本記事は、天野眞也の著書『シン・営業力』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています
法人の「買う」は「投資」である
営業として「法人」をより理解するために、「法人が製品やサービスを購入(契約)する理由」についても考えていきましょう。
先ほど、「法人の一番の存在理由は利益を出すことである」とお伝えしました。では法人が製品やサービスを購入(契約)する理由は何でしょうか?
それは「その製品やサービスを購入(契約)することが会社の利益につながるため」です。
なぜなら、法人の存在理由が「利益を出すこと」だからだということは前項で述べました。皆さんが勤める会社でも、様々な製品やサービスを利用していると思いますが、これらのすべては基本的に「利益を出すため」に購入(契約)しています。
つまり、言い換えるなら「投資」です。「利益を出すための投資」として、製品やサービスを購入(契約)しているのです。
ここで併せて、「投資」と「消費」の違いも確認しておきましょう。
あなたは「ウィンドウショッピングしていたら、セール中だったので、買うつもりのなかった服をつい買ってしまった」といった経験をしたことはありませんか? ちょっとテンションが上がってしまって気分で購入してしまうことがありますよね。私もつい大容量のお徳用食品を買ってしまって余らせてしまったことがあります。こうした「つい買ってしまった」という行動は、「生活者視点の個人」ならではです。これを「消費」と言います。
「消費」は満足感を得られたり楽しいひとときを過ごせたりすることがありますが、利益を生み出すことはありません。
そのため、法人は「消費」をすることはないのです。あくまで利益を出すための「投資」として、製品・サービスを購入(契約)します。何回もお伝えしたいほど重要なポイントです。
法人は利益を生み出すために「投資」をしているのです。
法人には「投資対効果」を証明すること
ここで、営業の皆さんはぜひご自身の営業について思い起こしてみてください。
あなたが製品やサービスを提案してお客様が購入(契約)した時、必ずお客様の利益に貢献できる提案をしていませんでしたか? 「いや、お客様の利益なんて全然考えていなかったけど売れた」という人もなかにはいるかもしれません。その場合はたまたま、お客様が新しい製品やサービスの購入(契約)を検討していたよいタイミングだったのでしょう。いずれにしても、お客様は何かしらの「利益」を期待して購入(契約)を決めたはずです。
もし、闇雲に営業している人がいたら、「投資対効果を証明すること」をぜひ意識してください。
投資対効果のある提案をするためには、お客様がお持ちの「課題(困りごと)」や「どうしていきたいか」を聞かないことには始まりません。その上で、あなたが提案する製品やサービスがどう役に立てるか、どのような利益があるかを提案すると、お客様もあなたの提案をより熱心に聞いてくださるはずです。
「投資対効果の証明」をきちんと頭に叩き込んでおけば、安易な値引き合戦から抜け出すこともできます。
法人営業をしていれば、今まで何度となくお客様から「もう少し安くなりませんか?」と言われてきたと思います。安ければ安いほうがいい、というのは人間なら当然の心理だからお客様も「つい言ってしまう」のです。
言うならば、営業自身がお客様に投資対効果を伝えきれていないから、「価格」に意識を向けさせてしまい、「安くならないか?」という論点を生じさせていると言えます。
しかし、繰り返しになりますが、安く買えることもいいでしょうが、それよりも優先されるべきなのは「そのサービスによって、どれだけ利益を生み出せるか?」です。
例えば、1万円の商材を買って2万円相当の効果があれば、利益は差し引き1万円です。一方で、3万円の商材を買うことで9万円相当の効果があるなら、前者と比較すると投資額は3倍になりますが利益は6万円。つまり利益は前者の6倍にも及びます。
どちらが法人にとって魅力的でしょうか?
投資に対して利益(リターン)が大きい後者を、法人は選ぶはずなのです。
ここで「お客様から提示された予算内で提案する」ことに縛られる必要はありません。予算内で期待できる投資対効果を示しながら、お客様の利益がさらに見込める別案を用意し、自信を持って提案してください。
その別案がお客様の想定を超える初期投資額の場合、最初の商談では即決されないかもしれません。しかし、高い投資対効果をきちんと説明することができれば、検討していただける可能性は十分あるでしょう。
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