本記事は、新井一氏の著書『起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています

起業するのに、なぜ怖いと思うのか?

怖い
(画像=polkadot/stock.adobe.com)

起業支援の仕事を始めてから、「起業するには何から始めたらいいのかわからない」と言っている人は、「起業は怖い」と感じていることが多いことに気づきました。

なぜ「起業」が怖いと感じるのでしょうか? 大きく分けて3つの理由があるようです。

理由1 起業したら会社を作らなければと思っている

「起業=会社を設立する」というイメージを持っている人は少なくありません。確かに起業のゴールの一つに、「会社を作って成功させて売る」というものもあります。

ですが、会社を作るにはお金がかかりますし、維持するにも、大きくするにも、お金がかかります。場合によっては、従業員を雇う必要も出てきます。

「そんな大きな責任は負えない」

こう考えて、何もできなくなってしまう人もいます。一方、「起業=独立」というイメージを持っている人もいます。

「独立したら収入は大きく減る。だから起業できない」

と考える人もいます。

理由2 起業してお金を稼ぐのは、とても大変だと思っている

これまでの会社員の経験から、「お金をもらう仕事」を生み出すのは、とても大変なことと考えている人もいます。

「一体、どんなサービスをすれば、お金がもらえるのか?」

そんなことを考え続けて、なかなか起業できない人もいます。

理由3 起業したら、大失敗すると思っている

さらに、「起業=大失敗する人が多い」というイメージを持っている人もいます。会社員を辞めて、飲食店を開業したものの、思った以上にお客さんが来なくて、貧乏状態からなかなか抜け出せない……。そんなドキュメンタリー番組を見たことがあるかもしれません。

「起業して、想定外のことが起きたらどうしよう!」

そう考えて、起業そのものを諦めてしまう人もいます。

しかし、そうした悩みを持っている方々に言いたいのは、「起業はもっと自由に富んでいて、楽しいものですよ」ということです。

起業の「あそび」にもっと注目しよう

なぜそう思うのか? それは、起業には「あそび」があるからです。私たちは「あそび」というと「楽しい」という意味を思い浮かべますが、起業においての「あそび」にはもう一つ、「いろいろと主体的に自由にできること」という意味があります。

では、起業の「あそび」に注目し、前述の3つの理由を事例にして、順を追って説明していきましょう。

事業計画書は必要なし

第一のケース(起業したら会社を作らなければと思っている)では、「ゴール地点はどこでも自由に設定できる」ということです。面倒ならば、無理に会社(法人化)にする必要もありません。個人(事業)のまま数千万円を売り上げている人もいます。

もちろん、従業員を雇いたくなければ、雇わないで済む方法もあります。

そして、会社も作らず、小さく個人で始めるならば、事業計画書も必要ありません。というのも、事業計画書というのは、基本的にお金(開業や設備投資の資金)を借りるために金融機関に提出する書類だからです。

ちなみに、毎年17兆円の売り上げをあげている自動車会社のフォード・モーター・カンパニーも、当初、ヘンリー・フォードの副業から始まりました。安定した収入を確保しつつ、起業を考えるのは、百年以上前からの王道なのです。ヘンリー・フォードも最初の会社を創業したときには、独立できる見込み、つまり、会社員のうちに独立資金をきちんと確保してから始めたのです。

給料を得るよりも、起業してお金を得るほうが「超」簡単な理由

第二のケース(起業してお金を稼ぐのは、とても大変だと思っている)では、「会社員としての仕事と同じレベルで、起業後の仕事を考える必要はない」ということです。毎日のお仕事と同じように起業を考えると、「会社と同じようにきちんとやらなければ」と思うようになって、自分の可能性を狭めてしまうことになります。

会社に勤めていれば、基本的には毎日出社、あるいはテレワークで、自分の担当する業務をこなし、上司にさまざまな報告をしなければなりません。分業制で役割分担があり、既存のお客様との取引があります。嫌い、苦手な仕事もあるでしょうし、人間関係が煩わしいこともあるでしょう。

起業したら話は全く違います。自分は得意なこと、やりたいことに集中し、嫌なお客様や取引先とは、仕事をする必要もありません。上司もいませんし、もちろん出社もしません。自分の仕事の実績ががダイレクトに成果に反映され、お金を得ることが楽しくて仕方がなくなります。そんな毎日ですから、給料を稼ぐよりも「超」簡単と心が感じてしまうのです。

起業して何をするかは、本当に自由です。誰にも強制されることはありません。起業にかける時間もお金も何を売るかも全て、基本的に自分で決められます。

「でも……」「とはいえ……」という方は、会社の仕事の延長上で起業をイメージしているのかもしれません。だから、「大変そう」と考えてしまうのです。

ちなみに、商品のオリジナリティにこだわる必要すらありません。売れているものを売ればいいのですし、他人のマネでも問題ないのです。むしろ、「これが売れるはず」と勝手に商品の需要を想像して作った商品よりも、すでに売れることが実証されている商品ならば、ビジネスとして成功する確率は高いといえます。

結局、実体験がないと起業は成功しない

第三のケース(起業したら、大失敗すると思っている)では、「お金をとことんかけずに、小さく始める方法を考える」ということです。

起業したのはいいけれども、うまくいかない。収入がなくて貧乏状態を抜け出せないなど、想定外のことが起きることを恐れている人がいます。このようなことが起きる最も大きな原因は、「自分がよく理解していないビジネスに、多くのお金や時間、手間をかけてしまっていること」にあります。

なお、ここでいう「よく理解していない」とは、「実体験がない」ということです。

たとえば、飲食店を始めると想定してみましょう。

「物件の契約(賃貸・購入)→仕入先開拓→調理→集客→料理提供→集金→光熱費や材料費、人件費の支払い→そして毎月続けて利益を出す……」

たとえばこのようなことが、飲食店の経営には必要になります。経験がないと、わからないことばかりです。それだけではありません。メニューも考えないといけませんし、調理器具を揃えるのにもお金がかかります。出ていくお金が多く、お店を維持するための資金繰りも大変です。しかし、仮に飲食店で1年程度のアルバイト経験があれば、わかることがたくさんあるでしょう。

自分がよく理解していないビジネスでは、想定外のことばかり起こります。そして、あれこれお金と時間と手間をかけているうちに、私たちの脳は、「なんとかして元を取らなければ」と考え始めます。事業がうまくいかなくてもなかなか撤退できないのは、そうした脳の問題も大きく関わっているのです。

「成功のノウハウを先に教えてもらえれば……」

と思う人もいるはずです。その解決策として、一見簡単そうに見える飲食店フランチャイズに、退職金や貯金を投じて加盟する人もいます。確かにフランチャイズなら、本部からのサポートがあり、研修でノウハウを教えてもらえます。ですがそれでも、飲食業の経験がない人にとっては、毎日が想定外の連続になります。私も過去に何人もフランチャイズで起業した人たちから話を聞きましたが、皆さん一様に、「経験してみなければわからないことばかり」とおっしゃいます。

ですので、起業で大きな失敗を避けるためには、なるべく実体験(経験)のあることで、最初はお金や時間、手間をかけずにとことん小さく始めることが、大切になってくるのです。

小さく始めれば、万が一失敗しても、立ち直れないことはありません。お金や時間、手間をかけ過ぎなければ、いつでも止めることもできます。そして、再度チャレンジすることも可能なのです。

いかがでしょうか? 起業の「あそび」の部分や、リスクとの向き合い方をちょっと変えるだけで、心配ごとは、すっきりとなくなると思います。

起業がうまくいった人は一年目に何をしたか?
新井一(あらい・はじめ)
1万人の起業をプロデュースした「起業のプロ」。1973年生まれ。会社員のまま始める起業準備サロン「起業18フォーラム」主宰のほか、インターネットからの集客術に特化した起業家向けマーケティング支援などを行う。社会との関わり方に問題を抱え、高校・大学と海外スクールに単身就学。帰国後、日本企業に就職するも、人嫌いを克服できず、さまざまな失敗を繰り返す。社会になじめず、会社になじめず、自分の居場所を探して、15年間、会社員をしながら事業を続け、独立後は「起業のプロ」として起業家を育てる。特徴は「人生を変えたい」と願う会社員はもちろん、自立を目指す主婦からニート、フリーター、落ちこぼれまで、起業とは程遠いと思われがちな人材を一発逆転させてきたこと。「一緒に考える起業支援キャリアカウンセラー」として高い評価を受けている。

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