インフレヘッジとしてのプライベート不動産投資の有効性―― ブラックストーン 藤田薫氏に聞く
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オルタナティブ投資は機関投資家や一部の超富裕層しか投資できないと言われていた。しかし、足元では投資の小口化が進み、多くの個人投資家の手に届くようになってきている。ZUU onlineでは、この新潮流を報告すべく、特集「個人投資家とオルタナティブ投資」を立ち上げ、オルタナティブ投資についてさまざまな情報をお届けしていく。

第1回「個人投資家に門戸が広がる“オルタナ投資” ―― ブラックストーン 藤田薫氏に聞く」では、ブラックストーンのプライベート・ウェルス・ソリューションズ部門 日本拠点責任者 藤田薫氏に、個人投資家がオルタナティブ投資をポートフォリオに組み込むメリットなどを聞いた。第2回も引き続き藤田氏に登場してもらい、オルタナティブ投資が個人投資家に浸透している理由、円安の影響、経済見通しなどを聞く。

藤田薫
藤田 薫(ふじた かおる)
ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社 マネージングディレクター兼プライベート・ウェルス・ソリューションズ部門日本拠点責任者。2020年4月ブラックストーンに入社。ブラックストーン入社以前はフィデリティ投信にてプロダクト・ストラテジストが属する部署で部長を務める。同社で10年間の投信営業を経験した後、ロンドン拠点に駐在。帰国後は日本最大規模の公募投資信託(担当当時)「フィデリティ・USリート・ファンドUSリートファンド」のプロダクト・ストラテジストとして、日本における運用コミュニケーション全般を担当、米国ボストンの運用担当者と連携しながら、日本の投資家に向けて情報提供を行う。

個人にオルタナ投資が浸透する理由は、伝統的資産の成績悪化とウェルステック

―― オルタナティブ投資の個人投資家への浸透をどのようにみていますか。

ここ10年で機関投資家にオルタナティブ投資が広く浸透しました。そして個人投資家の資産運用においても、間違いなく新しい潮流になっています。当社の投資残高は2022年6月時点で128兆円ほどありますが、そのうちおよそ31兆円は個人投資家からお預かりした資金です。2018年から考えるとその金額は4倍です。「機関投資家への浸透速度」と同様のスピードで、個人投資家にもオルタナティブ投資が広がっていることになります。

その背景を考えますと、1つには古典的なポートフォリオの成績悪化が挙げられます。古典的なポートフォリオとは「株式60%・債券40%」といった資産配分でして、よく「ロクジュウ・ヨンジュウ」と呼ばれます。そして、この古典的なポートフォリオは、2022年上半期で20%以上下落しており、1960年以降で最悪のパフォーマンスとなっています。

長期的なインフレや混乱する金融市場の状況を受け、伝統的資産への投資だけで十分な資産形成をすることは難しくなっています。こういったことは海外の資産運用アドバイザーの間でも危機感として広がっています。そこで、オルタナティブ投資をポートフォリオに組み入れて、リスクの低減とリターンの向上を狙うことが増えているようです。

オルタナティブ投資が個人投資家に広がった2つ目の理由として挙げられるのが「ウェルステック」の台頭です。これまでは個人向けオルタナティブ投資と言っても、基本的には大手プライベートバンクのリレーションシップ・マネジャーやウェルスマネジメント部隊が超富裕層を相手にオルタナティブ投資を扱っていたわけですが、今日では「ウェルステック」が色々なオペレーションの課題を克服できるようなデジタルプラットフォームを開発しています。その結果、2021年後半から2022年前半にかけて、世界各国でオルタナティブ資産の取引や投資が簡単にできるようになってきています。

日本に関しても、つい最近までは私募投信などを通じて限られた個人のみがアクセスできる状態でしたが、大手金融機関と提携した運用会社が商品組成を工夫することで、以前よりもだいぶハードルを下げた形で商品を提供することが可能になってきました。実際に金融機関の営業現場の声を聞いても、「オルタナティブ投資のように差別化された商品が新規資金導入や外債の償還などで滞留した資金の活性化につながる」というお声をいただいています。

インフレ懸念でプライベートクレジットや不動産に注目が集まる

―― 足元で進んでいる円安は、個人投資家のオルタナティブ投資にどのような影響を与えているでしょうか。