「トップダウン」と「ボトムアップ」のメリットとデメリット

トップダウンとボトムアップによる経営手段をメリットとデメリットから整理して見よう。

「トップダウン」のメリットとデメリット

トップダウンのメリットとデメリットには、以下のものが考えられる。

【メリット】
・やるべきことが明確になり効率的な企業運営を可能とする
・意思決定が迅速で他社に後れを取ることなく新商品の開発や新しい分野への進出が可能となる
・従業員に経営方針が浸透させ組織全体の一貫性や一体感、連帯感を醸成できる
・経営陣が優れていれば現場の声に惑わされず革新的変化を起こすことも可能になる
・企業の危機的な状況や緊急を要する事態において初期対応を早められる

【デメリット】
・経営層に判断能力がないと経営の危機や企業の存続が危ぶまれ企業全体に悪影響を与える
・経営層のみの意見ばかり通ると中間管理職の立場がなくなり意見が出にくい職場風土となる
・経営方針に逆らえない雰囲気になり不満・反発の意見が出て正しい現況がトップに伝わりにくい
・クレーム発生時や画期的なアイデアが生まれたときにフィードバックされなくなり対顧客へのサービスのレベルが落ちるリスクがある
・言われたことだけしかやらなくなると、自ら考えて行動する有能な人材が育ちにくい

「ボトムアップ」のメリットとデメリット

ボトムアップのメリットとデメリットは、トップダウンの対照的なものが多くなる特徴がある。

【メリット】
・現場の声が経営陣まで届きやすくなり意見が出やすい職場風土とモチベーションアップにつながる
・自分の意見やアイデアが採用される自覚が生まれ自ら考えて行動する従業員が育つ
・従業員が経営への参加意識を持つようになり離職率低下や優秀な人材の流出防止につながる
・クレーム発生時や画期的なアイデアが生まれたときにフィードバックされやすく、現場の課題や問題を組織で共有できる

【デメリット】
・さまざまなアイデアや意見を聞いて吸い上げてまとめていくため、意思決定に時間がかかる
・多くの意見やアイデアを現場でまとめることができる有能な人材が必要になる
・意見を聞きすぎることによってかえって迷いが生じ、意思決定がしにくくなる
・従業員自身が楽をするために安易な提案をすることや企業にとってマイナスとなる意見が出ることもある

「トップダウン」は一歩間違えると「ワンマン経営」

トップダウンは、ワンマン経営と見られがちだが特徴を理解すれば意味の違いはわかるだろう。同じ「鶴の一声」でも社長の思い込みやわがままとは意味が大きく異なるのだ。

「ワンマン経営」の特徴

ワンマン経営とは、企業の創業者や社長などの1人の経営者が経営の上層部や幹部など補佐やアドバイスをする者の意見を聞かずに独断で企業経営を行うことを指す。上層部や幹部がイエスマンばかりで中間管理職に能力がない者ばかり選ぶようなケースでは、ワンマン経営に陥る可能性がある。ワンマン経営は、経営判断や人事異動、人事考課などへ介入し経営者1人の意向をすべて反映させるのが特徴だ。

そのため公平性に欠き社員の信頼を失うことがある。またパワハラにつながることもあるため、注意が必要だ。ワンマン経営者は、会社を大きくしてきた実績があるケースも多く突出した能力やカリスマ性を持っていることも少なくない。しかし他者の意見に単に耳を貸さずに独りよがりの意見を通すだけでは、企業の秩序を乱し経営が危機的状況に陥る原因になりかねないだろう。

同じ「鶴の一声」でも判断能力が必要であり判断が正しいことが前提となるトップダウンとでは、内容は大きく異なるのだ。