本記事は、小松麻美氏の著書『マンガで学ぶ! 営業の超基本』(フローラル出版)の中から一部を抜粋・編集しています
リモートでも「売れる営業」は育てられる
営業のマネージャーは、どのような課題を抱えていることが多いのでしょうか。
ユームテクノロジージャパンの調査では、「部下の能力差が大きい」「モチベーションを上げられない」「売上につながらない」といった課題を感じるマネージャーが多いことがわかりました。また、営業教育についても、「営業スキルの陳腐化」「指導の属人化」「研修や教育の成果が見えない」「指導時間不足」などの声が多く聞かれます。
また、以前セレブリックスでも、営業マネジメントの課題についてSNSで調査したところ、「メンバー育成」「能力開発」「メンバーのモチベーション管理」などが上位にランクインしていました。
これらの課題は、コロナ禍でさらに加速しています。リモートワークが一般化し、リモート営業のやり方も、あるいはリモート環境でどのように営業を育成するのかも、未だ模索段階の企業が多いのが実情です。
そのなかで確実に成果をあげていくためには、「なぜ、今までのやり方で売れる営業を育てられなかったのか」「リモート環境でどのような指導をしていくべきか」を考え直す必要があります。
その際、「リモート環境のマイナス面をどう補うか」を考えるだけでは、将来的な営業力強化は望めません。状況をポジティブに捉えて、「リモート環境のプラス面を最大限に活用する」というマインドにシフトしましょう。
リモート環境で学習効果をより高めるには、オンライン上での学び合いや実践を通した学びの共有を促し、「学習が成果につながる環境」を構築するのが効果的です。幸いなことに、テクノロジーの発展は日々目覚ましく、各種ツールを活用することでオンラインの学習環境を構築しやすくなってきています。
オンラインでの学習環境を整えたら、次に考えるのは、「何を、どう教えるか」「部下の能力をどのように伸ばしていくか」という具体策です。ここでは、多くの企業が抱える課題をもとに、それらを解決する秘策をお伝えしていきます。
これで目標必達! マネージャーの「5つの管理」
売れる営業チームをつくるために、マネージャーは日々、次の「5つの管理」を意識してマネージメントにあたってください。
1 目標管理:目指す成果を年間・半期・月別・日別にブレイクダウンし、そのため の行動計画を設定 2 行動管理:成果を出すための日々の行動計画を設定し、成果が出ない場合は軌道修正をする 3 モチベーション管理:行動のもととなるモチベーションを管理する 4 案件管理:見込み案件を受注につなげるために「顧客が買わない理由」をなくすサポートをする 5 能力管理(教育):2 3 4を向上させ、1につなげる土台となる学びを促す
この5つの中で、「目標管理」に力を入れているマネージャーも多いかと思います。目標管理は必須のものですが、ともすれば結果論になりやすく、「モチベーション管理」にマイナスの影響が出かねません。
「目標管理」と「モチベーション管理」は連動しています。現状より少し背伸びをした目標を設定すると、モチベーションアップにつながりやすくなります。しかし、掲げる目標が高すぎると、モチベーションを下げる要因になります。
目標を達成できるかどうかは、顧客や競合他社など営業パーソンのスキル以外の外部環境にも左右されるため、「目標を達成できた、できなかった」という結果だけを見ていても成果をあげるのは難しいのです。
そして、モチベーションを上げるのは「成果」です。「アポイントが取れた」「商談でお客様に喜んでいただけた」といった一つひとつの成果が、モチベーションを育てます。
まずはひとつでもいいので、小さな成果をあげること。そのために、「行動管理」と「案件管理」にとくに力を入れます。
まず、部下が成果を得られるよう、部下の行動計画を設定し、成果があがらない理由を分析しながら最適化します。それと同時に部下が取り組んでいる個々の案件を分析し、戦略や進捗、具体的な提案内容をチェックするなどしてフォローします。また、チーム全体の案件も俯瞰して、注力すべき案件を見極めることも大切です。
ただし、「行動管理」も「案件管理」も「管理」にばかり注力しすぎると、「次のアポは取ったのか」「提案書はできたのか」と、先回りする指導にもなりかねません。そうではなく、あくまでも、部下自身が成長できるようフォローします。
そこでもうひとつ大切になるのが、すべての土台となる「能力管理(教育)」です。目標設定や行動計画、部下自身のモチベーション管理、案件を受注につなげる戦略など、ほかのすべての管理項目が「能力管理」とつながっています。
部下が能力を伸ばし、成果をあげるための学習環境を整えてあげること。そうすることで、部下は自発的に伸びていきます。
目標に関する数字の多寡は、そうしたマネージメントを経てはじめて評価の対象にすべきです。
営業の初期段階から「失敗理由」をなくしていく
営業教育は、スモールステップで初期の段階から改善していくとうまくいきます。
1 商品理解を深める 2 新規営業でアポイントを取る 3 商談で課題を探り出す 4 プレゼンとクロージングで受注する
本書でご紹介してきた営業プロセスの順番どおりに指導することで、より効果的・効率的に部下の能力を伸ばすことができます。
ここまでお話ししてきたように、すべての営業プロセスにおいて、「お客様が買わないと判断する理由」、つまり営業が「失敗する理由」はある程度決まっています。
それらの「失敗する理由」を知り、初期段階からつぶしていくことで、受注までの確度を高めていくのです。
ポイントは、全体に影響するところ、母数が多いところから改善するということ。商品理解が十分でなければ営業はできません。アポイントが取れなければ商談も始まらず、当然、プレゼンもクロージングもないのです。
一度にあれもこれも教えようとせず、営業プロセスをすぐに実践できる「ひと口サイズ」に分割し、ステップバイステップで改善していきます。そうすることで、誰でも「売れる営業」に近づいていくことができます。
「お客様の課題を見つけ、自社の商品やサービスを使った解決策をご提示する」という営業の目的は、商品理解からクロージングまで、一貫しています。ですから、なおのこと前の工程から改善していけば、目的を達成するための知識やスキルが蓄積され、確実に身につきます。
また、「ここを改善すれば、次にここがよくなり、さらにこう変化していく」という見通しを部下に見せてあげることも大切です。それにより、改善策が実践へと結びつき、指導や学習にかけた時間と労力が、成果としてあらわれるようになります。
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