ビジネスパーソンはぜひ覚えておきたい「Web3.0(ウェブスリー)」の常識
(画像=bofotolux/stock.adobe.com)

近年、日々のニュースやビジネスの話題で「Web3.0(ウェブスリー)」という言葉をよく耳にする。ブロックチェーン技術を用いたウェブサービスで、現在のインターネットの世界を塗り替えるとも言われている。新しい概念であり正確に定義するのは難しいが、経営者やビジネスパーソンにとっては今後の事業と切り離せない、必須の知識と言えるだろう。

Web3.0とは?

Web3.0とは、インターネットの利用者がデータを共有・管理しながら運用する分散型のウェブサービスだ。

「Web1.0」と呼ばれた初期のインターネットから、双方向型サービスが主流となった「Web2.0」の時代が過ぎようとしている。そもそもWeb1.0やWeb2.0とは何だったのか。インターネットの世界の構造変化から理解していこう。

Web1.0、Web2.0とは

インターネットが一般に普及した1990年代半ばから2000年代半ばまでは、HTMLを利用したテキストサイトが主流だった。ユーザーはブラウザでコンテンツを閲覧し、この時点では情報の発信者と閲覧者とが双方向のコミュニケーションを取ることはほとんどできなかった。

この時点でWeb1.0という言葉は使われていないが、その後、Web2.0が提唱されるようになると、前述のようなインターネットの初期構造がWeb1.0と呼ばれるようになる。

Web2.0は、アメリカのオライリーメディア創始者であるティム・オライリー氏が提唱し、2000年代半ばに注目された。発信者と閲覧者の双方向のコミュニケーションが可能になり、TwitterやFacebook、YouTubeなどのSNSが普及したことが特徴だ。

Web2.0では、誰もが簡単に発信できるが、サービスを提供している特定企業にユーザーの行動履歴や購買履歴のデータが集中し、ユーザーの知らない形でビジネスに利用されるようになった。そして、ビッグ・テックと呼ばれるGoogleやMeta(※Facebookの運営会社)などには強大な力が集中した。

Web3.0の時代へ

Web2.0に対して、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用して脱中央集権化を図る、インターネット世界の新しい概念とされるのがWeb3.0である。情報を特定の利用者に集めずに管理する「権力分散型」の構造が特徴だ。

Web3.0を支えるブロックチェーン技術

そもそもブロックチェーン技術とはどのようなものなのか。

簡単に言えば、複数のユーザー同士を直接つなぎ、暗号技術を用いて取引情報などを分散的に処理・記録する仕組みだ。データの改ざんなどが行われると他のユーザーとの差異が発生し、すぐに不正が検出される。現在は、ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)で用いられている技術だ。

Web2.0の時代には、特定企業に情報が集中していることによる個人のプライバシーの流出問題やセキュリティリスクがあった。Web3.0ではブロックチェーン技術を活用し、分散管理によってこれらの課題を解決すると言われている。

Web3.0の具体例

Web3.0は、インターネット上に作られる仮想空間・メタバースとの相性が良い。具体例としては、「NFT」や「DeFi」などが挙げられる。

NFT(非代替性トークン)

NFT(Non-Fungible Token)は、代替できない暗号資産(トークン)を発行することで、デジタルデータが固有のものであることを証明できる。NFTを用いると「一点もの」であることが証明でき、NFTの形でクリエイターによるデジタルアートやTwitter創始者の最初のツイートが高値で取引されたニュースも話題になった。

これまでデジタルコンテンツは、複製や改ざんが容易にできてしまうことが課題だった。NFTが普及すれば、音楽や動画などのクリエイティブ領域で新たな市場を展開できるかもしれない。また、国内では楽天グループやメルカリなど複数企業がNFTマーケットを立ちあげている。

DeFi(分散型金融)

DeFi(Decentralized Finance)は、金融機関などを介さずに金融サービスを提供できる。運用主体がなく、プログラムが自動で判断しサービスを提供する。暗号資産ネットワークにアクセスできる人は誰でも利用でき、新たなDeFiサービスを開発することも可能だ。

DeFiの代表的なサービスとして、異なる暗号資産同士を交換できる「DEX」や暗号資産の賃借サービス「レンディング」がある。

今後の展望や課題は?

日本でも、国や民間のいずれもWeb3.0へ注目している。しかし現状では、規制や税制など法整備が整っていないという課題もある。

ちなみに、岸田文雄首相は2022年5月にイギリスのシティで講演した際、「官民双方で、ブロックチェーンやWeb3.0の推進のための環境整備を含め、新たなサービスが生まれやすい社会を実現する」との方針を述べた。

ブロックチェーン技術の活用で、新たなサービスの展開や既存事業への導入など、多様な展開が期待される。実際、専門家からは、現在のインターネットの世界は今後10年ほどかけてWeb3.0に置き換わっていくとの声もある。

これからもWeb3.0をめぐる社会とビジネスの変化を注意深く追っていきたい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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