本記事は、小松麻美氏の著書『マンガで学ぶ! 営業の超基本』(フローラル出版)の中から一部を抜粋・編集しています
売れない営業は「説明」をし、売れる営業は「提案」する
商品やサービスに関する情報をきちんと覚えることは大前提です。しかし、ただ「覚える」だけでは足りません。売れない営業がやりがちなこととして、商品の「説明」に終始している、ということがあります。
商品の説明資料や、開発現場からの説明をそのままお客様に伝え、お客様から質問があったら持ち帰って現場に確認する。これでは、営業は単なる「つなぎ役」になってしまいます。つなぎ役の営業は、どのお客様にも同じ説明をしてしまいがちです。商談時にいつも同じパターンでスラスラと説明ができている人は注意が必要です。
営業は「つなぎ役」ではなく、顧客の「コンサルタント」であるべきです。コンサルタント型の営業は「提案」を重視しています。「相手が何に困っていて、どんなことをしたいのか」というお客様の視点に立ち、さらに、「何をすれば相手の課題がクリアされ、理想に近づくか」という、相手が気づいていない視点にまで踏み込んだ提案ができています。
そのためには、商品知識を暗記してワンパターンな伝え方をするのではなく、相手に合わせて、適切なアドバイスができるようにならなければなりません。
たとえば、お客様の目前の課題や、中長期的な目標をマインドマップで描き、それをもとに、目の前の課題の解決策やその先の目標への道筋を視覚的にご提案します。マインドマップにすることで、お客様が現状から理想への流れをイメージしやすくなるだけでなく、お客様の視点に立った提案を組み立てやすくなります。
×商品の説明に終始しがち。しかも、ワンパターン ○顧客に合わせて商品の魅力をもとにした適切なアドバイスができる
これが売れない営業と売れる営業の差です。
営業という職業について考えてみれば、当然のことでもありますが、これができていない営業パーソンが多いのも事実です。だからこそ、この小さな差をクリアすることで、「売れない営業」から「売れる営業」へと変わっていけるのです。
「どんな商品か」ではなく「どんな利益があるか」
では、提案型の営業になるにはどうしたらよいのでしょうか。商品理解が大前提と言いましたが、商品知識を頭に叩き込めばよい、ということではありません。
顧客が知りたいのは、商品の機能や性能ではありません。「その商品がどのような価値を自分に提供してくれるのか」という顧客にとっての「ベネフィット(利益)」が知りたいのです。
たとえば、あなたが医師から薬を処方されるときのことを考えてみましょう。
医師が、薬の成分や名称、ほかの薬とどう違うか、何が優れているかといったことを長々と説明し始めたらどう思うでしょうか。「そんなことより、この薬が何に効くか、このつらい症状がどう改善されるかを教えてほしい」と思うはずです。
患者にとっての課題は「病気を治すこと」であり、そのために適切な薬が選ばれ、処方されるべきです。医師が薬の名前や成分、効果効能を覚えるのは当然のことですが、患者にとってはつらい症状さえ治ればいいのです。
営業が商品やサービスを提案する場合も同じです。営業が商品知識を身につけ、お客様の質問に答えられるようにするのは、基本中の基本です。ただ、商談では、自社の商品やサービスが顧客にとって「どう役に立つのか」を提案することが求められます。
実際のトーク例で比較してみましょう。
・機能を説明するNGトーク例
「この○○という商品には、Aという機能やBという機能があり、他社の製品よりも優れています。その点がさまざまなお客様に選ばれています」
・ベネフィットがわかるOKトーク例
「御社が掲げる□□という目標を達成するには、××という課題をクリアする必要があるかと思います。そのために△△の場面でこの○○をご活用いただくことで、課題を解決できます」
ひとつ目のトークでは、顧客は商品の機能や性能しかわかりません。他社が導入しているからといって、「では、うちも」とはなりにくいのが現実でしょう。
一方で2つ目のトークは、相手の目指す理想のかたちや課題を理解したうえで、問題解決のシーンを想定し、「商品を導入することで、その課題が解決される」という流れで伝えています。
後者のような提案をすることでベネフィットがスムーズに伝わり、必要性を理解してもらえます。結果、相手の心に刺さりやすくなります。
そのためには、商品の基本的な知識に加え、「その商品がどんな価値を提供できるのか」「顧客にどんなベネフィットがあるのか」もイメージしながら理解するようにしましょう。これが、商品理解をより深めるということです。
商品の「機能」ではなくそれが提供する「価値」に注目することで、自然と「売れる」提案ができるようになります。
価値が伝わるのは「機能」より「事例」
商品やサービスの機能や特徴よりも「価値」に注目して提案力を上げるために、具体的に商品の情報をどのように伝えればよいのでしょうか。
より説得力のある提案をするためには、実際にお客様に「どう使われているか」がわかる活用事例を学ぶのが近道です。
活用事例には、商品やサービスの「導入の目的」から「商品の機能や特徴がどうマッチしたか」「導入することで解決できた課題」まで、すべてが詰まっています。それらがそのまま、提案に使えます。
事例が「生の情報」であることも重要なポイントです。実際に商品を使用した顧客の事例だからこそ、これから提案するお客様もその商品をどう使えばいいのかが想像でき、商品の可能性がよりリアルに、「自分ごと」としてイメージできます。
営業が言葉を尽くして商品について説明するよりも、活用事例をもとに提案したほうが何倍もベネフィットが伝わりやすくなります。
たとえば、あなたが法人向けにレンタカーの営業をすると仮定してみましょう。「クルマを使いたいときに使える」というサービスの特徴を伝えるだけでは不十分です。顧客にとってのベネフィットが伝わりやすい活用事例をいくつか考えてみてください。
たとえば、こんな例が考えられます。
・考えられる活用事例
「出張の際、最寄り駅までは電車で行き、そこからレンタカーを利用することで、渋滞を避けられるうえ、移動時間を効率的に使えます。さらに、高速を使わないので事故のリスクが下がったことが評価されています」 「必要なときに社用車がすべて出払ってしまっていて使えない、というストレスがなくなった点がお客様に喜ばれております」
あらかじめ活用事例を学んでおくと、提案のリアリティが増し、お客様の課題解決に直結していきます。
売れている営業パーソンほど、「その商品がどう役に立ったのか」「どのような働きをしたのか」など、商品の強みや提供価値が伝わる活用事例を知っています。そのため、お客様からのヒアリングにおいても、商品価値がマッチする課題や問題のサインを見逃しません。
活用事例がわからないという人は、社内のほかの営業にリサーチしてみてください。営業部内で事例を共有する必要もあるでしょう。また、現在、商品やサービスを導入されているお客様にインタビューをするのも効果的です。「お客様の言葉」で語られることで、説得力がさらに増します。
先に、商品理解を深めるのが営業のマナーであるとお話ししました。しかし、リスク管理に関わることなど伝えなければ相手に不利益を生じさせてしまう知識を除いては、活用事例という「最強のカード」を使って顧客に有益な提案ができるのなら、必ずしもすべての商品情報を完璧に暗記しておく必要はないともいえます。
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