本記事は、天野眞也の著書『シン・営業力』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
「価値」をとことん感じさせているか
お客様から価格交渉をされてしまう3つの原因の1つ目。「お客様に価値を実感してもらえていない」について解説していきます。
3つの原因のうち、実はこれがメインであることが多いのですが、営業担当としては大いに反省をしないといけないところでもあります。なぜなら、お客様が「製品・サービスに価値を感じきれていない」、あるいは「価値はある程度感じているが提示された価格には見合わない」理由から投資判断に至らず、「価格交渉」が起きてしまう、ということだからです。
ではどうしていくかですが、その前にここでひとつ、想像してみてください。
例えば、高級海外ブランドのショップを訪れて、店内で目に留まった財布があったとします。販売員から接客を受けて、「この財布すごくいいなぁ」と思っていたところ、続けて「こちらの財布もよくお似合いですよ」と別の財布を紹介してくれて、それも気に入ります。何度も何度も「ここ(ブランド)の財布いいなぁ」と実感し、すっかり欲しくなってしまいます。そんな体験をして「これ買おう」と思った時に、「これ、もう少し安くなりませんか?」とあなたは言うでしょうか? 絶対に言いませんよね。
もちろん、法人営業のビジネスの場とは違いますから、「商品価格はそのブランドが決めるものである」という認識があることも当然要因としてあるでしょう。しかし、着目してほしいのはそこではなく「すっかりこの財布に価値を感じてしまっている」という点です。
「これはいい! 買いたい!」と心底「価値」を感じてもらうと、「価格」が高いという意識は薄れ、「これだけいいものなんだから、確かにこれぐらいはかかるよな。でも、買いたい!」という気持ちになります。
このように、「価値を感じさせる」には、本書で何度もお伝えしている「投資対効果」の証明はもちろん、「デモ機やサンプルを提供して実際に体感してもらう」など、営業担当者が提案のなかに盛り込める工夫はたくさんあります。
価値の提示が先で、価格の提示が後
続いて、お客様から価格交渉をされてしまう原因の2つ目。「営業自ら価格勝負に持ち込んでいる」についてお話しします。
皆さんのなかで、お客様から「値下げできませんか?」と言われることが好きな方はひとりもいないでしょう。それにも拘わらず、反射的に自分から値引きの話に誘導してしまってはいませんか?
「いやいや、自分はそんなことは絶対にしていない」と思う方も、実は無意識的にしている可能性があるかもしれません。
もし、毎回のようにお客様から価格交渉をされているという方がいたら、少し記憶をたどってみてください。お客様との最初の商談の際に、お客様から見積もりを要求されたわけでもないのに「では次回、お見積もりをお持ちしますので……」なんて言ってはいませんか?
確かに、見積もりはお客様としても気になる情報ではあります。それで既存の製品やサービスよりも安いのであれば、次の切り替えタイミングで検討に値すると思っていただけるでしょう。しかし、お客様が自社の製品・サービスの提案にまだ十分に価値を感じていない状況で、営業担当者自ら「見積もり」を出してしまっては、投資判断の軸が「価値」から「価格」にすり替わっていってしまいます。
そうするとお客様は「この価格でこの内容(価値)か。どうしようかな」という心理になります。その先にあるのは「価格競争」です。
また、営業担当者としても、より契約を確実なものにしたいと考えて、つい値下げの余地があることを匂わせたくなることがあるでしょう。その気持ちは分かりますが、それも今後はやめましょう。
よかれと思って見積もりを出すことは、「価値訴求」ではなく「価格訴求」です。
繰り返しになりますが、「価値」を感じてもらってから「価格(見積もり)」の順番を絶対に守りましょう。そしてお客様の意欲が最も高まったタイミングで価格を出してください。
その「タイミング」が分からない方は、お客様から「すごくいいですね、お見積もりいただけますか?」と聞かれてから見積もりを提示する、と決めて営業活動をしてみるのもいいでしょう。
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