表明保証の代表的な条項
表明保証の代表的な条項の例文は以下の通りだ。
・デューデリジェンスで開示された情報に虚偽はない。
・財務諸表等は会計基準にもとづいて正確に作成されている。
・貸借対照表に計上されていない簿外債務や偶発債務は存在しない。
・労働組合や労働紛争は存在しない。
・未払いの残業代は存在しない。
・契約上の債務不履行は発生していない。
・会社や事業にまつわる買い手が把握していない訴訟は存在しない。
・法令等を遵守している。
・反社会的勢力とのつながりはない。
このほかにも、事業内容やデューデリジェンスで発覚した問題点を踏まえ、独自の条項が盛り込まれることもある。
表明保証の条項設定が難しい理由
表明保証はデューデリジェンスと同様に、買い手のリスクを低減する仕組みだ。買い手としては、より多くの項目を盛り込み、より広範囲のリスクに備えたいと考えるのが自然だ。
ただ、あまりにも広範囲な内容を保証する場合、売り手が抵抗感を覚えることもある。表明保証に違反すると、買い手は被った損害に応じて、損害賠償や補償を請求できる。
会社経営という重責から解放されて勇退生活を送ろうというときに、損害賠償や補償のリスクを負うのは気が重い。
そのため、項目を増やし範囲を広げようとする買い手と、項目を減らし範囲を狭めようとする売り手の間で、表明保証の条項をめぐる駆け引きが行われる。
実際には、売り手と買い手の経営者が単独で表明保証の条項を精査するのは難しい。最終的に、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら精査や交渉を進めていく。
表明保証の違反があったときの買い手の対応
M&Aでは、表明保証条項を含む最終譲渡契約を結んだあと、クロージング手続きを行う。クロージングとは、譲渡対価の支払いや役員の選任などの最終手続きをさす。
クロージング前に表明保証違反が発覚した場合、買い手はクロージングを拒否し、表明保証の違反に関して是正を求められる。クロージングは行うが、損害賠償や補償を請求するケースもある。
重大な表明保証の違反に関しては、クロージングが終了していなければ契約を解除できるという内容を、契約時に定めておくことがある。その場合、買い手はM&Aの契約そのものを解除できる。契約は解除せず、損害賠償や補償を請求するケースもある。
また、買い手は譲渡対価を支払う前であれば、表明保証違反に関する損害賠償額や補償額を差し引いたうえで、譲渡対価を支払える。
クロージング後に表明保証違反が発覚した場合、基本的に契約を解除できない。ただし、買い手は売り手に対して損害賠償や補償を請求できる。