株式譲渡の注意点2つ

株式譲渡はM&Aの中では簡便な方法だが注意点もある。手続きをおろそかに進めると、M&Aが無効になりかねない。株式譲渡の注意点を2つ紹介しよう。

注意点1.株主総会で意思確認をする

株主が全員親族である場合、食事会などを簡易的な株主総会にしたり、株主総会を実施しなかったりするなど、十分に議論せず議事録だけ作成してしておくケースもある。

しかし、株式は資産であり、お金が絡んでくる問題だ。話し合いをおろそかにすると、後々トラブルになりかねない。最悪の場合、譲渡が無効となるリスクもある。

株主総会を開催して真剣に議論したうえで、話し合いにもとづいた議事録の作成が大切だ。

注意点2.株券の発行の有無を確認する

もともと株式会社は、原則として株券を発行することが定められていた。しかし、2006年に会社法が施行され、原則として株券を発行しないことになった。

株券の有無によって、株式譲渡の手続き方法や効力が生じるタイミングは違ってくる。

株券発行会社の場合、登記事項証明書に「当社は株券を発行する」という旨が記載されている。登記事項証明書を取得し、株券の発行に関する定めを確認しておくことが大切だ。

株券発行会社にもかかわらず、株券を紛失している場合、株券喪失手続きが必要となる。

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株式譲渡にかかる税金

株式譲渡の売却益は、個人の場合は譲渡所得となり、所得税・住民税が課される。税率は一律20%(所得税15%、住民税5%)だ。2037年まではこれに加えて、復興特別所得税として各年分における基準所得税額の2.1%が上乗せされる。復興特別所得税を加味した税率は20.315%だ。

申告分離課税なので、給与所得や事業所得など、ほかの所得と合算する必要はない。

売却益は、総収入金額(譲渡価額)から必要経費を差し引いた金額だ。必要経費には、株式の取得にかかった取得費と、譲渡で発生した手数料などがある。取得費とは、株式の購入代金や購入時の名義書換料などだ。

取得費がわからない場合、概算として売却代金の5%を計上することが認められている。

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株式譲渡に関するQ&A

オーナー経営者が100%株式を取得していれば、スムーズにM&Aが完了するが、さまざまな事情で株式が分散しているケースも多い。株式譲渡をするにあたり、ほかの株主が気になるオーナー経営者も多いだろう。株式譲渡のよくある疑問についてQ&A形式でまとめていく。

Q1.株主が分散しているときの対応は?

A1.専門家のアドバイスを受けて迅速に動く

株主が分散している場合、オーナー経営者がほかの株主の委任を受け、代表として株式譲渡契約を結ぶ。委任状の取り付けに時間を要するケースもあるため、専門家のアドバイスを受けながら早めに動くようにしたい。

ほかの株主から株式を買い取る方法もある。しかし、課税関係が複雑になることから、リスクも想定されるので注意したい。

Q2.行方がわからない株主からの承諾は必要?

A2.一定の要件を満たせば承諾を得ずに競売・売却できる

通知や催告をしても5年以上連絡がつかないなど、一定の要件を満たせば所在不明株主となり、承諾を得ずに競売・売却できる。

要件を満たさないときも、スクイーズ・アウトという手法で、支配株主が承諾を得ることなく強制的に株式を取得できる。

Q3.未成年者の株主や認知症の株主がいるときは?

A3.親権者の同意や成年後見人の申し立て手続きが必要になる

株主が未成年者である場合、法定代理人である親権者の同意が必要となる。

認知症だと判断能力が不十分とみなされるため、そのままM&A手続きを進めても無効になるリスクがある。

そのため、認知症で判断能力が不十分な株主がいるときは、成年後見人の申し立て手続きが必要だ。手続きには数か月を要することも多いため、早めに動き出すのが望ましい。

成年後見人を立てると、取締役の欠格事由に該当する恐れがある。そのため、認知症の株主が取締役を兼ねている場合、慎重に手続きを進めなければならない。

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