この記事は2022年2月28日(月)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田 アンダースロー『日本の財政改革の提言』」を一部編集し、転載したものです。


岡三会田220228
(画像=PIXTA)

1月の鉱工業生産指数

1月の鉱工業生産指数は前月比マイナス1.3%と、コンセンサス(同マイナス0.7%程度)を下回る結果となった。経済産業省の予測指数(誤差調整後)の同プラス0.6%を下回った。

10月と11月の同プラス1.8%、7%の2カ月連続の上昇から一転して、12月と1月は同マイナス1%、マイナス1.3%と2カ月連続の下落になった。12月、1月は実質輸出も同マイナス1.1%、マイナス1.5%と弱かった。

テクニカルには「2月1日の旧正月」と「オリンピックの開催」で2月の中国の生産が部分的に停止することを見込み、部品などの輸出と生産が控えられたとみる。さらに、オミクロン株のグローバルな感染拡大で再びサプライチェーンの問題が起こり、10月、11月にみられた自動車の挽回生産が一時的に弱くなったとみられる。

1月の自動車工業の生産が同マイナス17.2%と弱かった。1月の在庫指数は同マイナス1.8%になり、在庫の取り崩しで出荷がまかなわれ、在庫水準の問題はない。

2月と3月の経済産業省予測指数は2月に同プラス5.7%(誤差修正後プラス0.7%)、プラス0.3%と、トレンドとしての回復が予想されている。

ウクライナ情勢による混乱や、海外の景気回復の腰折れのリスクはまだ織り込まれていないが、誤差修正後の2月と3月の予測指数が横ばいであることにややダウンサイドへのリスクが見える。

▽生産動向指数

生産動向指数
(画像=出所:内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券、作成:岡三証券)

オミクロン株の感染拡大でサービス消費が下押され続けている

オミクロン株の感染拡大でサービス消費が下押され続けていることは問題だ。これまで景気回復モメンタムを引っ張ってきた財の動きが、サービスに引き継がれることが困難になるリスクがあるからだ。

輸入物価によるコストの増加も下押し圧力になる。デジタル技術の普及により、サービス消費の拡大とともに財の需要は更に大きくなってくると考えられる。DXなどにより新たなサービス需要が生まれることが、企業の投資活動を拡大させ、投資財の生産の拡大につながるとみられる。

政府は2月の月例経済報告で景気の基調判断について「一部に弱さがみらえる」とし、「持ち直しの動きがみられる」から下方修正している。前回の政府の経済対策は3月までの措置とした家計と企業の支援策が含まれていた。

経済活動の回復が遅れる可能性は高く、4月以降の措置とコスト増への対処を含めた追加経済対策で家計と企業を支援し、サービス消費の回復への動きを途切れさせないようにする必要がある。

▽生産動向指数の各構成要素のZスコア

生産動向指数の各構成要素のZスコア
(画像=出所:内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券、作成:岡三証券)

生産動向指数

下記のZスコア(当月データ-36カ月移動平均/36カ月標準偏差)をとり、予測指数と先行き指数は0.5、そのほかは1のウェイトの加重平均で生産動向指数を作る。

  • 鉱工業生産指数
  • 予測指数(1期リード)
  • 先行き指数(2期リード)
  • 在庫率指数(逆数)
  • 実質輸出
  • 日銀消費活動指数プラス(1期ラグ)
  • 資本財出荷指数(除く輸送機械)
  • 景気ウォッチャー先行きDI
  • 政策金融公庫中小企業貸出態度DI

1月の生産動向指数はプラス0.2となり(12月プラス0.1)、11月にプラスに回復したあと、プラス圏が維持された。0がトレンドの水準であるから、それを上回り、回復基調は続いていることを示す。

▽生産動向指数の各構成要素のZスコア

生産動向指数の各構成要素のZスコア
(画像=出所:内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券、作成:岡三証券)

物価動向指数

物価・賃金・マネー関連の指標をまとめて物価動向指数を作る。Zスコア(当月データ-36カ月移動平均/36カ月標準偏差)をとり、平均をとる。

  • 全国と東京のコア消費者物価指数
  • 企業物価指数
  • 企業向けサービス価格指数(1ラグ)
  • 新規求人倍率(1ラグ)
  • 毎月勤労統計総賃金(1ラグ)
  • 広義流動性
  • マネーストック(M1)

物価動向指数は2022年1月には1.1となり、12月の1.2から低下。2020年5月の0.2を底に持ち直している。プラスはトレンドを上回ることを意味するため、物価動向には上昇圧力が蓄積してきている。しかし、物価上昇が問題になるような強さの水準にはない。

▽物価動向指数

物価動向指数
(画像=出所:内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券、作成:岡三証券)

ファンダメンタルズ指数

生産動向指数と物価動向指数の平均をとり、生産と物価の動向を総合したファンダメンタルズ指数を作る。ファンダメンタルズ指数は1月にプラス0.6と、11月から変化がない。9月、10月に底を形成した後、リバウンドに向かっている。

ファンダメンタルズは景気と株式市場に下押し圧力をかけてきたが、これまでのソフトパッチを抜け出してきていた。しかし、オミクロン株の感染拡大やウクライナ情勢による再度の経済活動の抑制が更なる回復へのハードルになっている。1を超えると景気の回復感が強くなってくるが、まだそこまでには距離がある。

▽ファンダメンタルズ指数

ファンダメンタルズ指数
(画像=出所:内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券、作成:岡三証券)

会田 卓司
岡三証券 チーフエコノミスト
田 未来
岡三証券 エコノミスト

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