M&Aの前に営業権の価値を高める5つの方法

売り手側の立場からすると、営業権はM&Aの取引価額に直結する要素であるため、少しでも価値を高めておくことが望ましい。そこで次からは、M&Aの実施前に営業権を高める方法やコツを解説していく。

技術やノウハウなどを強化する

営業権の評価を高めるには、まず無形資産の価値を高めることから始めたい。企業努力によって無形資産の価値が高めれば、事業運営にも良い効果が表れるため、必然的に営業権も高く評価されるようになる。

最初に見直したいものとしては、自社の技術やノウハウなどが挙げられる。自社がこれまで蓄積したノウハウや、従業員の知識・スキルなどを見直し、強化すべきものを見極めていく。

その後に業務フローを調整したり従業員を育成したりすれば、正しい方向性で技術やノウハウを強化できるだろう。この方法は会社の成長にもつながるので、優先的に取り組むことを検討しておきたい。

事業のブランド力を強化する

自社事業のブランド強化も、優先的に取り組みたい対策と言える。ブランディングによって会社や事業の魅力が高まれば、興味を示す買い手側が増えるため、相場よりも高い価格で売却しやすくなる。

ブランド力を強化する方法としては、SWOT分析などのフレームワークを用いる方法が効果的だ。

営業権とは? 計算方法や価値を高めるポイントを徹底解説

ブランディングにも正しい方向性があるため、フレームワークによって自社の内部環境や外部環境を分析し、競合も意識した上でプランを練る必要がある。

取引先や従業員と良い関係を築く

従業員や取引先との関係も、営業権の評価には大きく影響する。

例えば、上層部と従業員または従業員同士の距離が離れていると、技術やノウハウの共有はスムーズに進まない。M&Aをきっかけに離職する従業員も増えてしまうため、このような企業では円滑なコミュニケーションを図れる環境作りが必要になる。

また、M&Aによって会社が買収されても、基本的には取引先との関係が変わることはない。事業内容が変化しない限り、これまでの取引先が重要な顧客となるため、M&Aの前から良い関係を築いておくことが重要になる。

従業員や取引先との関係を見直す際には、会社内部だけではなく外部での活動も意識したい。地域や社会に貢献している企業には、自然と多くの就職希望者が集まり、興味を示す地域企業(取引先候補)も増えていく。

仮に売却相手が大企業であっても、このような人脈や関係性はしっかりと評価されるため、自社を取り巻く環境はしっかりと見直しておこう。

複数の企業と交渉する

前述の通り、企業価値や営業権にはさまざまな評価方法があるため、すべての買い手が同じ評価を下すわけではない。企業ごとにM&Aのニーズも異なるので、営業権の評価は相手によって変わってくる。

そのため、少しでも高い価格で売却したい場合は、できるだけ多くの企業と交渉することが重要だ。複数の候補を作ることで競争原理が働けば、それだけで営業権が高く評価されるケースもある。

もちろんM&Aではスピードにこだわることも大切だが、相手を1社に絞ると買い叩かれるリスクが高まるので注意しておこう。

早い段階で専門家に相談する

営業権を高める方法としては、M&Aアドバイザーや仲介会社などへの相談も効果的だ。計画の策定段階からサポートしてくれるところもあるので、相談先によっては取引価額のアップにつながる対策などをアドバイスしてもらえる。

そもそも、M&Aを成功させるにはさまざまな知識・経験が必要であり、特有の分析力や交渉力なども求められる。また、買い手側は少しでも安く買収しようとするため、知識不足の状態では買い叩かれる可能性が高いだろう。

専門家に相談をすると、ほかにも相手探しの効率が上がったり、実務を進めやすくなったりなどのメリットが生じる。ただし、M&Aの準備には時間がかかるので、少しでも早めに相談することを意識したい。