本記事は、天野眞也の著書『シン・営業力』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
法人営業は「情報」が命! 4つの情報で最強の営業に
「情報」は法人営業にとって貴重な武器であり財産です。
そして、営業としての勝ち筋を見つけるために、情報を戦略的に集めていくことが重要です。ここでは、集めたい情報を抜け漏れなく収集し、整理するための方法を詳しくお伝えしていきます。
法人営業における「重要な情報」を、私は4つに分類しています。
① 組織情報
② 担当情報
③ 案件情報
④ 工程情報
この4つの情報をリストを用いて埋めていきます(図13)。
① 組織情報
組織情報は、お客様の会社組織としての全体像と各組織の機能をまとめた情報です。HPに「組織図」を掲載している企業もありますが、部門単位までの場合も多いので、課・グループはいくつあるかまで把握します。組織の数だけ「機能(役割)」がありますので、それぞれの組織の機能は何かまで情報を集めていきましょう。
また、お客様のグループに新しい子会社ができた場合には、その子会社の設立の目的や事業などを頭に入れることも、組織情報の把握にあたります。とくに、企業規模が大きなお客様であればグループ会社のことまでしっかりと情報収集してください。
② 担当情報
担当情報は、「法人のなかの個人」の役割や決裁権、裁量、興味関心などをまとめた情報です。営業担当の窓口になってくれている担当者の役割を知るところから始めて、「その組織に何人の人が配属されているか」「その組織内のキーパーソン(決裁者など)は誰か」「その組織内の各人がどのような役割を担っているか」など、組織別に担当者情報を整理していきましょう。
担当情報では、各人が感じている課題や悩み、社内でのつながり、興味なども記録していくと効果的です。これにより、例えば、担当者とキーパーソンとで感じる課題が異なることが分かった場合に、それぞれにどのように対応していくことが望ましいかを検討できます。
また、組織情報と担当情報を整理するなかで、「(まだ会えていない)会うべき担当者」がいることも明確に分かってきます。
③ 案件情報
案件情報は、お客様社内でのプロジェクトの情報です。お客様が自社の製品・サービスを使うかどうかは置いておいて、ここでは投資計画を立てているプロジェクト(案件)の情報をまとめていきましょう。
営業しているとお客様からよく「予算がない」と言われることがありますが、予算がない場合はもれなく「案件」自体もないことが多いです。逆に「案件がある」という情報をつかめたら、それはその案件に「予算がある」ことを意味します。投資するお金があるかどうかを把握するためにも案件情報は重要です。
また、お客様の案件(今やっていること、これからやりたいこと)と、自分たちが提案する製品・サービスが合致して初めて「商談」まで進みます。案件情報をいち早く察知し、その案件に関わっているのは誰なのかも含めて把握することができれば、競合企業に先駆けて商談をすることもできるようになります。
④ 工程情報
工程情報は、お客様のプロジェクト(案件)がどの工程で何をやっているかをまとめた情報です。お客様のプロジェクトの工程・進捗を詳しく知り、自分たちの製品・サービスがどの工程でフィットする可能性が高いかを探りながら、お客様が必要と感じそうな最適なタイミングで提案をするために活用します。
「お客様の案件に対して自社の製品・サービスが合致して初めて商談に進む」と前述しましたが、お客様の工程によって提案の中身は変わることも意識しておくべきでしょう。お客様が推進するプロジェクトを支援できるような提案をして「今は必要ありません」と言われてしまった経験があるなら、その工程でのニーズと提案が合致していなかった可能性もあります。ここの詰めが甘いと、お客様から「分かっていない」と思われてしまいますので注意が必要です。
4つの情報とリストを用いた情報収集は、私が営業活動を通じて独自で確立したフレームワークです。どの情報がどんな意味と性質を持っているかを理解することで、お客様の「課題」や、「誰が」「いつ何を検討しているか」がより具体的かつタイムリーに分かるようになってきます。
さらに、これまで「いつ来るか分からない」と思っていたお客様の「買うタイミング」を事前にキャッチ、または予測することもできるようになり、営業活動にかける時間と労力をコントロールできるようになるのです。
なお、「工程情報」は、ステークホルダーが多く、期間の長いプロジェクトがある製造業企業に営業する方にとっては非常に有効的ですが、それらの企業をお客様として持たない営業の方は、「工程情報」ではなく「業務情報」としてまとめてみると営業活動に役立つでしょう。
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