韓国、国家負債が過去最高の「400兆ウォン」に 増加率OECD1位で次期政権も悲鳴?
(画像=selensergen/stock.adobe.com)

「2026年までに韓国の国家負債比率がOECD(経済協力開発機構)加盟国中最も速く増加する」との分析結果を、韓国経済研究院が発表した。

同国の国家負債は、文在寅政権の5年間で過去最高額の400兆ウォン(約38兆 4,694億円)を超えており、次期政権は総額103兆円以上の借金を抱えてのスタートを余儀なくされる。

2026年には国家負債比率3位に

韓国経済新聞などのメディアによると、「韓国の対GDP国家負債比率は2020年の47.9%から2026年に66.7%へと18.8ポイント増加し、国家負債比率の順位は非基縮通貨国中9位から3位になる」と韓国経済研究院が発表した国際通貨基金(IMF)の国家財政データに基づいたレポートの中で予想しているという。この増加幅は非基縮通貨国のみならず、OECD加盟37カ国の中で最も大きい。

これに対して、2020年は国家負債比率が最も高かったカナダ(117.5%)やアイスランド(77.1%)の国家負債はコロナ禍の財政支出の縮小とともに減少し、2026年にはそれぞれ89.7%と59.0%となる見通しだ。

チョ・グァンホ韓国経済政策室長は、基縮通貨国である韓国にとって財政健全性の確保が極めて重要である点を主張し、「財政則法制化と積極的な歳出構造調節」が差し迫った課題との見方を示している。

国の借金、7年後には195兆円超え?

一方、国会予算政策処(NABO)は『2021~30年中期財政展望』で、現在の政策基調が続くと想定した場合、国家債務は2022年に1,072兆ウォン(約103兆980億円)を突破し、2029年には89%増の2,029兆5,000億ウォン(約195兆1,715億円)に拡大するとの見解を示した。負債が積もれば利子も増える。国会予算政策処の予想が的中した場合、2029年以降は利子だけで30兆ウォン(約2兆8,850億円)以上を支払う算出になる。

これらの予想は、韓国の財政の健全性に警鐘を鳴らしている。

実際、韓国の国家債務は2021年末の本予算基準で1,064兆ウォン(約102兆3,220億円)に達しており、企画財政省の試算によると国家債務を人口で割った国民1人当たりの国家債務は年内に2,081万ウォン(約200万円)に急増する。

2022年の総合財政支出(政府の総収入から総支出を差し引いた額)は61兆9,000億ウォン(約5兆 9,527億円)と韓国史上初めて4年連続で2桁の赤字を記録し、2026年には85兆9,000億ウォン(約8兆2,607億円)に拡大する見通しだ。

2021年通年の貿易額は過去最高を記録し、9年ぶりに世界8位へと順位を1つ上げたものの、1月の貿易収支は2008年の世界金融危機から14年ぶりに2カ月連続で赤字を記録した。

5年間で400兆ウォン超え 文在寅政権「歴代最大規模の拡張財政」

赤字急膨張の要因として、コロナ禍の財政支出や少子高齢化、公企業負債の増加が指摘されているが、社会保障給付を補うための財政負担やコロナ禍で財政支出が大幅に増えている国は韓国だけではない。それにも関わらず、韓国の財政が顕著に悪化しているは何故なのか。文在寅政権の放浪散財政治をその元凶と批判する声も多い。

本来「補正予算」は、災害や政策の変更などの緊急時に対応するためのものである。ところが文在寅政権は事あるごとに補正予算を編成し、その都度国家財政を脅かしてきた。その結果、同国の2022年の国家債務は、文在寅政権が発足した2017年と比べると6割増の1,064兆ウォン(約102兆 3,338億円)に膨張した。

文在寅政権が過去5年間で編成した10回の補正予算は総額151兆3,000億ウォン(約14兆5,517億円)と、盧武鉉(ノ・ムヒョン/任期2003~2008年)、李明博(イ・ミョンバク/2008~13年)、朴槿恵(パク・クネ/2013~17年)の3政権が編成した補正予算の90兆ウォン(約8兆6,560億円)を遙かに上回る規模だ。前3政権が補正予算を編成した理由は、世界金融危機や中東呼吸器症候群(MERS)、庶民·中産層などだった。

コロナ禍の支援措置は社会保障給付制度の強化は必要不可欠だが、後先を考えずに借金を増やし続ける先に待ちうけているのは、経済的・社会的脆弱姓の悪化に他ならない。

巨額の借金、子どもの世代に押し付け?

同様の懸念は、かつて韓国野党・国民の力(旧未来統合党)の院内代表だった朱豪英(チュ・ホヨン)氏も示していた。

同氏は2020年9月に開催された国会交渉団体代表演説で、文在寅政権下で雪だるま式に増え続ける国家債務の「後始末」について、「我々の子どもの世代に借金をそのまま負わせるつもりか」と糾弾。金大中政権(任期1998~2003年)がアジア通貨危機を、李明博政権が世界金融危機を克服したことを例に挙げ、「文在寅政権のようにむやみに財政支出を崩すことはなかった」と指摘した。

政府はさらなる債務悪化を回避する意図で、国家債務の割合をGDP比60%以下、総合財政収支をGDP比マイナス3%以下に維持するという国家財政法改正案が2020年末に国会に提出された。しかし、与党の反対などがハードルとなり、1年以上が経過した2022年2月19日現在も進展していない。

家計債務や経営不振企業も急増

国家債務の膨張とともに、家計債務や経営不振に陥る企業も急増している。

3月9日に次期大統領選を控えた今、次期政権は文在寅政権の放浪散財政治の後始末に翻弄されることとなりそうだ。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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