本記事は、藤田源右衛門氏の著書『中小企業でもできる SDGs経営の教科書』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています
企画例 エネジンCMソング【SDGs 4・5・8・9・11・17】
当社では、「エーネジンジン♪エネジンジン♫」とバックコーラスが流れるCMを10年以上放映しています。それを新型コロナ感染症の克服という社会課題からアレンジしてテーマとした企画です。
企画の背景・社会課題としては、「コロナ禍で幼稚園・保育園、小学校などの休園や休校、また、外出の自粛などから家に閉じこもる時間が増え、外で思いっきり遊ぶような楽しみが減っている。そんな状況を少しでも解決し、子どもたちに楽しみや目標を与えることはできないか。また、そうした思いをもつ親のニーズにお応えすることができないか。そして、そのお役に立つことにビジネスチャンスはないか」と考えました。
このとき、顧客は誰であるかをあらためて考えると、幼稚園・保育園・こども園・子どもたち・親御さん・ご家族がまず想定できます。さらに、たとえば楽器メーカーや楽器店など、その世代を顧客としている企業も想定できました。
それら顧客の市場・ニーズをヒアリングすると、次のようなものが挙がりました。
・幼稚園・保育園・こども園=コロナ禍でイベントがすべて中止になり、何をしていいのかわからない。少子高齢化のなかで、園のPRはしたい。地域に園の存在意義を伝えたい。親の求めるイベントや企画ができない ・親、ご家族=子どもたちの楽しみをつくってあげたい。コロナ禍でも実施できるイベントをつくってほしい。子どもたちの思い出をつくってあげたい。子どもたちの元気な姿、頑張っている姿を見たい。皆に見てほしい ・楽器メーカー=幼稚園・保育園・こども園と接点を持ち、楽器のPRをしたい。接点を持っている園の役に立ちたい。他社と差別化したい。この世代に楽器をPRし、音楽をやってもらいたい
このようなニーズをより精査し、企画の組み立てを行いました。そして、「コロナ禍でイベントや運営に困っている園・子どもの活躍を応援し、見たい・見せたい親御さんやご家族・園と接点を持ち、ライバルと差別化し、その世代にPRしたい楽器を使って新たなCMソングをつくる」という企画を組み立てることができました。
企画作成にあたって、社内では次のような意見がありました。
社員A=以前のCMソングではCM出演することに関して幼稚園はどう捉えるかと思っていたが、思った以上に興味を持たれていた。コロナでイベントができなくなっているから、反応はいままで以上にあるのではないか 社員B=園もコロナ禍のためオンライン配信など工夫しているから、CMに出られなくても喜んでくれるのではないか 社員C=「エネジンの歌を子どもたちはいろんなところで歌っている」と幼稚園の園長にもいわれたので、エネジンソングを通して皆さんのお役立ちができる。これはすごいことだと思う 社員D=テレビCMに出られることは、親は喜ぶ。これは活用すべき 社員E=楽器メーカーさんに話をしたら、かなり前のめりだった 社員F=楽器メーカーが審査してくれることは本格的。参加者もやる気が高まる
このような意見を踏まえ、新たなCMソング企画を組み立てました。それが、「エネジンCMソングを募集し、楽器メーカーさんが審査員となり、CMソングを歌っていただく園や団体を決めていこう」というものです。
この取り組みは新聞でも紹介をされ、最終的には10団体の応募があり、4団体をCMに採用しました。
「毎年、保護者さんが楽しみにしている企画の一つになっています。子どもたちの元気な姿が、皆の力になっているようで、こちらもうれしいですね」(北浜幼稚園担当者)
「今後は、この浜松という地域の特色を活かして管楽器を使ったCMソングの音源アレンジなどをしてもおもしろいですね」(足立楽器店担当者)
「園の皆さんに喜んでもらえて接点を持たせていただける、ほんとうにありがたいです。県中部のほうも営業範囲になるので、そちらにも声をかけてみますね」(鈴木楽器販売担当者)
「本業の部分に直結するところとして、いままで接点のなかった県東部の保育園にご協力をいただいたことで、東部地区での知名度の向上につなげることができました」(当社担当・織田真実)
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