本記事は、新井一氏の著書『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています
アイデアを「商品化」するための要素
起業準備を始めて数カ月もすると、商品の企画開発が具体化してきます。自分で作るもよし、人が作った何かを仕入れるもよしです。「売れたらいいな」「喜んでもらいたいな」と、明るい未来を思い描いて毎日楽しくなることでしょう。
ここまで少しずつ具体化させてきたアイデアを〝商品化〟するにあたり、次の項目をチェックしてみましょう。
・お金や時間、その他のリソースから考えて、商品として実現可能か? ・需要があるか?(リサーチは十分か?) ・4つのカタチの組み合わせから、どんなカタチになるか? ・差別化できているか? ・ざっくりし過ぎた内容になっていないか?
これらの答えが出たら、さらに明文化していきます。
商品化のための要素
(1)商品・サービスの内容
モノを売るなら取扱説明書やスペック表を作成しましょう。ライバルになるネットショップの商品ページを見て、モノのスペックを完全網羅し、さらにわかりやすい情報提供(画像・動画・データをつけ加えるなど)をします。
・概要説明(商品の機能・魅力)/素材/サイズ(日本サイズ)/カラー ・その他スペック例:A4対応/2つ折りタイプ/ポケットの有無等/付属品 ・どんな人向けなのか(具体的な悩み) ・価格(キャンペーン価格情報含む) ・支払い方法(たくさんあるほど良い) ・発送方法(具体的に)/送料 ・在庫状況(いつ頃商品が届くのか目安)
しかし、これだけの内容では価格競争に巻き込まれる可能性が高いです。本気で売るなら、先ほどの項目にもう少し手間をかけた情報を増やしましょう。
・●●の悩み(問題)から生まれた商品であるエピソード ・AなのにBである驚き(商品の意外性) ・類似品との違い(何が新しいのか) ・想定を超える使い方 ・あなたの想い(なぜこれを売るのか)/あなたはどんな人か ・FAQ(買い方などお客様からよく聞かれる質問)
これらの情報を追記することで、アピール力を増すことができます。
やってあげる系なら、「何をしてあげるのか」「なぜ私に頼むべきなのか」を、はっきりさせましょう。「検索上位表示できるWordPressホームページを作ります」「打ち合わせは2回のみで後は丸投げOKです!」のようなイメージです。たとえば、CMS(WordPressのようなWeb構築システム)を利用する場合なら、次のような情報が必要になります。あなたのビジネスに置き換えて整理してみましょう。
・CMSの種類(WordPress/Movable Typeなど) ・デザイン(オリジナルまたはテーマ利用) ・レスポンシブ(スマホ対応)の有無 ・SEO対応(検索エンジンを意識したサイト構成か) ・画像・素材の用意(制作者側か依頼者側か) ・文章作成(代筆の有無) ・対応範囲(問い合わせフォーム/地図挿入/会員登録機能など) ・無料修正回数/ラフ(見本)提案数/納期/価格
教えてあげる系なら、「何を教えられるのか」「なぜ私に習うべきなのか」「習った後にこうなれるという姿」を示しましょう。「言うことを聞いてくれない部下とのコミュニケーションが1週間で改善できる方法を教えます」と言うだけでなく「私自身も部下との壁に悩み続けてきた経験があり、ある一つのスキルを知ったことで、部下との関係が劇的に改善した経験を持っています」のようなエピソードがあると、お客様に商品の内容をもっと知りたいと思ってもらえるでしょう。さらに、以下の情報もまとめておきましょう。
・何が学べるのか ・どんな体験ができるのか ・何ができるようになるのか ・どのように教えるのか(少人数・ワーク中心・オンラインなど) ・何が得らえるのか(商品を購入するメリット・悩みの解消など) ・定員/必要な持ち物
場や機会を売る系なら、たとえばコミュニティなら、「何をするための場なのか」「特徴と魅力」「どんな人におすすめか」をまとめてみましょう。
・コミュニティを始めたきっかけ/目的/ゴール ・コミュニティ管理者のプロフィール ・参加特典 ・規約(入退会/キャンセルポリシー/禁止行為) ・決済方法
最低限、このような情報が必要になりますので、準備しましょう。
不動産やモノをシェアするビジネスの場合には、シェアをするものによって大きく違いますので、スペックをまとめた後に、次のサイトを参考としてチェックして、どのような情報が必要になるか調べてみましょう。
・不動産Airbnb:https://www.airbnb.jp/ ・駐車場akippa:https://www.akippa.com/ ・アパレルTHECLO:https://theclo-bysharesence.studio.site/ ・バッグLaxus:https://laxus.co/ ・時計KARITOKE:https://karitoke.jp/ ・自動車Anyca:https://anyca.net/
(2)商品名
次に商品名を決めましょう。大企業の製品は、素材や物質をそのまま名前にしたり、
いわゆる〝型番〟を割り当てることでシリーズを分類、整理します。一方、小さなビジネスをする場合には、より伝わりやすい興味を引く商品名にするほうが、広告費の節約にもつながりお得です。
名前の付け方のポイントはいくつもありますが、最も大事なことは、「消費者が自分のための商品(悩み解決/願望を満たす)と感じること」や、「覚えやすいこと」です。
商品名は、売りながら感触を得つつ、変えていっても問題ありません。ただし、印刷物やパッケージを最初に大量に作ってしまうと身動きが取れなくなりますので、特に物販の場合には慎重に決めてください。
(3)価格
最後は価格設定です。これは言うほど簡単な作業ではなく、最もご相談の多いテーマの一つになっています。
おすすめは、同業者の商品を買ってみることです。実際にサービスを受けてみると、「こんなもんで、この金額かぁ……」と思ったりします。多くの場合、自分が考えていたレベルのサービスでなくても、それなりのお金を取られるのです。「自分がこの金額をもらうなら、もっと良くできる」と思えるなら、自信を持って価格を決められるでしょう。
価格は〝最低価格〟を目指すのではありません。提供できる価値に見合う〝対価〟を適切に判断することを目指します。たとえば、アプリ開発を下請けするなら、「クライアントが自社でプログラマーを雇用する場合の人件費」から検討するか、あるいは、「そのアプリの稼働後にクライアントが得られる利益」から検討するなどのことです。
起業準備段階では、商品価値に自信が持てないことも多く、どうしても低い価格にしてしまいがちです。逆に、「その商品の質で、その金額は取れないでしょ」とつっこみたくなる場合もありますが、高めに設定した金額で売れてしまうこともあります。ですので、適正価値を見極めることは難しいといえます。
自信のなさからくる典型的な思考パターンには、次のようなものがあります。このように考えてしまうと、異常に低い価格を付けてしまうことがありますので、注意しましょう。
・商品価値に自信がない(初めての受注だし……) ・ブランド力がない(まだ会社員だし……) ・相場がわからない(調べてもよくわからないし……)
価格設定でこんなネガティブな気持ちになったら、いったん落ち着いて、物の価格が決まる原理原則を思い出してみてください。
商品の価値は、スペックや材質的なものだけではなく、次のようなことによっても変動しているのです。
・タイミング(夜中に水道管が破裂したら修理費用が高くつく) ・季節(旬じゃないものは高い) ・場所(山頂の自販機は高い) ・目的(贈答品、お土産品は高い) ・非日常(ワイキキは全てが高い) ・信用(あるほど高くできる)
もちろん、原理原則は〝需給バランス〟です。
価格設定に正解はありません。さまざまな条件が複雑に作用し合い、適正価格は変動します。高額情報商材のように、値段が高いだけで価値を感じてしまうこともあります。
いくらに設定したらいいのかわからなくなったら、とりあえず、自分がもらいたい金額を設定してしまいましょう。無料で配っているティッシュペーパーも、紙がないトイレで待っていれば高値で売れるかもしれません。売る場所、タイミング、価値、お客様との関係性を考えて、少しずつ調整していきましょう。
最後にプレゼンテーションスキル向上の研修講師として独立した森田さんにお伺いした、「価格設定のリアル」をご紹介します。現場の生の声です。参考にしてください。
「個人向けセミナーでは、本気度の低い方からのお申し込みやドタキャンを避ける必要があります。優良顧客に恵まれるためには、値下げは不要と思っています。
競合他社の相場がわかると、自信のなさから、つい安売りしてしまいそうになりますが、それはしてはいけないことです。安易に価格を下げるより、サービスの質を向上するためにはどうすればよいかを常に考えています。でも最初のうちは、何よりも研修実績が欲しかったので、講師報酬として、チロルチョコだけでも受けたい気持ちでしたね(笑)。
立ち上げ当初は実績がないので、安価でも信頼を積み重ねるほかありませんが、ビジネスは継続が命ですので、しっかりと利益を確保してその利益をさらなるサービス向上につなげることが大切だと思っています。
私は、両者がWIN-WINになる価格帯があると考えます。加えて、高価であるほど自他共に本気度が増し、結果的に成果につながる可能性も上がると思っています。その上で、私はいただいた金額の倍以上の価値を提供する気概で活動しています」
[参考]森田さんのホームページ プレゼンテーション・プロデューサー掴(つかみ) https://tsukami.com/
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