本記事は、天野眞也の著書『シン・営業力』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

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(画像=PIXTA)

「商談のゴール」を「契約」に置く

お客様とのアポイントからヒアリングを経て具体的なご提案の時間、つまり「商談」時において私が意識していることを紹介します。私はいつも商談の冒頭でお客様にこのようにお伝えしています。

「これからする私の提案に価値を感じていただけたら、ぜひ御社で弊社サービスを採用してください」

言い方は様々あると思いますが、私は常に「価値を感じたら契約してください」と伝えています。このことを一番に伝える営業と伝えない営業では、結果に大きな差が出ます。例えば、私はどういう風に言っていたかというと、必ずこのような話をしていました。

「私の提案に価値を感じていただけたら、2年以内に弊社の製品・サービスにすべて替えてください!」

私は、結構すがすがしい感じでこのようなことを言っていました。すると、お客様は、「大きく出るね! 2年以内に全部替えるの? なかなかうちはハードル高いよ」などと言いながらも、私があまりにまっすぐ言うので、私の提案をしっかり聞こうという気持ちになって、商談に臨んでくださるのです。

もちろん、言い回しについては「担当者の性格」などを鑑みてチューニングしています。例えば、商談時の冒頭の会話のなかで「まだ自分への関心はあまり高くないな」という担当者の場合には、「私の提案がよいと感じていただけたらぜひご契約していただきたいので、頑張ります!」など、意気込みのようにお伝えしつつ「価値を感じたら契約」という意識づけをしています。

いずれにせよ、商談時の冒頭で伝えることが重要です。なぜなら、これにより「今回はどんな場か?」の認識合わせができるからです。

ちなみに、あなたは「今日は製品のご紹介にお伺いしました」などと言ってはいませんか? これは絶対にやめましょう。製品の紹介(説明)は営業の商談のプロセスとしては合っていますが、本質的ではありません。

営業担当が商談をするのは、最終的に契約をいただくためです。そして相手の法人が商談をするのも「契約するかどうかを決めるため」なのです。「これは何の場か?」という意識が抜け落ちて商談に出席する担当者や上席も多いため、お客様が「価値を感じた場合に契約するかどうか?」という視点で営業の提案を聞いていないことも多いのです。あなたは息巻いて「提案」しているつもりでも、冒頭であなた自身が「紹介させてください」と言っているのですから、当然その提案について、真剣味はありません。結果、「ご紹介ありがとうございます。検討します」といった商談で終わりやすいのです。

商談をしている以上、遅かれ早かれ「契約する・しない」を決断していただくことになります。

いいビジネスを一緒に作れるパートナーかどうか。それをたった一言で見極められるのが、「価値を感じたら契約してください」宣言なのです。この宣言をしっかり受け止めてくださるお客様が、本当のお客様です。逆にこの宣言を聞いて、及び腰になるお客様は、まだタイミングではないのかもしれません。

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(画像=シン・営業力 「商談のゴール」を「契約」に置く)

契約までのストーリーを描く

前項では、商談時に「商談のゴール」を「契約」に置くことが大事ということをお伝えしました。

ここから先は、「法人の利益」と「法人のなかの個人の利益」の双方を満たす提案をすることが重要なのですが、「契約」に近づける有効な提案ツールがありますのでご紹介します。

それは「すごろく」です。

「すごろく」は1枚の紙のシートになっており、書かれた順番通りに話をしていくと、ゲームのすごろくのように、最後はゴール(=契約、購入、採用)にたどり着けるというツールで、「すごいことが6個書いてあるから“すごろく”」というのがネーミングの由来です。

「すごいこと」とは何なのでしょうか? それは「競合企業にはなくて、自社だけが提供できる価値」、つまり「バリュープロポジション」です。

・お客様が望んでいること
・自社が提供できること
・競合企業には提供できないこと

これをもとに明確化したバリュープロポジションをシートに6つ記載し、視覚に訴えかけながらお客様に提案するツールです。

とくに、ニーズが顕在化しているお客様に対しては、簡潔に話ができるという点で「すごろく」の活用は有効でした。本当にこの「すごろく」だけで商談がまとまったことも何度もあります。

このようなニーズが顕在化しているお客様には、初回の商談でも提案の余地がありますので、自己紹介後に「すごろく」を見せつつお客様の興味を探り、見積もり提示に必要な要件をとりまとめていきます(この場合、コミュニケーションシートを使ったヒアリングは、ひと通り製品紹介をした後、「具体的なお見積もりと提案をするため」といった意味合いで行います)。

一方、ニーズが顕在化していない場合でもコミュニケーションシートやヒアリングを通じて、お客様の潜在的課題を顕在化させ、具体的な提案をする際に便利なツールです。

冒頭に「すごろく」をお見せしながら、お客様が6つのバリュープロポジション(価値)のどこに興味を持っているのか把握しながら、その後の提案の時間配分をコントロールしていきます。

「すごろく」は、いわば商談のサマリーであり、契約に近づくためのステップを導き出してくれるものです。

そして、もうひとつポイントがあります。

お客様に製品・サービスに価値を感じていただけたら、そこで契約の意思決定ができるものもあれば、商談の同席者一同は契約したいが「社内合議も必要」と言われる場合があるでしょう。その際にはこの商談時に「次にどのようなステップを経れば契約してもらえるのか」を確認していくことが重要です。

むしろ、商談の時間はここに最も多くの時間を割きましょう。

例えば、「100万円以内なら担当者の決裁で決定できる」「1,000万円以上だと部内稟議が必要になる」「1億円以上だと役員稟議になるので各所との調整が必要になる」などといった契約に至るまでの進め方や条件についてお聞きし、お客様と様々な確認をしながら契約(お客様にとっては製品の採用)までのストーリーを描くのです。

そうして、お客様と同じ方向を向き、お客様と二人三脚で製品の採用に向けた具体策を講じる空気感をつくれたら、初回商談は次のステップに進めたと言えます。

次回商談の日程を決め、「次回商談のゴール(営業にとっては契約/お客様にとっては採用)」から逆算したステップの確認をしていきましょう。

例えば、お客様社内で予算取りのために動いていただく、決裁者の情報を教えていただくなどです。このようにして、次回商談における契約成功率を上げていくのです。

シン・営業力 「すごろく」のサンプル
(画像=シン・営業力 「すごろく」のサンプル)
シン・営業力
天野眞也(あまの・しんや)
株式会社FAプロダクツ 代表取締役会長。1992年、キーエンスに新卒1期生として入社。工場の自動化に関わるセンサーやカメラの提案に従事し、入社1年目で同期の中で営業ランキング1位、入社2年目以降もランキング上位の実績をあげる。グループ責任者、営業所長を経て社長直轄の海外営業・重点顧客プロジェクトの初代リーダーに抜擢される。売上数百億円から2,000億円の企業へと成長するまでの期間、営業として第一線でけん引する。キーエンスで築き上げた自動車・食品・半導体などのあらゆる業界の生産現場を見てきた経験と、顧客と共に海外を含む新工場プロジェクトを成功に導いてきた実績を基に、2010年に起業。東証一部上場企業など、メーカー数十社の営業・販売支援/コンサルティングを担った。現在はFAプロダクツほか複数社の代表を兼任し、製造業のDXから生産ラインの開発・実装までを包括的に支援する

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