本記事は、天田浩平の著書『マンション投資の「ルール」は私が教えます』(講談社)の中から一部を抜粋・編集しています

マンション投資の「ルール」は私が教えます4
(画像=PIXTA)

空室対策としての家賃値下げはできるだけ控える。別の対策をとって、物件価値を落とさないようにつとめる

マンション投資の物件が空室となった場合、その対策として、すぐに家賃を下げようとする管理会社があります。

しかし、家賃を下げるという方法は、ほかに何も打つ手がなくなったときの最終手段ですから、最初から実行に移すことは得策ではありません。

家賃を下げると、そのワンルームマンションの物件価格にまで影響します。

仮に2,000万円で購入した投資用ワンルームマンションの月の家賃を1,000円下げたとすると、その物件価値も、30万円ほど下がるとみていいでしょう。

その理由も明確です。月の家賃を1,000円下げるということは、年に1万2,000円得られる家賃が減るということです。家賃収入が減るということは、投資物件の利回りも当然下がります。不動産の業界では「収益還元法」と呼ばれ、この方式で金融機関も物件価値を評価しているのです。

仮に年4%の利回りで計算すると、物件価値は30万円ほど下がってしまいます。2,000万円で購入した物件は、結果、1,970万円ほどという評価になるのです。

これは一般の方にはあまり知られていないことです。

空室となれば、その間の家賃収入は入ってきません。そこで、家賃を1,000円、2,000円下げてでも空室を早く埋めたい、と思われる方が多いのです。

家賃を下げるより、まずは礼金をゼロにする

しかし、私が管理会社の担当者であれば、物件価値への影響も考えます。そこで、
「家賃はギリギリまで下げないでおきましょう。そのほうがオーナーにとって有益なのです」
と、アドバイスしています。その場合、空室対策として打つべき手は、まず礼金をゼロにすることです。それでも入居者が決まらなければ、次は敷金をゼロにするのです。

通常は、礼金も敷金もそれぞれ家賃1か月分と同額が相場なので、家賃8万円の賃貸マンションの場合で礼金、敷金をそれぞれゼロにすると、本来得られるはずの収入を失うことになります。でも、これは「一時的な損失」なのです。

家賃を1,000円下げていくことの損失では、毎月の家賃収入が将来にわたって減少するうえに、物件価値が30万円ほど下がる可能性につながります。その場合の損失は礼金と敷金をゼロにして失った損失どころではなくなるのです。

礼金、敷金を「ゼロ・ゼロ」にして入居時の負担を減らす

もうひとつは、礼金、敷金を「ゼロ・ゼロ」にすることで、家賃が上がるケースもあります。ワンルームマンションの入居者にとって、入居時の負担が減ることに魅力を感じる人は少なくないからです。

私は、お客様に買っていただいた投資物件に思い入れがあるため、不動産を売る立場としても買う立場としても、資産価値が減ることに強い抵抗があります。ですから、空室が続き、対策をとらなければならない場合でも、
「いかに家賃を下げずに入居者を決められるか?」
「いかにして家賃を上げることができるか?」
ということを強く意識してきました。
それほどに家賃にこだわるのも私のルールなのです。

ただし、礼金、敷金を「ゼロ・ゼロ」にすることには、デメリットもあります。

たとえば、入居時の費用がかからないので、気軽に引っ越してしまう人も出かねません。その結果、短期で解約されてしまうことにつながってしまうのです。

私はそのリスクを避けるため、1年以内に退去する場合は家賃1か月分の違約金を払っていただく賃貸借契約を締結しています。こうした対策をあらかじめ講じておくことで、仮に1年以内に退去となった場合でも、家賃1か月分が補填されることになるのです。

礼金、敷金を犠牲にしても、家賃で3,000円を上げるメリット

また、礼金1か月分をゼロにした場合、管理会社の募集手数料はゼロとはなりません。通常どおり支払わなければならないので、オーナーの持ち出しになります。

それでも、礼金、敷金を「ゼロ・ゼロ」にして、家賃が3,000円でも高くできれば、マンション投資物件の利回りもよくなり、その結果、物件価値が80万〜100万円上がることにもつながります。

2週間の空室を埋めるために家賃を下げるよりも、1か月以上かかっても、礼金、敷金を「ゼロ・ゼロ」で入居者を募集し、家賃を3,000円上げるほうが得策なのです。

こうしたノウハウは、自分でも24歳から12年間、投資マンションの賃貸経営をしてきたからこそわかったことです。空室対策の相談を受けたお客様に伝えると、
「そういうやり方もあるんですね!」
とびっくりされます。そして、ますます信頼してくださいます。逆の言い方をすれば、それだけ、空室になったらすぐに家賃を下げようと提案する管理会社が多いのです。

すぐに家賃を下げたがる管理会社にはご用心

ワンルームマンションを扱う不動産会社の広告やホームページにはよく、「入居率99%」「入居率95%以上」の謳い文句が載っています。しかし、よほど条件が悪くない限り、東京23区内の物件はほぼ埋まります。また、空室が続いても家賃を下げれば入居者は現れます。

ですから「入居率95〜99%」にするのは、ある意味、簡単なことなのです。

そのため、不動産会社の実績をよく見せるために、投資用ワンルームマンションの家賃を下げ続け、つねに満室にすることで「入居率99%」と宣伝しているところさえあります。

しかし、このやり方には疑問を持たざるをえません。不動産会社の都合に合わせた戦略であって、その結果、物件価値が下がって損をするのは、投資用マンションのオーナーだからです。困ったことに多くのオーナーはこの事実に気づいていません。

本書を読んでくださっている読者のみなさんには、ぜひ知っておいてほしいことなので、すぐに「家賃を下げましょう」と、連絡してくる管理会社には慎重に対処してください。

次項で説明しますが、賃貸仲介会社に多めに「AD」という広告手数料を払う方法もあります。それでも入居者が決まらない場合に、最終手段として家賃を下げることを選択したいものです。

マンション投資の「ルール」は私が教えます
天田浩平(あまだ・こうへい)
株式会社エイマックス代表取締役。神奈川県横浜市出身。
大学卒業後、2007年、投資用中古マンションを扱う不動産会社に入社。2009年、中古ワンルームマンションを購入して、不動産投資を始める。2014年、提携金融機関のキャンペーンで融資実行件数全国1位(年170戸)を記録。以後、5年連続 販売記録を更新し、2019年(2018年10月~2019年9月)には、年間販売戸数387戸を達成。「販売戸数日本一の不動産営業マン」と話題に。2020年2月、株式会社エイマックスを設立。2021年12月現在の投資用不動産所有戸数は89戸(国内区分マンション13戸、国内1棟物件6棟75戸、海外物件1戸)。著書に『農業大卒の僕が29歳で年間170戸のマンションを売って日本一の営業マンになった秘密の方法』(KADOKAWA)、『月商6億円 日本No.1営業マンの「最速」仕事術』(祥伝社)がある。

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