本記事は、藤田源右衛門氏の著書『中小企業でもできる SDGs経営の教科書』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
SDGsにおいて欠かせない「再定義」の意味
自分たちの言葉に置き換える
SDGsに取り組むにあたっては、まず、自社のこれまでの事業を見直してみる「再定義」を行う必要があります。これは、事業を再定義するということに限らず、SDGsというものを「自分たちの言葉に置き換え、あらためて定義し直していく」ということです。
たとえば、「社会貢献」といった言葉に、なんとなく胡散臭い、ウソっぽい、きれいごとだ、というようなニュアンスを感じる人はいないでしょうか。SDGsの解説を読んだり聞いたりすると、まわりくどいとか、靴の上から痒いところを掻くようなもどかしさを感じることはないでしょうか。
SDGsはいわば英語で表現されたものを日本語で、しかも学術的な言葉で解説していることが多く、そう感じる人がいるのもしかたありません。ただ、そう感じるのであれば、自分たちの言葉、自社なりの解釈に置き換えていくべきです。
実はこのことも、再定義の一つだと考えています。
SDGsそのものを再定義してみる
この再定義で重要なのは、常に「自分が取り組むこと」に、すなわち自社の戦略としてしっくり馴染む言葉に変えていくことです。
たとえば「持続可能性」という言葉を、これまで本書では何度か使っていますが、この言葉に違和感を覚えるのであれば、「継続できる」「永続する」「循環する」「長く維持できる」などに変えてもいいのです。ひょっとしたら「自走する」とか「自律的に動ける」といった言葉のほうがしっくりする会社もあるはずです。そのほうが社員一人ひとりの行動を促すことができれば、それに越したことはありません。
SDGsのSを「持続可能性」ではなく、「うまくまわる」と捉えれば、経営においてはSDGsを進めることで、ヒト、モノ、カネ、情報といった経営資源がうまくまわること、と解釈できます。自社がある地域社会においては、ヒト、モノ、カネ、情報といった社会にある資源(もの)がうまくまわることを意味します。そして、目標を持ってそれが可能になるビジネスに取り組んでいくことがSDGsということになります。
では、SDGsのDはどうでしょう。DevelopmentのDですが、これを日本語訳の「開発」とか「発達」「発展」とかと捉えると、しっくりとこないと考える人もいるはずです。
そのように捉える人にとっては、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」も、もともとは先進国が途上国を開発し、場合によっては搾取していたようなビジネスのあり方を変革し、先進国と途上国がパートナーシップを構築し、これからのビジネスを推進していこうというイメージに受けとるかもしれません。
そういうイメージが自社として違和感があるならば、「開発」を「いい方向に進める」と考えてもよく、「価値や存在感を高める、成長する」と、パートナーシップを「手を組む・協業する」といった解釈にしてもいいはずです。
最後のGsはGoalsですが、これも「達成したら終了する複数のゴール」ではなく、「一定水準を維持できる複数の目標」と解釈してもいいのです。もちろん、2030年より早く達成できたら、それで、その目標に関する取り組みはいったん終了すると考えてもかまいません。
SDGsを最もやさしいと思う言葉で定義すると、「ずっと続けられることをめざして、自分と他の人がいい方向に進むための目標」となるでしょうか。
大切なのは、自分と自社にとってしっくりする言葉で再定義すること。それができて初めて主体性を持って取り組むことができます。
「前文」と「宣言」を読んでみよう
なお、SDGsというと、私たちはつい17のカラフルなアイコンを思い浮かべがちです。それゆえ「17の目標がすべてである」と考えがちですが、実は、の目標を導き出した思想、根っこの部分があります。
それがSDGsの「前文」と「宣言」です。前文には、人間と地球、そして繁栄のための行動計画として五つの決意が示され、宣言では17の目標と思い描く世界が示されています。
前文と宣言を読むと、SDGsをより理解でき、再定義が可能となります。
自社の取り組みや考えが、SDGsに沿ったものであるか、独りよがりなものになっていないかをチェックする意味でも、ぜひ前文と宣言を読んでみることをお勧めします。
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