この記事は2022年4月22日に「ニッセイ基礎研究所」で公開された「消費者物価(全国2022年3月) ―― コアCPIは2022年4月以降、2%前後の伸びが続く見通し」を一部編集し、転載したものです。
要旨
中国国家統計局は4月18日、2022年1-3月期の国内総生産(GDP)を発表した。経済成長率は実質で前年同期比4.8%増と1年ぶりに前四半期を上回った(左下図)。しかし、需要別・産業別の内訳を見ると先行きに不安を残す内容だった。他方、消費者物価(CPI)はこれまでのところ安定している。但し、今後のことを考えると、工業生産者出荷価格(PPI)が高騰していること反映して上昇傾向を強める可能性が高いだろう。
需要別に見ると、輸出と投資(設備投資とインフラ投資)が牽引して1-3月期の実質成長率を押し上げた。輸出に関してはウクライナ情勢の緊迫化で懸念されたものの3月までのところその影響は限られ2桁増を維持した。但し、ウクライナへの輸出には急ブレーキが掛かった。一方、個人消費にはコロナ禍の悪影響が色濃く現れており、飲食、衣類、化粧品、自動車などの不振が目立った。また、家具も不動産規制強化の影響で大幅な前年割れとなった。
他方、産業面から見ると(右下図)、第1次産業が堅調を維持したのに加えて、金融業、情報通信・ソフトウェア・ITも堅調を保ち、落ち込んでいた建築業には底打ちの兆しが見られた。一方、コロナ禍の再発で打撃を受けた宿泊飲食業がマイナス成長に転じたのに加えて、卸小売、交通・運輸・倉庫・郵便業の成長率も低下した。さらに、不動産業の実質成長率も3四半期連続でマイナス成長となり、不動産規制の強化の影響が長引いている。
このように景気悪化の懸念が高まり成長率目標「5.5%前後」の達成が危ぶまれるようになってきた中、当面は財政・金融・ゼロコロナの3つの政策運営に注目したい。財政政策・金融政策に関しては例年7月に開催される中央政治局会議での議論の行方が注目される。他方、ゼロコロナ政策に関しては、ウィズコロナ政策への転換が財政金融に頼らずに成長率を高める道であり、その前提条件も整ってきているので、中国政府の舵取りに注目したい。