「IPOセカンダリー投資」とは、上場直後の銘柄の株を購入し、その後の値上がりで大きな利益を狙う投資手法だ。抽選で購入者が決まるIPO投資とは異なり、流通市場で取引できるため誰にでも投資のチャンスがある。ただしIPOセカンダリー投資は、ハイリスク・ハイリターンだ。積極的な資産形成戦略の1つとしてチャレンジしたい投資家向けに、メリットおよびデメリット、投資のポイントを解説する。

目次

  1. 1. IPOセカンダリー投資とは?
  2. 2. IPOセカンダリー投資のメリット・デメリット
  3. 3. IPOセカンダリー投資に参加する方法
  4. 4. IPOセカンダリー投資とIPO投資の違いとは?
  5. 5. IPOセカンダリー投資とPO投資の違いとは?
  6. 6. IPO投資・PO投資の株の購入方法
  7. まとめ:IPO株のセカンダリー投資に妙味あり

1. IPOセカンダリー投資とは?

IPOセカンダリー投資の魅力とは?メリット・デメリット、PO投資との違い
(画像=PIXTA)

IPOセカンダリー投資とは、上場から間もないIPO銘柄を狙って投資する手法だ。まず、IPOセカンダリー投資の基本事項を解説する。

1.1. 「IPO」「セカンダリーマーケット」とは?

IPOセカンダリー投資を理解するために、まず「IPO」と「セカンダリーマーケット」とは何かを確認しておこう。

・「IPO」とは?
IPO(アイピーオー:Initial Public Offering:新規公開株)とは、未上場の企業が新たに株式を証券取引所に上場して、投資家が売買できるようにすることだ。企業にとっては資金調達や知名度向上などのメリットがある。

新たに発行された株式は上場前に「公募価格」で売り出され、上場後は投資家間の取引を経て「初値(はつね)」がつく。初値は公募価格より高くなるケースが多く、この差益を狙う手法は「IPO投資」という。

・「セカンダリーマーケット」とは?
次に、セカンダリーマーケットとは、発行された株式や債券を投資家間で売買する流通市場のことをいう。東京証券取引所をイメージするとわかりやすいだろう。一方、企業や国、地方公共団体が株式や債権を発行して資金調達をする市場は、プライマリーマーケットという。

IPO株が公募価格で売り出されるのは、プライマリーマーケットだ。そして、上場し初値が付くのはセカンダリーマーケットである。

▽プライマリーマーケットとセカンダリーマーケット

IPOセカンダリー投資の魅力とは?メリット・デメリット、PO投資との違い
画像:ZUU online

1.2. IPOセカンダリー投資とは?

「IPOセカンダリー投資」とは、IPO銘柄が上場してセカンダリーマーケットで取引できるようになってから投資する方法だ。初値か、初値でないにしても上場から間もない価格でIPO銘柄を購入し、値上がり益の獲得を目指す。

IPO銘柄は、公募価格よりも初値が高くなるケースが多いが、市場の期待が高い銘柄は、初値からさらに値を上げる可能性もある。このような上場後の値上がりを見極めて売却益を狙うのが、IPOセカンダリー投資の特徴だ。

IPOセカンダリー投資は、IPO投資以上に利益を狙えるケースがある。実際の株価推移を例に説明しよう。2021年8月24日にJASDAQスタンダードに上場したオーダースーツ専門店のタンゴヤ(7126)は、公募価格が1,600円で初値が1,703円だった。この銘柄でIPO投資をした投資家は、約6.4%の利益を得られたと考えられる。

しかし、タンゴヤは上場以降も株価が上昇した。9月17日には2,005円、10月19日には2、387円、10月22日には2,504円の値を付けたのである。

▽タンゴヤの上場後の株価推移

もしIPOセカンダリー投資として初値で購入し、2,504円で売却したとすると、47%の利益を得られた計算だ。IPO投資と比べると利益の差は7倍以上となる。

▽IPO投資とIPOセカンダリー投資の比較(タンゴヤの場合)

このように、上場後も大きな値上がりが見込まれる企業に着目して投資するのがIPOセカンダリー投資である。

2. IPOセカンダリー投資のメリット・デメリット

投資家にとってIPOセカンダリー投資は、誰でも参加でき、各々の投資スタイルに合わせて活用できるというメリットがある。一方で、購入のタイミングや銘柄の見極めを誤れば、デメリットが強調されることになる。ハイリスク・ハイリターンな投資手法であることに留意しておきたい。

メリット・デメリットと、IPOセカンダリー投資を成功させるコツを、以下にまとめた。

2.1. IPOセカンダリー投資のメリット

IPOセカンダリー投資のメリットには、以下の3つが挙げられる。

・IPOセカンダリー投資のメリット1:抽選もなく、誰でも投資できる
メリットの1つめは、誰でも投資できる点だ。IPO投資では、抽選に当たらなければ公募価格での購入ができず、投資をすることができない。しかしIPOセカンダリー投資では、購入を希望する投資家は誰でも参加できる。抽選になかなか当たらずIPO投資ができないと悩んでいるなら、IPOセカンダリー投資を検討してもいいだろう。

・IPOセカンダリー投資のメリット2:短期での大幅な値上がりを狙える
メリットの2つめは、短期で大幅な値上がりを狙える点だ。IPO銘柄が上場から短期間で大きく値上がりする可能性があるのは、先述のタンゴヤの事例のとおりだ。IPOセカンダリー投資でIPO投資の約7倍以上の利益を出せており、このようなケースは短期売買を投資スタイルとする投資家向きだ。

・IPOセカンダリー投資のメリット3:長期での株価上昇を狙える
メリットの3つめは、長期での株価上昇を狙える点だ。将来にわたって成長が見込まれる銘柄を選べば、IPOセカンダリー投資を長期での資産運用に活用することも可能だ。

たとえば2020年12月23日にマザーズに上場した、エネルギープラットフォーム事業を主に行うENECHANGE(4169)は、公募価格が600円で初値が2,400円だった。その後も株価は上昇を続け、2021年11月19日時点の株価は4,280円となっている。ENECHANGEにIPOセカンダリー投資をした投資家は、1年後には投資額を3倍近くまで増やす結果となった。

▽ENECHANGEの上場後の株価推移

なお、長期で値上がりできる銘柄としては、景気動向に業績が左右されにくいディフェンシブ銘柄が有力な候補となる。電力・ガス、鉄道、通信といったインフラや、食料品や医薬品などの生活必需品関連を扱う企業が代表的なディフェンシブ銘柄だ。

2.2. IPOセカンダリー投資のデメリット

IPOセカンダリー投資のデメリットとしては、以下の2つが考えられる。

・IPOセカンダリー投資のデメリット1: 初値が割安とは限らない
デメリットの1つめは、初値が割安とは限らない点だ。公募価格が割安に設定されるのは、多くの投資家から資金を集めやすくするためだ。一方、セカンダリーマーケットでの需要と供給によって価格が決まる初値は、割安になるとは限らない。成長性が期待される銘柄などは、上場時に買いが殺到し、初値が高くなる可能性もある。

IPOセカンダリー投資をするなら、上場後の値動きを確認し、割高な価格で購入しないことが重要だ。

・IPOセカンダリー投資のデメリット2:値上がりする銘柄の見極めが難しい
デメリットの2つめは、値上がりする銘柄の見極めが難しい点だ。IPO銘柄は市場での取引実績がないため、今後の値動きを予測する情報が少なく、値上がりするかどうかの判断が容易ではない。

限られた投資情報をもとにIPOセカンダリー投資を成功させるには、投資判断に必要な重要事項が記載された目論見書(もくろみしょ)や、経営状況の判断材料となる財務諸表を読み解くスキルも必要になるだろう。

2.3. IPOセカンダリー投資のコツ

IPOセカンダリー投資を成功させるには、上場後の値動きを把握し見極める必要がある。ここでは、上場後の値動きを考える3つのコツを紹介する。

・IPOセカンダリー投資のコツ1:初値の上昇率と吸収金額を確認する
コツの1つめは、初値の上昇率と吸収金額を確認することだ。この2つをチェックすることで、株価下落の可能性を検討できる。

初値の上昇率とは、初値が公募価格からどのくらい上がったかを表す数値だ。これがあまりに大きいと公募価格で購入した投資家の売りが増えるため、株価が値下がりする可能性がある。

吸収金額とは、IPOを通じて企業が市場から調達した資金の総額のことだ。この金額が大きい銘柄は、売出し株数が多いと考えられる。売出し株数が多い銘柄は、希少価値が下がる。希少価値が低い銘柄は、購入希望者が減り株価が下落するケースがあるため、注意が必要だ。

・IPOセカンダリー投資のコツ2:出来高を確認する
コツの2つめは、出来高を確認することだ。出来高とは、期間中に成立した売買の数量をいう。出来高が多い銘柄は、多くの投資家が集まり盛んに取引されているため、値動きが活発になりやすい。一方、出来高が少ない銘柄は、取引があまり行われていないため値動きが少なくなるだけでなく、少しずつ株価が下がる可能性があることは知っておくべきだろう。

・IPOセカンダリー投資のコツ3:ロックアップを意識する
コツの3つめは、ロックアップを意識することだ。ロックアップとは、創業者やベンチャーキャピタルといった大株主などが、株式公開後の一定期間、市場で持ち株を売却しない等の契約を証券会社と交わすことをいう。ロックアップに関する規定は目論見書に記載される。

ロックアップがない銘柄は大株主がいつでも自由に売買できるため、上場直後に大量の株式がまとめて売却される可能性がある。そのため、上場日以降間もない期間の株価の下落に注意するべきだ。

ロックアップがある銘柄は、上場から一定期間は落ち着いた値動きとなるかもしれない。しかし、ロックアップが解除された直後には、株価が急落する可能性がある。ロックアップがある銘柄は、解除の条件を確認し、外れた後の値動きを注視する必要があるだろう。

3. IPOセカンダリー投資に参加する方法

IPOセカンダリー投資をするには、目当ての銘柄が上場したあとにスムーズに株を購入する必要がある。事前に必要な手続きや購入方法等を確認しておくことが肝心だ。以下に解説する。

3.1. IPOセカンダリー投資に参加する方法1:証券会社に口座を開設する

IPOセカンダリー投資に限らず、株式を購入するには、当然ながら証券総合口座を開設しておく必要がある。証券総合口座は無料で開設できるが、注意したいのは開設にかかる日数が証券会社によって異なる点だ。目当ての銘柄が見つかったら、上場日を確認し、取り扱いのある証券会社に早めに口座を開設し、入金しておくと安心だ。

SBI証券や楽天証券などのネット専業の証券会社の場合は、すべての手続きをネット経由で行え、当日に口座開設できる場合もあるので、急いで申し込みたい場合は検討するとよいだろう。

なお、IPOセカンダリー投資では株式の買付手数料が発生する。コストを抑え効率的な投資を目指すなら、手数料が低い証券会社を選ぼう。

3.2.IPOセカンダリー投資に参加する方法2:株を購入する

IPOセカンダリー投資の取引方法は、一般的な株式投資と同様だ。証券会社に口座を開設しておき、取引時間内に目当ての銘柄を指定して購入の手続きを行うと、投資をすることができる。以下に手順を解説する。

・手順1:購入したい銘柄を確認する
まずは、購入する銘柄を決めよう。銘柄を選定するときは、前項で紹介した3つのコツを確認したい。初値の上昇率や吸収金額、出来高といった銘柄情報は、「みんかぶ」などの投資情報サイトで確認できる。ロックアップの有無は、目論見書で確認しよう。

・手順2:購入したい株数・株価を考える
次に、購入したい株数と株価について考えよう。購入価格は、株価×単元株数で決まる。たとえば、株価が1,000円で単元株数が100株の銘柄なら、最低投資額は10万円(1,000円×100株)になる。投資予算と照らし合わせ、購入したい株数や株価の目安を考えておきたい。

・手順3:注文を出す
購入額が決まったら、買い注文を出す。株取引でよく使われる方法には「成行(なりゆき)注文」と「指値(さしね)注文」がある。

IPO銘柄は上場直後の値動きを読むのが難しい。予想外の高値で購入しないようにするには、指値注文を活用したい。指値注文は、価格・株数を指定して取引する方法だ。買いの指値注文の場合、指定した値段以上の価格では取引が成立しないため、予算オーバーを防げる。

指値注文の注意点は、市場の需要と供給に合わなかった場合には取引が成立しないことだ。また、指値注文は有効期限を決める必要があり、注文時に指定することになっている。

3.3. ハイリスク・ハイリターンな投資である点は要注意

IPOセカンダリー投資を始めることは簡単だが、誰でも利益を出せるとは限らない。ハイリスク・ハイリターンの投資手法であることには留意しておきたい。なぜならIPO銘柄が上場した直後は、価格が大きく乱高下するケースが多いからだ。

はじめて挑戦するのであれば、多額の資金を一度に投資するのではなく、1単元といった少額からスタートし、少しずつ投資額を増やしていこう。少額から始めれば、仮に購入後に株価が下がったとしても、損失を限定的に抑えられる。少額投資からスタートし、リスクを抑えながら実際の取引のやり方や相場の見方を学び、少しずつ投資額を増やしていきたい。

4. IPOセカンダリー投資とIPO投資の違いとは?

2021年のIPO社数は14年ぶりに100社超まで増えたが、それでも株式投資全体においては、IPOに関連した投資の機会は限られている。IPOセカンダリー投資を行うか、それともIPO投資を行うかを判断するには、2つの手法の違いを知っておきたい。IPO投資のメリット・デメリット、IPOセカンダリー投資との比較をまとめた。

4.1. IPO投資とは?

繰り返し述べているように、IPO投資とは、上場前に公募価格で販売されるIPOを対象とする投資手法だ。上場後にはじめて付く初値は、公募価格よりも高くなるケースが多い。そのため、公募価格で購入したIPO株を初値で売却し、利益の獲得を目指すのである。

4.2. IPO投資のメリット

IPO投資の主なメリットは、以下の2つだ。

・大きな値上がり益が期待できる
・買付手数料がかからない

公募価格と初値の差益の獲得を目指すIPO投資だが、特に成長性がある企業の場合、初値が公募価格の数倍になることもある。このように、投資する銘柄によっては大きなリターンを得られる可能性がある点が、IPO投資の最大の魅力だといえるだろう。

またIPO投資では、通常の株取引で必要な買付手数料がかからない。手数料は、投資においてコストとなる。手数料がかからないIPO投資は、効率がよい投資を目指せる投資方法といえる。

4.3. IPO投資のデメリット

IPO投資のデメリットには、以下の2つが挙げられる。

・必ず利益を得られるとは限らない
・抽選に外れると購入できない

IPO投資で気をつけたいのは、必ず利益を得られるとは限らない点だ。IPO銘柄の初値は公募価格を上回ることが多いが、公募価格を下回るケースもないわけではない。もし初値が公募価格より低かった場合、損切りするのか、それとも保有を継続して売却のタイミングを見極めるのか等、その後の投資方針はあらかじめ決めておくべきだろう。

また、大きなリターンを狙えるIPO株は、購入希望者が多い。しかし売出し株数には上限があるため、ほとんどの場合は抽選により販売される。抽選に外れた投資家は、IPO株を購入することはできない。IPO投資をしたいなら主幹事証券を利用するなど、当選確率が上がるための対策が必要だ。

▽主幹事証券とは
主幹事証券とは、有価証券の募集(有価証券の取得の勧誘)や売り出し、新規公開時の引受・販売等を行うにあたって、中心的な役割を果たす会社をいう。主幹事証券は、分配されるIPO株数が圧倒的に多い。

4.4. IPOセカンダリー投資とIPO投資の違い

以上に述べたようなIPO投資の主な特徴を、IPOセカンダリー投資と比較してみよう。

▽IPO投資とIPOセカンダリー投資の主な違い

リスクリターン購入できる人購入価格想定される投資期間
IPO投資ローリスクローリターン抽選に当たった人公募価格短期
IPOセカンダリー投資ハイリスクハイリターン誰でも市場価格短期~長期

IPO投資はローリスクローリターンの投資だが、抽選に当たった人のみしか銘柄の購入ができない。また、初値もしくは初値に近い価格での売却を原則とするため、投資期間は短期となる。一方、IPOセカンダリー投資は注文を出せば誰でも銘柄購入ができるが、価格が乱高下しやすい。価格が上昇したタイミングでの売却を狙うため、値動きによっては運用期間が長期になるケースもある。

投資初心者には、ローリスクローリターンのIPO投資が魅力的に映るだろう。しかしIPO投資をするには、まずIPO株に当選しなければならない。その点、IPOセカンダリー投資は、誰でも始めやすく投資期間の融通が利くといった投資のしやすさがある。計画的な資産形成を目指すなら、IPO銘柄の抽選に応募しつつ、少額からIPOセカンダリー投資をスタートするのも有効な方法だといえるだろう。

5. IPOセカンダリー投資とPO投資の違いとは?

IPOとよく似た用語として、PO(ピーオー:Public Offering:公募・売出し)についても確認しておこう。IPOセカンダリー投資との違いを解説する。

5.1. PO投資とは? 公募と売出しの違い、投資家への影響

PO投資とは、すでに上場している企業が公募・売出しをした株式を対象とする投資手法だ。IPOと比べると、業績や株価の推移といった企業情報を得やすいという特徴がある。なお、POはすでに市場で取引されている銘柄の公募・売出しのため、「POセカンダリー投資」という手法はない。

POには、「公募」と「売出し」の2つの種類がある。どちらの形式で売り出されるかにより、投資家や株価への影響が異なる。

▽公募と売出しの違い
・公募:設備投資などに必要な資金調達の目的で新たに株式を発行し、投資家に販売すること
・売出し:大株主等が保有するすでに発行された株式を売却し、一般の投資家に販売すること

投資家や株価への影響が大きいのは、公募だ。発行株数の増加により1株の価値の希釈化が起こる可能性がある。希釈化をマイナス材料と捉える投資家が多い場合、株の売却が増え株価は下落する。そのため、PO前から株を保有している株主は、POにより株価がどのように動くかを注視しておく必要がある。

一方、売出しはすでに発行された株式を投資家に販売するため、株式数は変わらない。

5.2. PO投資のメリット

PO投資の主なメリットは、以下の3つだ。

・市場価格より割安での購入が期待できる
・買付手数料がかからない
・企業の資金が増加することで長期的な値上がりが期待できる

PO投資では多くの場合、市場価格より割安で購入できる。また買付手数料がかからないため、通常の株取引より割安な価格での購入が期待できる。

また、POが行われると企業の資金力が上がる。その資金を活用した設備投資の充実や新ビジネスへの挑戦などが好感された場合には、長期的に株価が上昇するケースも少なくない。

5.3. PO投資のデメリット

PO投資では、以下のデメリットが考えられる。

・必ず利益が得られるとは限らない
・株の価値の希釈化が起こりうる
・抽選に外れると購入できない

メリットで解説したとおり、PO投資は株を割安で購入できる可能性がある。しかし、その後必ず価格が上昇するわけではない。価格が乱高下した場合、含み損が出たり長期保有での値上がりを目指したりするケースもあることは知っておこう。

また、PO投資では株の発行数が増えるため、1株当たりの価値が希釈化する可能性がある。株の希釈化が売り材料としてとらえられた場合、株価が下落するケースがあるのは先述のとおりだ。なお、POにより株価が下落したとしても、業績が好調で成長性が期待される企業なら、将来再び上昇に転じることは十分にある。

なおPO株はIPO株と同様、抽選により購入者が決定する。そのため、抽選に外れた場合にはPO株の購入はできない。

5.4. IPOセカンダリー投資とPO投資の違い

以上に述べたようなPO投資の主な特徴を、IPOセカンダリー投資と比較してみよう。

▽PO投資とIPOセカンダリー投資の主な違い

リスクリターン購入できる人購入価格想定される投資期間
PO投資ミドルリスクミドルリターン抽選に当たった人公募価格短期~長期
IPOセカンダリー投資ハイリスクハイリターン誰でも市場価格短期~長期

PO投資とIPOセカンダリー投資は、どちらもすでに市場で取引されている銘柄に投資を行う。最も大きな違いは、POは公募価格、IPOセカンダリ―投資は市場価格で取引される点だ。市場価格よりも割安で購入できる可能性があるPO投資は、IPOセカンダリ―投資と比べその分リスクを抑えられるだろう。

ただし、PO株も抽選に当たった人しか購入できないため、希望の銘柄に必ず投資できるとは限らない。PO投資を希望するなら、IPO投資と同様に、IPOセカンダリー投資等で運用をしつつ抽選の当選を待つのがよさそうだ。

6. IPO投資・PO投資の株の購入方法

最後に、IPOとPOの購入の流れについても解説する。興味のある方は確認されたい。

▽IPO・PO株購入の手順
1:目論見書の確認と口座残高の準備
2:ブックビルディング申し込み
3:購入申し込み・抽選

6.1. IPO・PO株購入の手順1:目論見書の確認と口座残高の準備

まず申し込み前に、目論見書の確認と口座への入金を行っておく。IPOやPOへの申し込みでは、前受金を必要とする証券会社も多い。前受金が用意できなければブックビルディングへの申し込みができない場合を考慮して、早めの準備が必要だ。

▽ブックビルディング(需要申告)とは
IPOやPOの公募価格決定時に採用される価格決定の方式のこと。投資家の需要状況に応じて公募価格を決定する。

6.2. IPO・PO株購入の手順2:ブックビルディング申し込み

IPOおよびPOの購入希望者は、ブックビルディング期間に購入希望価格の提示を含めた申し込み手続きを行う。IPOは新規上場銘柄のため、購入希望価格そのものを申告する。POの申し込みでは、市場価格に対する割引率によって購入希望価格を示す。

6.3. IPO・PO株購入の手順3:購入申し込み・抽選

ブックビルディング期間が終了すると、募集・売出し価格が決定する。価格に問題がなければ、購入申し込みを進めることになる。なお証券会社によっては、購入申し込みは抽選後に行われる場合もある。購入申し込み期間が終わると、抽選が行われる。当選した投資家は必要な手続きを行い、株券の発行を受ける。

まとめ:IPO株のセカンダリー投資に妙味あり

IPOセカンダリー投資は、初値もしくは上場から間もない価格で銘柄を購入し、値上がり益を狙う投資方法だ。抽選があるIPO投資とは異なり誰でも参加できるメリットがある一方で、値上がりする銘柄の見極めが難しいといった注意点がある。

IPOセカンダリー投資を成功させるには、上場後の値動きの見極めがポイントとなる。そのためには、初値の上昇率や吸収金額、出来高、ロックアップの有無をチェックすることが重要だ。

IPOセカンダリー投資は上場直後の値動きの大きさを活用する投資のため、ハイリスク・ハイリターンとなる。積極的な資産形成戦略の1つとして、まずは少額からチャレンジしてみてはいかがだろうか。

山本希美
山本希美
中央大学法学部を卒業後、都市銀行に就職。ファイナンシャルプランナーとして、経営者や資産家といった富裕層の資産運用に携わる。退職後は、銀行で得た知識を活かし資産運用情報を発信。自身も20代より、株や投資信託・保険商品などを組み合わせた資産運用を続けている。