すでに2022年が始まって早3ヶ月。もうすぐ今年度も終わりにさしかかり、新たな門出を迎える人も多いかもしれない。
THE OWNERでは今年度にヒットした記事を振り返る特集を企画。今年度話題を呼んだ「中国」の動向について振り返る記事をピックアップした。2021年4月16日、ホワイトハウスでの日米首脳会談後に発表された「日米共同声明」は中国の逆鱗に触れ、「必要なすべての措置をとる」と対戦的な構えだ。
そんな中で中国は不動産大手「恒大集団」の経営不安を抱えながらも、TPPへの加入申請を行った。今後の中国はどのような行動に出てくるのだろうか。
1.中国、日本に警告 「必要なすべての措置を講じる」 逆鱗に触れた日米共同声明の行方は?
(2021/05/08 配信)
2021年4月16日、ホワイトハウスでの日米首脳会談後に発表された「日米共同声明」は、台湾に歓迎と好意をもって迎えられた一方で、中国の逆鱗に触れることとなった。中国は、台湾、香港、新疆ウイグル自治区問題への言及を「内政干渉」とし、断固として撥ねつけると同時に、「必要なすべての措置をとる」と対戦的な構えだ。果たして、中国の報復は現実となるのか。
中国の逆鱗に触れた「日米共同声明」
声明文の内容は、「自由で開かれたインド太平洋を形作る日米同盟」、イノベーションから新型コロナ感染症対策、国際衛生政策、健康安全保障、グリーンな世界経済の復興などのビジョンを示す、「新時代における同盟」を宣言するものだった。
中国が強く反発しているのは、「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」「日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」の二ヵ所である。
日米が共同声明に台湾を盛り込んだのは、日中国交正常化(1972年)以来約50年 ぶりだ。これまで中国との対立に消極的だった日本が、米国と組んでインド太平洋の平和に動き出した。これは中国にとって、決して歓迎すべき動きではない。他国から「内政」に口出しされるだけでも面白くないはずだが、相手が最大の対立国である米国、そして米国に肩を押される形で重い腰を上げた日本となれば、なおさら、牙をむかないわけにはいかない。
2.データ競走でGAFA敗北?「AI世界最強」に化けるのは中国巨大テックか?
(2022/02/13 配信)
2021年、米国防総省の元幹部や元グーグルCEOが立て続けに「AI分野において米国は中国に負ける」と警告し、世界に衝撃が走った。ここに来て、世界最強とされる米4大テック、GAFA(Google、Amazon、Facebook*現Meta、Apple)が、中国の巨大テック企業に追い抜かされる可能性がにわかに現実味を帯びてきた。
「データを制する者がAI時代を制する」といわれる今、どちらがAI世界最強の王冠を手にするのか。
AI国家戦略を加速させる中国
冒頭の発言は、米国防総省で初の最高ソフトウェア責任者を務めたニコラス・チャイラン氏と、GoogleのCEOからNSCAI(米国人工知能安全保障委員会)のトップへ転身したエリック・シュミット氏によるものだ。両者ともに、「数十年後の中国に対抗できるチャンスはない」と、AI分野において中国が米国にとって最大の脅威であるとの見解を示している。
AI研究・開発で世界に出遅れた感の強かった中国だが、2017年に『次世代AI開発計画』を発表するや否や、瞬く間に世界トップの座を米国と競い合うまでに発展した。この計画は「2025年までに一部のAI分野で世界をリードし、2030年までに総体的なAI分野で世界トップになる」ことを目標に掲げたものだ。
中国の発展は目覚ましく、AI関連の論文数や特許数、AIスタートアップへの投資、コンピューター科学者の輩出数など、複数の領域ですでに米国を追い抜いている。
3.SNSにコメントしただけで懲役7ヶ月!? 中国共産党の止まらない言論弾圧
(2021/12/18 配信)
元中国副首相・張高麗氏との不倫関係を暴露した女子テニス選手、彭帥(ほうすい)選手の失踪について、国際的に波紋が広がっている。中国側は同選手の無事をアピールしているが、疑惑はますます深まるばかりだ。近年、SNSで共産党の英雄を茶化すだけで禁固刑となるなど、共産党による一党独裁体制はますます圧力を増している。
女子テニス選手の失踪疑惑
「前副首相と不倫関係にあり、性的関係を強要されたこともある」という彭帥選手のスキャンダラスな投稿が、中国版Twitter「微博(ウェイボー)」を介して世界中に拡散されたのは、2021年11月2日のことだった。投稿はすぐさま中国当局により削除され、彭帥選手はその直後から2週間以上にわたり消息を絶った。
インターネット上では、同選手の安否を気遣う声とともに、当局による身柄拘束疑惑が浮上し、ついには女子テニス協会(WTA)や欧米の政府が、同選手の安全を確認できる「検証可能な証拠」を求めて動きだす事態に発展した。
中国政府は、国営メディアCGTN(中国国際テレビ)を介して彭帥選手がテニス関係者らと談笑しながら食事をしている動画や、本人がCGTNに送ったとされるメールを公開したが、信憑性を疑う声はなくならない。確かに動画や写真の中の彭帥選手は元気そうに見えるが、無理やりやらされているのではないという証拠としては不十分だ。
メールの内容は「私は失踪したのではありません。家でゆっくり休んでいるだけで、何も問題はありません」というものだが、性的暴行の主張を自ら訂正するなど不自然さが漂う。
4.中国、感染拡大を隠蔽?! コロナ公表前にPCR機器大量購入か
(2021/11/06 配信)
依然として発生源が不明なまま、新型コロナの世界的感染拡大から2年が過ぎようとしている。そのような状況で、中国が国内初の感染事例を公式発表する数ヵ月前に、大量のPCR(総ポリメラーゼ連鎖反応)機器を購入していた事実が明らかになった。
一方、WHO(世界保健機関)は「発生源追究の最後のチャンス」として、新たな科学諮問グループを編成し、中国側の協力を要請した。
中国では2019年夏から感染が拡大していた?
『中国武漢のPCR購入報告書(PCR Purchasing Report Wuhan China)』を作成したインターネット2.0は、データインテリジェンス分析を専門分野とする米豪サイバーセキュリティー企業だ。同社が中国のプロジェクト・入札データサイトbidcenter.com.cnから2007~19年のデータを収集・分析したところ、2019年5月以降、中華人民共和国湖北省におけるPCR機器の購入が急増していた。
2019年の購入総額は6,740万元(約12億 17万円)と、2018年の約1.8倍、2015年の約6.7倍に及ぶ。特に、人民解放軍空挺軍病院(増加時期:2019年5月)と武漢ウイルス研究所(2019年11月)、武漢科技大学(2019年10月)、湖北省地区疾病管理予防センター(2019年5~12月)において、「異様なほど増加した」ことが指摘されている。
5.中国経済、信用収縮のリスク高まる。TPPはその捌け口ではない
(2021/10/01 配信)
総額33兆円、中国の名目GDPの2%に相当する巨額債務を抱える不動産大手「恒大集団」の経営不安が深刻化しつつある。
変調の転機は昨年夏、中国当局は市場の過熱を抑えるべく融資条件の厳格化と住宅ローンの総量規制を導入、新たな資金調達を封じられた同社の拡大戦略は反転、今月から年末にかけて社債利払いが集中する中、経営危機が一気に表面化した。
中国版バブルの起点は2008年、リーマンショック後の世界不況を救った4兆元(約57兆円)の財政出動である。ここから民間債務は一挙に、そして、一貫して拡大を続けてゆく。恒大集団の香港証券取引所への上場はその翌年、以後、高騰を続ける不動産を担保に資金調達と再投資を繰り返し、プロサッカークラブから観光、金融、EV事業まで年商10兆円、従業員300万人を越える巨大企業集団へ成長する。まさにバブルの申し子である。
いかがだっただろうか。中国の「必要なすべての措置をとる」という表現は「単なる威嚇」では済まない可能性がある。
日本にとって中国は、輸出入総額の約2割を占める重要な貿易相手国であり、約1万3,600社の日本企業が進出する国でもある。中国に関わる企業は3万社を超える。今後も動向を見守る必要があるだろう。
文・THE OWNER編集部