2021年10月のマイナンバー保険証の本格運用から約2年が経過した。しかし、その間にマイナンバーカードにまつわるさまざまなトラブルが発生したことから、カードの利用をためらっている人もいるだろう。

その一方で、政府は2024年12月2日にマイナンバーカードと保険証を一本化させ、紙の健康保険証を廃止することを決定した。本稿では、これまでの経緯を振り返り、マイナンバーカードと保険証を一体化させた「マイナ保険証」のメリットとデメリット(注意点)を解説する。

目次

  1. マイナ保険証とは?
    1. 運用開始時にトラブルが相次いだ背景は?
  2. マイナ保険証のデメリット
    1. 1.利用できない医療機関もある
    2. 2.個人情報漏洩リスクは拭えない
  3. マイナ保険証のメリット
    1. 医療費が割安
    2. 就職・転職・引越しをしてもずっと使える
    3. 医療費が高額になっても自動的に窓口精算額を軽減できる
    4. 過去の診療情報データにもとづいた診察・処方を受けられる
  4. 従来の健康保険証は2024年12月2日に廃止、その後はどうなる?
  5. 国がマイナ保険証を進めるワケ
【謎政策】マイナンバー保険証を使うと医療費アップ 使う意味ある?
(画像=umaruchan4678/stock.adobe.com)

マイナ保険証とは?

マイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証機能を持たせたものである。医療機関で従来(紙)の健康保険証を提示する代わりに、受付に設置されたカードリーダーにマイナ保険証つまり、マイナンバーカードをかざし顔認証で受け付けする。

マイナンバーカードに健康保険証機能を持たせるには、以下のいずれかの方法で保険証利用の登録を行う必要がある。

(1)医療機関や薬局に置かれているカードリーダーで登録する
①カードリーダーにマイナンバーカードを置く
②顔認証か暗証番号のどちらかの方法で本人確認を行う(顔認証が便利)
③過去の診療やお薬情報などを医療機関・薬局に提供することを同意するかどうか選択する
④マイナンバーカードを健康保険証として利用する手続きを行う(「ボタンを押す」などの画面が表示される。カードリーダーの機種によって表示される画面は異なる)
⑤登録完了

(2)セブン銀行ATMで登録する
①マイナンバーカードと利用者証明用パスワードを用意する
②セブン銀行ATMの画面で「各種お取引き」を選択する
③「マイナンバーカードの健康保険証利用の申込み」を選択する
④利用規約に同意して「確認」ボタンを押す
⑤マイナンバーカードの裏面を上にしてカード読み取り口に挿入する
⑥利用者証明用パスワードを入力する
⑥登録完了。

(3)パソコンやスマホから「マイナポータル」にアクセスして登録する
※ここではスマホから登録する方法を紹介する
①マイナンバーカードと利用者証明用パスワード、「マイナポータルAP」アプリをインストールしたスマホを用意する(スマホはマイナンバーカード読み取り対応機種であること)
②マイナポータルAPを開き「健康保険証利用申込」を押す
③「ステップ1」の画面が開く。マイナポータルの利用者登録を行う場合はチェックを入れ、マイナポータル利用規約を確認して「同意して次へ進む」ボタンを押す
④「ステップ2」の画面が開くので「申し込む」ボタンを押す
⑤利用者証明用パスワードを入力する
⑥マイナンバーカードをスマホで読み取る
⑦読み取りが終われば登録完了

医療機関や薬局に行くたびに、カードリーダーにマイナ保険証をかざし、本人認証と過去の診療やお薬情報などを医療機関・薬局に提供するかどうかを選択すると保険証確認が完了する。

運用開始時にトラブルが相次いだ背景は?

患者がマイナ保険証を使うと、医療機関側は患者が加入している公的医療保険や自己負担割合の確認、かつ本人であることの確認がオンラインでできる。これをオンライン資格確認というが、これまでオンライン資格確認の際に別人の健康保険情報が登録されていたというトラブルが相次いで報道された。

その数は、オンライン資格確認の運用開始から2023年5月22日までの間で7,372件に及ぶ。そこで厚生労働省が翌5月23日付けで全保険者に対して点検を依頼したところ、1,109件の別人登録が確認された(2023年9月29日現在)。

本人の保険情報が登録されていても医療費の自己負担割合が誤登録されていたというトラブルもある。所得によって自己負担割合が1~3割となる高齢者に特に多いようだが、なかには6歳未満の幼児であるにもかかわらず、「高所得 現役並み」と表示されたケースもあるようだ。

自己負担割合の誤登録に関しては、全国保険医団体連合会が全国6万5,811の医療機関にアンケート調査を行い、現在までに978の医療機関で確認されている。ちなみにアンケートに回答した医療機関数は、約1割の7,070機関にすぎない。実際には、より多くのトラブルがあった可能性も考えられる。

マイナ保険証に限らず、マイナンバーカード自体の以下のようなトラブルも相次いでいる。

  • 同姓同名の別人へのマイナンバーカード交付
  • コンビニで別人や抹消済みの証明書を誤発行
  • マイナポータルで別人の年金記録を閲覧できる
    など

こうしたトラブルには、以下のような背景があった。

①オンライン資格確認時に別人の健康保険が登録されていたのは、被保険者が新たに健康保険組合に加入した際、手続の処理が正しく行われなかったために本来の被保険者以外の人物に情報が紐づけられてしまっていたことが原因だった。

②自己負担割合の誤登録も、役所の国民健康保険担当者が誤って入力したことが原因だった。

③コンビニでマイナンバーカードを使って証明書を発行した際の誤発行ミスは、民間企業が手がけたシステムに問題があった。

これらのトラブルに対し、政府が迅速に対応できなかった点は批判されるべきである。しかし、その後は健康保険組合などに対して登録済みデータの総点検と、被保険者の登録に関して情報の突き合わせを徹底するよう指示している。