お酒好きの人の中には、「ZIMA」(ジーマ)を好んで飲んでいた人もいるはずだ。そんなZIMAの日本撤退が明らかになり、一部のZIMAファンが市場で出回っているZIMAを買い溜めする動きも出ている。なぜZIMAは販売終了となったのか。販売が再開される日は来るのか。
米国で販売終了後も続いていた日本とZIMAの関係
ZIMAの歴史は1993年までさかのぼる。ZIMAはアメリカのビール大手メーカー、モルソン・クアーズが米国内で1993年に発売を開始したアルコール飲料で、日本では1997年に発売が始まった。
「透明なビール」「クリアなビール」といったコンセプトの低アルコール飲料として、日本でも若者などを中心に支持を集めた。ZIMAは当初、発泡酒として製造されていたが、その後は果実酒をベースとしたリキュールとして販売されてきた経緯がある。
ZIMAは2008年にアメリカ国内で販売が終了したあとも、日本での販売は続いた。しかし報道などによれば、冒頭で触れた通り、日本国内でも2021年末でZIMAの出荷が終わった。
日本での販売を担当していたのはモルソン・クアーズの日本法人モルソン・クアーズ・ジャパン(Molson Coors Japan Co., Ltd.)だが、同社は2021年末で業務を終了し、ZIMAとともに取り扱っていたクラフトビール「ブルームーン」も出荷も終えているという。
いまこの時点でZIMAを購入したいなら、ZIMAの店舗在庫が残っている店を探すしかない。
2021年、ZIMAに販売終了の兆しはみられなかった
ZIMAに関しては、2021年もプレスリリースでさまざまな取り組みが発表されており、販売終了の兆しはみられなかった。
例えば2021年1月には、プロレス選手が監修した特別な味わいのコラボZIMAが発売された。7月には、ZIMAと料理の組み合わせを提案する新サービスを特設サイトで展開するなど、コロナ禍における家飲み需要にも対応できるよう動いていた。
さらに、従来のフレーバーに加えて「レモン&ライム」「オレンジ&カシス」を発売するなど、コロナ禍においても攻めの姿勢を崩していない印象だった。しかしこのような流れの中、なぜZIMAの日本販売が終了することになったのだろうか。
その理由が書かれたある1枚の書面が、Twitter上で投稿されている。「お得意様」向けに2021年11月付で送付した書面だ。
ZIMAが販売終了に至った経緯は?
その書面では、モルソン・クアーズ・ジャパンの事業を終了することや、2021年12月31日をもってZIMAなどの製品を供給できなくなること、そしてこのような形に至った理由について、以下のように説明されている。
「18ヵ月にわたり、ジーマの再活性化、ポートフォリオの変更及び売上を拡大するための新販売モデルの導入等の業績改善を図る変更を実施してまいりました。残念ながら、これらの変更は結実しませんでした。また、克服し難い重大な新型コロナウイルスの影響は、今後も無くなりません」
2021年11月から「18ヵ月」さかのぼると、2020年5月ということになる。このころは日本国内でも新型コロナウイルスの感染が全国に広がり、1度目の緊急事態宣言が出ていた時期だ。
ZIMAはバーや居酒屋でも多く飲まれていたため、おそらくこのころから業績悪化が顕著になり始めたのではないか。そして前述のような、家飲み需要の拡大に対応するような取り組みを進めたものの、事態が好転することはなかったということなのだろう。
ちなみに、現時点ではモルソン・クアーズ・ジャパンの公式ウェブサイトで、事業終了などに関するお知らせは掲載されていない。
(モルソン・クアーズ・ジャパンの公式ウェブサイト https://molsoncoors.jp/top.html)
日本で再び販売される日は来るのか?
ZIMAは、日本での出荷をすでに終えた。日本で再びZIMAが販売されることはあるのか。現時点では、見込み薄かもしれない。
なにしろ、すでに製造・販売元のモルソン・クアーズの日本法人が販売終了したのだ。別の輸入代理店が販売をやめたのであれば、ほかの代理店が輸入販売を開始することにも期待を持てるが、今回はそういったケースではない。しかも2008年には、ZIMAの販売は本国アメリカですでに終了している。
アルコール業界の苦境を物語るZIMAの販売終了
コロナ禍の影響はZIMAの販売元だけではなく、アルコール飲料を製造するさまざまな企業に及んだ。特に業務用販売の売上が落ち、業績の急速な悪化を余儀なくされた企業も少なくない。
コロナ禍で健康志向が高まったことに着目し、アルコール度数を抑えた商品を展開する動きもあるが、コロナ禍が完全に収束しなければ、コロナ禍の間の損失を穴埋めできるような業績のV字回復はなかなか難しそうだ。
ZIMAの販売終了は、アルコール業界の苦境を如実に物語る結果となった。いずれにしても、一刻も早いコロナ禍の収束を祈るばかりだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)