「金融政策とは98%の対話と、たった2%の行動である」

FRB(米連邦準備制度理事会)で第14代議長を務めたベン・バーナンキ氏は上記のように述べている。2014年2月、FRB議長を退任したバーナンキ氏はブルッキングス研究所に特別研究員として入所。2015年3月30日には同研究所が開設したブログにて上記の考えを明らかにした。FRBの関係者は「公の声明を通じて将来の政策に対するマーケットの期待を形づくることができる」「それはFRBが持つ最も強力なツールの1つだ」とバーナンキ氏は指摘している。ただし、その一方で「間違ったメッセージを送信するコストが高くなる」可能性についても言及している。要するに、金融政策の98%はマーケットとの「対話力」で決まるということだ。

米国経済,見通し
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実際、マーケットはFRB関係者の発言に一喜一憂することが珍しくない。ときには発言の裏側に隠された真意を読み取ろうとしたり、経済指標を受けて「FRBはこう動くのではないか?」との観測が広がることもある。経済指標で良好な数字が示されているにもかかわらず、「いや、だからFRBはこう動くに違いない」との憶測を呼んで株価が下落する場面もしばしば見られる。最近では2022年5月の米雇用統計の堅調な数字を受けて米国株の主要3指数(S&P 500、ダウ平均、ナスダック総合指数)が揃って売られる場面もあった。

今回はFRBの対応を巡るシナリオについて考察したい。