本記事は、小松麻美氏の著書『マンガで学ぶ! 営業の超基本』(フローラル出版)の中から一部を抜粋・編集しています
受注につなげるための絶対条件「BANT」
プレゼンから受注につなげるには、プレゼンの「土台」がしっかりできていなければなりません。「契約」につながる必須項目を洗い出したうえで、プレゼン内容を詰めていきます。
具体的には、「予算(Budget)」「決裁権(Authority)」「必要性(Needs)」「導入時期(Timeframe)」の4つの要素で、それぞれの頭文字をとって「BANT」といいます。
確認すべき事項はお客様によっても異なりますが、BANTは、受注促進における絶対条件といえます。
これらをプレゼン前に確認し、漏れがないように提案書をつくります。さらに、予算や導入時期など流動性のある要素は、プレゼン当日にさらに詰めていきます。
お客様が「必要性」を感じなければ受注できません。だからこそ、ファーストコンタクトから必要性を確実なものにするために、「お客様の課題と自社商材を使った効果的な解決策を導き出す」というプロセスが不可欠なのです。
ありがちなのは、決裁者や推進者は必要性があると判断したものの、現場のニーズとマッチしていないために受注できないというケースです。そうならないように、現場の運用者の課題を踏まえながら実際の使用イメージもプレゼンに盛り込みます。
そのような準備をしたうえで、最終プレゼンでもあらためて問題提起を通じてお客様の「購買動機」を強めていきます。お客様と課題について合意しながら導入の必要性を認識していただき、納得していただくことは、その後の意思決定に直結します。「導入時期」に関しても、しっかりと確認しておきましょう。なぜなら「いつ導入するのか」によって、クロージングのタイミングを調整する必要があるからです。必要性を認識してもらい、導入に最適なタイミングが「今」であると判断していただければ、スムーズに受注しやすくなります。
「予算」も必須事項です。ここを詰めきれないまま見積もりを出して、あとから値下げの相談をされると、値下げに応じるか、値下げできずに採用していただけないかのどちらかになります。一度値下げをすると、次回からも他社との価格競争に陥ります。
予算を確認したうえで、決裁が通りやすい見積もりと提案プランを考えます。予算が合わない場合は、短期間の有料トライアルで小さな課題を解決し、自社商材の効果を実感していただくという方法もおすすめです。
「決裁者」はクロージングの最後の関門になるため、必ず確認すべきです。ただ、確認の仕方に注意が必要です。「決裁権のある方と話をしたい」というスタンスではなく、あくまでも「担当者が社内決裁を通すためのお手伝いをする」という姿勢で確認をします。
決裁に必要な要素を取りこぼした結果、成約にいたらないということがないように、BANTはプレゼン前に忘れずに確認しましょう。
必須なのに8割の営業がしていない「テストクロージング」
確実に受注するために、最終的なクロージングの前に、相手の本気度を測っておく必要があります。そのために行うのが「テストクロージング」です。プレゼンを終えて、お客様が「採用しない」という意思決定をしてしまうと、状況を覆すのはほぼ不可能です。そこで、テストクロージングでお客様の「温度感」を確かめます。
テストクロージングは受注のために欠かせないものですが、ユームテクノロジージャパンの調査では、「テストクロージングを習慣的に行っている」と答えた方はわずか16.9%であり、「テストクロージングを知らない」という方が37.7%という結果になりました。8割以上の営業がテストクロージングを実施できていないのは、非常にもったいないことではありますが、裏を返せば、テストクロージングをすればこれまで以上に受注できるようになり、ほかの営業との差をつけられるということでもあります。テストクロージングの進め方は、次のとおりです。
・テストクロージングの例
営業「本日の提案で、○○様は弊社のサービスを導入したいと思われましたか?」 担当者「はい、ぜひ導入したいと思いました」 営業「ありがとうございます! ちなみに、○○様の感覚では、導入の可能性は何%くらいありそうでしょうか?」(商談担当者の「導入したい」度合いを確認) 担当者「私としては、70%くらいだと思います」 営業「ありがとうございます。では、足りない30%はどのような点をクリアしたら補えるとお考えでしょうか。また、さしつかえなければ、社内決裁の流れとご検討期間について確認させていただけますか」(導入障壁と意思決定のステップを把握)
このように、テストクロージングによって相手の本気度を測り、補うべき部分があればクロージングの前にカバーして受注の確度を高めていきます。
また、プレゼンをしたお客様に決裁権がなければ、導入の可能性が100%になることはあり得ません。必ず、決裁者対策が必要になってきます。決裁者に直接商談を行えるか否かで変わりますが、たとえば、次のようにお客様に提案します。
・決裁者に対して直接商談を行える場合
「さしつかえなければ、社内プレゼンの場に同席させていただいて、○○様のサポートをさせていただけないでしょうか?」
・決裁者に対して直接商談を行えない場合
「○○様が上司の方を説得しやすくなるように、導入後のシミュレーションやよくある質問を盛り込んだ資料を作成させていただきます。仕上がりましたら、15 分ほどご説明のお時間をいただけないでしょうか?」 「本日のご提案内容に補足事項も盛り込んだ動画を作成いたしますので、それをそのまま上司の方にお見せいただくことも可能です」
このように動画を共有するなどテクノロジーを活用することで、お客様の手間を減らしつつ、決裁者に直接訴えることも可能です。
テストクロージングを経て足りない要素を補い、確実に成約につなげましょう。
戦略パートナーとしてお客様を「導く」クロージングに
クロージングは、「押し売り」のようになってはいけません。「お客様の戦略パートナーとして成功へと導く」ことを心がけましょう。
もっともやってはいけないのは、「今、ご契約いただければ、お見積り額からこれだけお値下げさせていただきます」という値下げや、「じつは、今月のノルマが厳しくて……私を助けると思ってご契約いただけませんか?」といった懇願です。
誰しも、強引に物事を進められると嫌な気持ちになるものです。それがコストやリスクの伴う契約であればなおさらです。押し売りで強引に契約を取っても、それでは、本来クロージングで引き出すべき「納得」を得られません。
強引に契約させられたお客様は、「買わされた」という感情を抱きやすく、契約後のクレームやキャンセルにつながりやすくなります。それによってお客様との信頼関係が壊れてしまうと、将来的な売上まで失うことになってしまいます。
×説得して契約を取りにいく ○納得・合意を得て契約していただく
営業はお客様の「戦略パートナー」として、お客様の目標を実現する意思決定をサポートする存在です。
「決めさせる」のではなく、お客様が決断するために必要な提案や条件を揃え、決断のための障壁をなくすというスタンスでクロージングを進めましょう。
また、納得し、合意していただくためには、「自社ではできないこと」は率直にお伝えしておきます。契約が欲しいあまりお客様の要望に無理に応えようとすると、契約後のトラブルの種になります。
お客様を成功へと導き、お客様と一緒に解決を目指せるクロージングができれば、キャンセルやクレームは確実に減ります。お客様に感謝され、契約後も頼られるようになります。そうなれば、追加契約や、ほかのお客様をご紹介いただくといった発展もしやすくなります。
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