「なんということだ。高すぎて買えない」

夫がパソコンの画面を眺めながら呟いた。彼はゲーミング用コンピューターの組み立てが趣味なのだが、最近はグラフィックカードが高騰し、いまやハイエンドの製品は「手がだせない」状況だという。グラフィックカードとは、パソコンに内蔵されたグラフィック処理を担う拡張ボードのことだ。

たとえば、米半導体メーカーのエヌビディア(Nvidia)のグラフィックカード「GeForce RTX 3090」の小売価格は、発売当初の2020年9月時点で1,500ドル(約17万円)だった。ところが2022年2月12日現在、英国では1,995~2,500ポンド(約31万~39万円)前後に跳ね上がっている。背景には世界的な半導体不足がある。パソコン用のグラフィックカードには、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)と呼ばれる画像処理用の半導体チップ(プロセッサ)が搭載されているのだが、テレワークや巣ごもり消費の拡大に供給が追いつかず、価格高騰を招いたと見られている。

半導体不足の影響は自動車産業にも及んでいる。2021年9月23日、国際的なコンサルティング会社であるアリックスパートナーズは、半導体不足が世界の自動車産業に与える影響について、2021年の生産損失額で2,100億ドル(約24兆3,313億 円)、生産台数で770万台減と予測していた。運転支援機能からエンジン、トランスミッション等を制御するECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)まで数多くの半導体を必要とする自動車産業に与えた影響は甚大で、各社とも生産調整を余儀なくされている状況だ。

今回は「自動車産業の半導体不足(Semiconductor Shortage In The Automotive Industry)」をテーマにお届けしよう。