見誤ると恐ろしいM&Aの”表明保証” 基礎知識を解説!
(画像=David/stock.adobe.com)

表明保証は、M&Aにおける買い手のリスクを減らすために行われる。表明保証を理解しておかないと、売り手も不利な条件でM&Aの契約を締結してしまいかねない。今回は、表明保証の意味や必要性、M&Aにおけるタイミング、違反した場合の損害賠償などをわかりやすく解説する。

目次

  1. 表明保証とは?
    1. 表明保証の必要性
    2. 表明保証のM&Aにおけるタイミング
  2. 表明保証の代表的な条項
  3. 表明保証の条項設定が難しい理由
  4. 表明保証の違反があったときの買い手の対応
  5. 表明保証に関する損害賠償の必要性
    1. リスクはあるが必ず損害賠償を請求されるとは限らない
    2. 表明保証に関連した損害賠償を巡る判例
  6. 表明保証のトラブルを減らす方法
  7. 専門家のサポートを受けながら表明保証の条項を精査
  8. 事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

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表明保証とは?

表明保証とは、M&Aの売り手が法務・財務・税務などの内容に関して網羅的に真実であり正確であることを保証する仕組みだ。

たとえば、貸借対照表に計上されていない債務が存在しないことを保証する内容が挙げられる。表明保証は、アメリカのM&Aの実務を参考に、日本でも広く利用されるようになった。

ここからは、表明保証の必要性やM&Aにおけるタイミングなどについて解説する。

表明保証の必要性

そもそもM&Aでは、最終譲渡契約を結ぶ前にデューデリジェンス(買収監査)が行われるのが一般的だ。デューデリジェンスは、買い手のリスクを低減するための仕組みである。

デューデリジェンスでは、買い手が弁護士や税理士といった専門家に依頼し、売り手の法務・税務などに問題点がないかを調査する。数週間から数か月程度の期間をかけて行われることが多い。

最終譲渡契約を結んだあと、法務・税務などの深刻な問題を抱えていたことが発覚すると、買い手にとっては大きな損失となるからだ。

仮にデューデリジェンスで契約書の内容や税務申告などに問題があった場合、M&Aを中止したり譲渡価格の引き下げ交渉を行ったりできる。

とはいえ、数週間から数か月のデューデリジェンスで、数十年にわたる会社の資料を精査し、あらゆる問題点を洗い出すのは専門家といえども現実的には難しい。

また、デューデリジェンスでは、売り手が提示した資料を確認したり、売り手にインタビューしたりする。悪意のある売り手であれば、資料を紛失したと伝えたり、虚偽の回答をしたりする余地がある。

そのため、デューデリジェンスを実施しても買い手のリスクが必ず下がるとは限らない。問題点が発覚しても、期間が限られ譲渡価格の交渉が難しいケースもある。

このような現状を踏まえM&Aの実務では、売り手が買い手に対して表明保証を行うようになった。

表明保証のM&Aにおけるタイミング

M&Aは一般的に、次のような流れで進めていく。

①M&A仲介会社と仲介契約・秘密保持契約を締結する。
➁企業名を伏せ、企業の概要を記した資料を作成する。
➂M&Aの候補先を探したあと、お互いに合意のうえでネームクリアして社名を明かす。
④経営者同士がトップ面談をする。
⑤双方問題なければ基本合意契約を締結する。
⑥条件交渉を行う。
⑦デューデリジェンスを実施する。
⑧最終譲渡契約を結ぶ。
⑨クロージング(決済などの最終手続き)を行う。

表明保証の内容は、最終譲渡契約に表明保証条項として盛り込まれるのが一般的だ。そのため表明保証の条項は、デューデリジェンスの実施後から最終譲渡契約の締結までに決める。この間にデューデリジェンスの結果を踏まえて譲渡価格の交渉も行う。

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