本記事は、藤田源右衛門氏の著書『中小企業でもできる SDGs経営の教科書』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

SDGsは企業の課題を解決する

SDGs
(画像=Rhetorica/PIXTA)

御社の課題は何か

皆さんの会社では、どのような課題を抱えているでしょうか。

当社の課題をご紹介しましょう。おそらく、どの県・市町村の中小企業でも同じような悩みを抱えているはずです。

・コロナ禍で需要が戻らない
・商品やサービスで差別化ができない
・利益率が低下している
・会社の強みがうまく消費者、お客様に伝わらない
・社員のモチベーションが維持できない
・社内にチャレンジ精神が醸成できない
・人材の確保ができず、定着率が低いままだ
・知名度が上がらない

この悩みは、「困った、どうにもならない」と思いあぐねているだけでは絶対に解決できません。どこかに解決の糸口があるはずだと思考を進めなければ、解決にはたどり着けないのです。

当社では、その解決の糸口をアライアンスによるCSR活動に見いだしてきました。従来のお客様を獲得する手法ではなく、他の会社・団体等とアライアンスを結び、地域のお役に立つCSR活動を行い、メディアに掲載していただき認知度や存在感を高めることで、お客様の獲得につなげてきたのです。

たとえば、小学校での太陽光発電の出張授業や主婦向けの暮らしのセミナーなどのイベントを年に40回ほど行っています。主婦向けの暮らしのセミナーは「ママゼミ」と称し、子どもの教育資金の貯め方、災害時の簡単料理レシピなど、多岐にわたるセミナーを浜松いわた信用金庫や杏林堂薬局などと共同で開催しています。

また、自社キャラクター「エネフィ」が地域の店舗などを訪問し、その様子を企業ブログに紹介することで、その店舗や商品のPR効果を高めています。地域のお役に立つことを行い、会社の認知度・存在感を高め、お客様の獲得につなげているのです。

このような活動は、当社側がお客様のもとを訪ね、暮らしの現状や課題を聞くことにも役立っています。もちろん当社も営利を求める会社ですから、こうした活動を売上・利益の向上につなげています。

お客様側から見れば、当社を、何社もあるLPガス会社のうちの一社ではなく、自分たちの困りごとを解決してくれる、自分たちの役に立つ活動をしてくれる存在と認識してくれるようになり、こちらがLPガスのご提案をしても、反応が大きく変わっていきました。

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(画像=『中小企業でもできる SDGs経営の教科書』より)

こうした取り組みを続けることで、自社の悩みを解決するための糸口を少しずつ手繰り寄せていきました。それによって、年間新規契約件数の増加や、当社に対する社会貢献に熱心な企業という認知も広まり、人材採用面でも求人の応募数が増加するなどの効果が現れています。

このようにCSR活動に手ごたえを感じていった一方で、会社としてこの取り組みをさらに発展させたい思いが強くなってきました。

このとき着目したのがSDGs(Sustainable Development Goals)でした。

SDGsとは国連の加盟193カ国が全会一致で採択した持続可能な開発のための国際的な開発目標です。

具体的には、17の世界的目標、169のターゲット(数値目標)、247の指標(重複を除くと231指標)から構成されており、2015年9月の国連総会で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記述されている、2030年までの対策指針です。いわば、

「世界中の組織・会社・団体、さらに個人が持続可能な社会をつくっていくために、2030年までに例示した目標を達成しましょう!」

という決議です。

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(画像=『中小企業でもできる SDGs経営の教科書』より)

当社の事業とSDGsとの関わりでいえば、まず太陽光事業は7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が該当します。また、太陽光事業は13「気候変動に具体的対策を」にも該当します。

LPガス事業は11「住み続けられるまちづくりを」(防災)に、ウォーターサーバーの宅配を行うアクアクララ事業と住宅リフォーム事業はSDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」が該当します。

事業全般では12「つくる責任つかう責任」(リサイクル)が該当し、経営全般は8「働きがいも経済成長も」が該当します。

SDGsに取り組み自社の持続可能性を高める

SDGsに関心を持ったのは、地場の金融機関が専門部署を設けて、積極的に取り組んでいることがきっかけでした。また、取り引きをしている浜松いわた信用金庫の担当者から、

「御社のやっていることは、SDGsそのものですね」

などと言われたことも引き金となりました。

そこでSDGsの解説書やSDGsを実施している会社の例などについて書かれた本を読んだり、新聞記事や先行事例などの情報を得たりしてみると、確かに当社が積極的に取り組んできたアライアンスによるCSR活動はSDGsと重なる部分も多いように感じました。

また、今後の取り組みに活かせるヒントも数多くありました。

なにより中小企業こそ、その身の丈に合ったSDGsに取り組むことの重要性を感じたのです。

「アライアンスによるCSR活動をより広く継続的に展開していくことが地域のSDGsの達成につながり、それが自社の持続可能性にもつながる」

という確信をもつことができたのです。

中小企業でもできる SDGs経営の教科書
藤田源右衛門(ふじた・げんうえもん)
エネジン株式会社代表取締役社長、株式会社ハマネン代表取締役社長。1970年浜松市出身。早稲田大学商学部卒業。公認会計士として監査法人勤務後、(株)ハマネンに1998年入社、2001年代表取締役社長就任。2004年(株)ハマネンと丸善ガス(株)が統合してエネジン(株)発足、現在に至る。社名の「エネジン:ENEGENE」には、人(ジン)とエネルギー(エネ:ENE)の未来を創造(GENEsis:発生、起源、創世紀)する企業でありたい、という意思が込められている。CSR活動から発展した「地域貢献型SDGs×パートナーシップ×広報活動」の取り組みが大きく注目を浴び、全国からの視察が絶えない。著書に『なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか』(あさ出版)。

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