場市場を決定しよう。主幹事証券会社は、上場後も情報公開や市場対策についてアドバイスをしてくれる存在となるため、慎重に選びたい。また上場2期前までに改善できていない不備があれば改善することも重要だ。
また2022年4月4日からは、東証1部、東証2部などではなく市場再編が行われ名称も変更となる。
いまからIPOを目指す企業は、新しい市場でのIPOについても確認しておこう。見直し後の市場区分は下記の3通りとなる。
- プライム市場
- スタンダード市場
- グロース市場
上場申請
上場1期前から引き続き改善した経営体制を運用していくことになる。また主幹事証券会社の審査を経て問題がなければ、証券取引所に提出する上場申請書類などの必要書類を作成し上場申請を行う。証券取引所の上場可否の審査には、一般的に2~3ヵ月程度の期間がかかり審査に通過すると上場承認が下り株式上場が実現する。
なお上場が決定したら主幹事証券会社と株式の公募・売り出しについて確認することも忘れてはならない。一般投資家へ公募・売り出しをする場合「有価証券報告書」の作成も必要だ。さらにその後は、自社の関係者や取引先だけでなく一般の投資家も株式を持つこととなるため、チェックの目が厳しくなることも予想される。
引き続き経営の問題点や改善点について監査法人にアドバイスをもらおう。
IPOのデメリット
IPOを行うことで信用度が高まったり資金調達がしやすくなったりする点は、大きなメリットだ。しかし上場を目指す企業としての社会的責任も生じるため、この責任をデメリットと捉える企業もあるだろう。具体的には、どのようなデメリット(責任)が生じるのか確認しておこう。
デメリット1:上場までの手続きが煩雑
上述したようにIPOを検討し始めるのは、上場希望時期の3期以上も前である。そのため上場を考えてから上場までの長い期間監査を受けたり指摘点を改善したりする作業を行わなければならない。またしっかりとした社内規定の策定も必要だ。これらの手続きを煩雑だと感じる企業も少なくないだろう。
デメリット2:コストがかかる
IPOの準備は、自社の中だけで行えるわけではなく監査法人へショートレビューを依頼したりショートレビューで指摘された問題点を改善したりするため、外部の手を借りることが必要だ。具体的には、以下の費用が想定される。
- 監査費用
- 株式事務代行手数料
- 主幹事証券会社への上場準備手数料
- 主幹事証券会社への上場成功報酬
- IRコンサルティング料
また自社内でIPOプロジェクト専属の従業員確保も行っておきたい。そのためIPOを検討する前よりもコストがかかってしまうのは確実だ。
デメリット3:市場や投資家から経営状態を厳しくチェックされる
IPOを検討する前の時点で自社の経営状態を気にしているのは、関連会社や取引先、金融機関のみだったかもしれない。しかし上場後証券取引所で株の売買が行われるようになると市場や投資家から経営状態をチェックされるようになる。上場会社は、経営状態や財務状況についての情報公開が必須となるため、少しでも悪化の兆しが見えたら厳しい指摘が来ることも覚悟しておかねばならない。