本記事は、新井一氏の著書『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

長続きするビジネスの条件

長続き
(画像=ELUTAS/stock.adobe.com)

「売れる商品を作り、なるべく早く稼働させること」は、ビジネスのスタート時に最も大切なことの一つですが、ビジネスを始めたら次は〝継続すること〟が、最も大切なことになります。

厚生労働省「雇用保険事業年報」から算出される中小企業の廃業率は、この40年、2%後半~6%弱で推移し、近年は3%台で推移しています。個人事業所の廃業率は、中小企業白書2006年度版から計算すると、開業3年で62.4%に達します。こちらは、20年前のデータからの計算値ですが、近年のコロナ禍では、(給付金がなければ)実体はさらに厳しいかもしれません。

どんなビジネスも、永遠に続くことはありません。企業の平均寿命は、およそ20~30年といわれており、私たちの職業人生は40~50年ですから、それより短いということになります。

私自身もそうですし、私が相談に乗ってきた皆さんの実績を思い出してみると、スモールビジネスの商品(サービス)は、導入→成長→成熟→衰退のサイクルをおよそ3~5年かけて推移することが多く、成熟期に入るまでには次の商品(サービス)を準備するか、時代や競合に合わせて変化させていくことが必要になります。

そんな中でも寿命が長いビジネスには、次の5つの特徴があります。

(1)固定費が小さい

固定費とは、売り上げがあるないにかかわらず、毎月必ず出ていく費用のことをいいます。たとえば、人件費、事務所家賃、スマホ代金(通信費)などのことです。ビジネスをする上で、固定費をゼロにすることは難しいですが、これを変動費に変えることができれば、経営を楽にすることができます。

たとえば、ネットショップを運営する場合、毎月システム利用料を払うか(固定費)、売れたら売り上げの10%を払うか(変動費)によって、オーナーの負担感はずいぶん変わってきます。どちらが良いかはショップの売り上げによって違いますが、最初は変動費になっているほうが利用しやすいですね。

(2)オンライン主体

コロナ禍で定着したオンライン会議やテレワーク。事務所も必要なくなり、セミナーも会場を借りる必要がなくなりました。無駄な通勤時間もなくなり、大変な状況ではありましたが、実はメリットを享受していた人も多いと思います。この働き方やオンラインによるサービス提供は、ある程度は戻るにせよ、完全に元の姿に戻ることはないでしょう。

通常はオンライン主体のサービス提供、必要に応じて対面サービスを行える業態であれば、低コストで済む分、長く続けることができるでしょう。

(3)利益率が高い

社員を雇わず、一人でビジネスを始める場合には、それだけ多くの業務をこなさなくてはならないため、薄利多売のビジネスは難しくなります。また、セールスや情報発信(集客)活動にかける時間を削減するには広告宣伝が必要になりますが、その費用も薄利では捻出できません。

利益率の高いビジネスというと、「仕入れのないビジネス」が思いつきやすいですが、物を扱うビジネスであっても、無人化や自動化、廃品の修理再利用、自宅スペースの活用など工夫することによって、高利益ビジネスに転換させることができます。

(4)在庫を持たない

物を売る場合には、在庫を持つのが一般的です。迅速に送り届けることができるので、受注機会損失を回避することができます。また、入荷時に検品作業などもできるため、トラブルを事前に回避することも可能です。クレームを予防することは、信用損失はもちろん、時間や精神的ダメージを回避するためにも、とても重要です。

ですが、在庫は、現金が物に変わっている状態なので、なるべく早く現金化しなければいけません。売れ残れば、値下げをしたり、場合によっては廃棄しなければならないこともあります。また、保管スペースが必要になり、倉庫代金や管理コストもかかります。

これをオンデマンド(受注生産やお取り寄せ)販売に変えることができれば、コストもリスクも大幅に減らすことができるでしょう。

(5)定期収入がある

いわゆる〝サブスク〟といわれるビジネスができれば、毎月の売り上げが安定します。サブスクには、オンラインサロンのような〝会費〟ビジネス、新聞のような〝定期購入〟ビジネス、不動産のような〝レンタル〟ビジネス、フランチャイズのような〝権利〟ビジネスなど、たくさんのビジネスモデルがあります。

たくさん稼ぐことは大事なのですが、安定的に稼ぐことも大切です。特に精神的な面でも、心配してくれる家族に安心してもらうためには、この定期収入が不可欠です。

組織図でやることを整理しよう

起業すると、商品の準備をして売ること以外にも、たくさんの関連業務が必要になります。どのような業務が発生するのかを整理するために、お勤めの会社の組織図を参考に、自分のビジネスにおける組織図をざっくりと書いてみましょう。

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(画像=『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』より)

図を見ながら、自分のビジネスにおける、各部の業務を書き出します。たとえば、コンサルティング事業の営業部ならば、次のようにイメージできるでしょう。

営業部・広報課

・ブログ/Twitter/Instagram/LINE公式アカウント/Stand.fm投稿
・コラム執筆
・Web更新
・メルマガ発行
・セミナー参加者へのリマインド送信
・SNS/ブログ/YouTubeのネタ収集
・YouTube撮影
・Google広告データ確認
・勉強会スケジュール計画
・アンケートデータ集計/分析
・外注管理(打ち合わせ含む)

営業部・業務課

・問い合わせ対応
・資料作成
・セミナー開催
・コンサルティング提供

組織と業務を可視化し、細かくToDo Listに落とし込んでおくことで、仕事のミスが減るだけでなく〝意思決定疲れ〟からも解放されます。さらに、外注化できる業務を切り離していくことで、自分一人でも十分に仕事を回すことができるようになります。たとえば、経理課業務は税理士に任せてしまい、自分は経理部長としてチェックだけを行えばいいのです。

ルーティンはスマホで完結させる

ToDo Listに落とし込んだ業務は、日次、週次、月次、年次に分類することができます。その中の〝日次業務〟を、スマホでできる業務とできない業務に分類し、スマホでできる分は、移動時間や本業のスキマ時間に済ませるようにすると、仕事の効率が上がります。

私の場合は、次のツール、ガジェットを使い倒しています。費用はかかりますが、少しでも効率よく仕事を進めることを考えて、積極的に投資をしましょう。

・iPad mini(楽天モバイル利用)
・スマホ2台(iPhone/Android)
・ガラホ
・電子ペーパー
・AppleWatch
・ボイスレコーダー

早朝は自宅事務所でメール対応。移動時間にこれらのツールでルーティン作業を進め、事務所に着いてからは、パソコンや付箋を使ったクリエイティブ作業をします。事務所に着いてから「さて、やるか」とゼロから始めるよりも、すでに半分程度の仕事が終わっているので、気分が楽です。

起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?
新井一(あらい・はじめ)
1万人の起業をプロデュースした「起業のプロ」。1973年生まれ。会社員のまま始める起業準備サロン「起業18フォーラム」主宰のほか、インターネットからの集客術に特化した起業家向けマーケティング支援などを行う。社会との関わり方に問題を抱え、高校・大学と海外スクールに単身就学。帰国後、日本企業に就職するも、人嫌いを克服できず、さまざまな失敗を繰り返す。社会になじめず、会社になじめず、自分の居場所を探して、15年間、会社員をしながら事業を続け、独立後は「起業のプロ」として起業家を育てる。特徴は「人生を変えたい」と願う会社員はもちろん、自立を目指す主婦からニート、フリーター、落ちこぼれまで、起業とは程遠いと思われがちな人材を一発逆転させてきたこと。「一緒に考える起業支援キャリアカウンセラー」として高い評価を受けている。

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