この記事は、2022年9月7日に三菱UFJ国際投信で公開されたグローバル・リート・マンスリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。
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先進国リートは再び下落、米利上げを巡る楽観ムードが後退
米利上げ継続がリートの逆風に
2022年8月のS&P先進国リート指数は5.4%下落しました。市場では米インフレ鈍化で楽観ムードが一時漂うも、米ジャクソンホール会議のパウエル米FRB議長講演で米利上げ継続が意識されました。再び米金利が上昇しリートの逆風となりました。地域別は欧米や香港を中心に下落、用途別もディフェンシブ性のある倉庫を除き軟調でした。
各国金融引き締めで上値の重い展開を予想
先進国リートは上値の重い展開を予想します。米国の利上げ継続に加え、欧州でもロシア産ガス供給減に伴うエネルギー高騰でインフレ抑制を迫られ、各国金融引き締めが続くと見ているためです。金利上昇圧力や景気減速懸念はリートの重石となるとみます。
他方、米国リートの2022年4~6月期決算は稼働率改善やキャッシュフローの伸びが確認され堅調も、今後は利上げの影響を受けつつも底堅い米景気が続くか注目です。
日本のリート市場の振り返りと見通し
市場リスクが重石も、リートは底堅い動き
2022年8月のS&P日本リート指数は+1.2%と上昇しました。序盤は米ペロシ下院議長の台湾訪問で米中対立を懸念した売りが強まるも、中旬にかけては米2022年7月消費者物価の伸び鈍化で米大幅利上げ懸念後退を好感した株式市場同様に堅調に推移しました。下旬は米ジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長によるタカ派的な発言を受けて日米長期金利が上昇し、リートの重石となりました。
経済活動の正常化期待や金融緩和が支援
当面は底堅い展開を予想します。政府が新型コロナ対策の方針転換を図る中、国内経済活動の正常化が見込まれるためです。日銀の金融緩和継続に伴い、リート配当と金利の利回り差も投資妙味があると考えます。
他方、三鬼商事が公表する2022年7月の都心5区オフィス空室率は改善も平均賃料は24カ月連続で低下しました。一部オフィスリート法人の2022年6月期決算では稼働率の回復後ずれが示されるなど、オフィス市況は不透明さが残ります。
田村 史弥