この記事は2022年5月22日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「ナック【7988・プライム】ダスキンFCディーラー1,900社中売上トップセグメントを超えたクロスセル営業に注力」を一部編集し、転載したものです。
ナックは、ダスキンのフランチャイズ事業からスタートし、家庭用宅配水であるクリクラの販売、建築コンサルティングや美容・健康など、幅広い分野を手がけている。同社は、20年より進めている事業再編の只中にあり、主力ビジネスであるダスキンのレンタル事業、クリクラ事業、建築コンサルティング事業を中心とした暮らしや生活に関わる領域への回帰路線を模索すると共に、セグメントを超えたクロスセル営業に力を入れている。
▼吉村 寛社長
宅配水「クリクラ」、15万件超の顧客に配送
同社の2021年3月期の売上高は555億1,300万円、営業利益は27億8,200万円。
セグメントは、ダスキンの代理店のFC展開や害虫駆除関連の「レンタル事業」、宅配水や次亜塩素酸水溶液の製造販売を行う「クリクラ事業」のほか、「住宅事業」「建築コンサルティング事業」「美容・健康事業」の5つ。レンタル事業(26.3%)と、クリクラ事業(26.8%)の2つのセグメントで全売上高の半数強を占めている。
レンタル事業の主力であるダスキン事業では、関東を中心に54カ所の営業拠点をもつ。1984年に売上日本一を達成して以来、約1,900社のダスキンFCディーラーのうち、国内ナンバーワンの売上高を保持し続けている。
また、クリクラ事業では、一般家庭向け宅配水分野での競争が激しさを増す中、捨てないサステナブルなボトルを使って全国44カ所の工場で製造、自社ドライバーが配送する形で事業を展開している。
「現在の両事業の顧客数は、ダスキンの家庭用が24万件、業務用が6万件で、クリクラの直営・家庭用が10万件、業務用が5万件です」(吉村寛社長)
「暮らし」領域回帰を目指し、グループの収益構造を再編
同社は1971年創業。ダスキンのFC展開を皮切りに、1992年に建築コンサルティング事業、2002年に住宅事業・クリクラ事業に参入し、業容を拡大してきたが、2020年に大きな転換点を迎えた。それが、レオハウスの全株式のヤマダ電機への譲渡と、エースホームの子会社化に伴う、グループ全体での収益構造の再編だ。
同社の売上高のピークは18年3月期の898億1,800万円だが、うち住宅事業が約53%を占めており、同社にとって売り上げ拡大に寄与していた分野だった。それでも再編に踏み切った背景には、歯止めのかからない着工戸数減少など、住宅市場の縮小化があった。
吉村社長は、「業界で勝ち残るには、テレビCMも含め膨大な広告宣伝費を投入せざるをえない。その点に対し、従業員含めたステークホルダーからの賛同が得られるのか懸念があった」と話す。
「住宅事業は、一時期売上比率で半分以上を占めることもありましたが、建築コンサルティング事業の中にFCの本部を1つ引き入れ、祖業に近い周辺事業を固めて、不安定なものは手を引いたというのが現実です」(同氏)
これを契機として同社は、主力であるダスキンのレンタル事業、クリクラ事業、建築コンサルティング事業を中心とした暮らしや生活に関わる領域への回帰路線を模索すると同時に、各事業間でシナジーを生むようなクロスセルの展開を加速させている。
「相乗効果ということで言うと、我々の会社では自社配送をしており、顧客と月に一度対話できる点が大きな強みであると考えています。既に、サプリメントの会社を買って自社開発した商品を、クリクラのブランドで販売し、クロスセル・アップセルの商品に仕立てています」(同氏)
なお、建築コンサルティング事業は、5つのセグメント中で唯一、メインがBtoBのため、レンタル事業・クリクラ事業とのシナジーに繋げにくいが、既に7,000社の工務店が顧客基盤としてあり、収益性も高いため、今後も据え置く方針だ。
65歳以上の高齢者に向け、ケアサービスを拡大へ
2022年は、同社にとって、2025年度までの5カ年の中期経営計画の2年目にあたる。同中計では、2020年3月期時点での売上高530億円、営業利益24億円(※)から、5年をかけ、売上高750億円、営業利益50億円まで引き上げるという目標を掲げる。
セグメント別に見ると、レンタル事業では、ダスキン事業において、ケアサービス及びヘルスレント出店を継続。ダストコントロール商品の家庭用市場の拡大と、加盟店のM&Aを推進する。クリクラ事業では、生産性向上を目的としたシステムインフラであるクリクラプラットフォームの構築や、フランチャイズ制度改革による加盟店施策の強化などを行う。
これら施策により、最終年度の目標営業利益率を、クリクラ事業では10.5%、レンタル事業では11.8%、建築コンサルティング事業では12.3%まで高めていく計画だ。
今後の展開のカギを握るのは、中計のメイン戦略である、ダスキン事業におけるケアサービスの拡大だ。2018年に第三者割当増資により筆頭株主になったダスキンから53億円を調達し、既にサービス拠点の開拓を開始。新型コロナウィルスの影響で遅れが生じているものの、これまで76拠点を直営で出店した。
「今後はこれまでなかった65歳を過ぎた方たちに必要なサービスを様々な形でご提供すべく、ハウスクリーニング、家事代行サービス、庭木の管理、害虫の駆除や住まいの補修などのケアサービス事業と、レンタルなどの介護・福祉ビジネスを拡大していく方針です。また、アライアンス推進室を設け、クロスセルを展開する上で有効な提携企業をリサーチすると共に、ライフタイムバリューの高い顧客作りに注力していきます」(同氏)
▼ケアサービスに注力
2021年3月期 連結業績
売上高 | 555億1,300万円 | 前期比 37.1%減 |
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営業利益 | 27億8,200万円 | 同 31.3%増 |
経常利益 | 26億8,300万円 | 同 27.9%増 |
当期純利益 | 18億3,700万円 | 同 257.5%増 |
2022年3月期 業績予想
売上高 | 576億円 | 前期比 3.8%増 |
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営業利益 | 26億円 | 同 6.5%減 |
経常利益 | 26億円 | 同 3.1%減 |
当期純利益 | 16億円 | 同 12.9%減 |
※株主手帳6月号発売日時点