この記事は9月22日に青潮出版株式会社の株主手帳で公開された「星光PMC【4963・プライム】製紙用薬品、樹脂、化成品の総合化学メーカー 2024年12月期売上高390億円、海外比率4割超へ」を一部編集し、転載したものです。


星光PMCは、1968年、製紙用薬品の製造販売を目的に、当時の大日本インキ化学工業(現DIC)と米国ハーキュレス社の合弁会社として設立された。その後M&Aにより事業領域を拡大し、現在は製紙用薬品、樹脂、化成品の3事業を展開している。中期経営計画では、2024年12月期の売上高390億円、営業利益37億5,000万円、営業利益率9.6%を目指し、海外展開や新事業、国内事業基盤強化を柱とする戦略に取り組んでいる。

▼菅 正道社長

星光PMC【4963・プライム】製紙用薬品、樹脂、化成品の総合化学メーカー 2024年12月期売上高390億円、海外比率4割超へ
(画像=株主手帳)

国内シェア4割のトップ企業 豊富なラインアップが強み

星光PMCの2021年12月期の連結売上高は310億3,200万円、営業利益28億6,700万円。主力セグメントの製紙用薬品事業は同社の祖業であり、売上比率57%を占める。同社は、機能性薬品を中心とした製紙用薬品の分野において国内シェア4割を占め、国内売上トップ企業として強固な事業基盤を構築している。

通販などで需要が高い段ボールは、リサイクル原料の古紙を用いて製造(再生)されている。破れにくく折れにくい丈夫な段ボールとするためには様々な工夫が施されているが、その中の有用な1つの手段が乾燥紙力剤の使用である。

また、ティッシュペーパーや紙幣には、紙が水に濡れた時に破れにくくする湿潤紙力剤が使われている。同社はこれら乾燥紙力剤や湿潤紙力剤を主力とし、その他にも豊富な製品ラインアップを持ち、段ボールから家庭紙まで幅広い紙種に対応する商品を提供している。

「当社は顧客のニーズにスピード感を持って応えられる研究開発体制を有しています。また営業についても、製紙技術の知見も深い社員が現場に出向き、機械の実情に即して、技術担当の顧客と密接なコミュニケーションを取ることで解決策を提案します。前期(2021年12月期)の売上、各利益の実績はグループ連結で過去最高であり、好調を維持しているのは、事業の多様化と併せ、製紙用薬品事業におけるこういったビジネスモデルが顧客に受け入れられていることも一因だと考えています」(菅正道社長)

第2の柱である樹脂事業は、売上比率26%を占める。印刷物のインキの原料となる樹脂を提供。新たな製品の立上げも進めており、脱プラ/紙化に貢献する製品や環境配慮型の水性インキ用樹脂などを拡販している。2019年には台湾の粘着剤メーカー、新綜(シンソウ)工業をM&Aして事業を拡大。製品ポートフォリオ多様化と中国・台湾での事業基盤を獲得した。

第3の柱である化成品事業は、売上比率17%。同事業は、2014年にグループ入りしたKJケミカルズが手掛けている。KJケミカルズは、工業用途で用いられるニッチな特殊機能性モノマーを主力製品とし、UVコート剤、粘・接着剤、塗料など幅広い分野で使用されている。世界シェア5割強を占める製品もあり、コロナ禍でも底堅い需要を獲得している。海外売上比率も6割を超えている。

CNF配合樹脂を開発 家電や建材などでの採用目指す

中期経営計画では、「海外への積極展開」「新事業の足場固め」「国内事業基盤の強化」の3つを柱とした戦略を展開している。

海外展開については、海外売上比率を現在の33%から40%超に伸ばす。その布石としてM&Aした台湾・新綜工業の売上約30億円が業績に貢献している。また、今後の成長市場である東南アジアに進出。製紙用薬品のベトナム工場が2022年9月から稼働予定。

新規事業として取り組んでいる1つが、環境配慮型の新素材として注目を集めるCNF(セルロースナノファイバー)だ。CNFは、天然資源である木材から得られる環境に配慮した軽量・高強度の機能性材料のこと。同社はCNF配合樹脂「STARCELⓇ」を開発。現在、アシックスの高機能ランニングシューズに採用されている。

今後、一層のコストダウンに取り組み、現中計期間中に家電、建材、日用品などでの採用を、また将来的には自動車などへの採用を目指す。

脱プラスチック・紙化に向けた製品にも取り組んでいる。紙包装に耐水性、耐油性などを付与する樹脂コート剤を開発し、「SEIKOATⓇシリーズ」として展開している。

同シリーズは、リサイクルが難しいポリエチレンラミネート紙の代替材料の一つとして開発された。ハンバーガーのラップ紙などとして生産ライン試験が進んでおり、食品包装材用やカップ用途などで2022年度中の実績化を目指している。

国内事業基盤強化については、国内シェアの更なる拡大を目指すとともに、各事業の製品ポートフォリオ改革を行っていく。

「当社はこれまでの実質無借金経営から、投下資本を意識した戦略的な財務経営へ転換しました。戦略投資枠として2022~2030年の9年間で300億円を設定し、このうち150億円を国内外のM&Aなどに活用したい。今後はより大型の案件も俎上に載せて検討し、事業領域を拡大していきたいです」(同氏)

ESGの視点で経営推進
持続可能な社会に貢献

現中計ではESGの視点で経営を推進している。同社が選定した環境に貢献する自社製品の売上高指数である「New Green Index」を、2024年度には2021年度比1.3倍に増やし、持続可能な社会への貢献を目指す。

温室効果ガス削減については、2030年に排出量50%削減(2013年比)、2050年にカーボンニュートラルを掲げている。

「当社は総合化学メーカーとして、ESGが高まる前から環境保全に貢献してきた自負はある。今後は脱プラ製品や海外展開強化などを図り、環境への貢献を通じて一層の成長を目指します」(同氏)

▼同社主力製品の乾燥紙力剤(右)と段ボール

豊和工業【6203・プライム】工作機械関連、火器、特装車両、建材が主事業 「まもる」をテーマに、ものづくり徹する老舗
(画像=株主手帳)

▼SEIKOATⓇシリーズの使用例。紙のトレーに樹脂コート剤が塗布されているため、電子レンジで加熱後も油がトレーに滲まない

豊和工業【6203・プライム】工作機械関連、火器、特装車両、建材が主事業 「まもる」をテーマに、ものづくり徹する老舗
(画像=株主手帳)

▼CNF配合樹脂 STARCELⓇ

星光PMC【4963・プライム】製紙用薬品、樹脂、化成品の総合化学メーカー 2024年12月期売上高390億円、海外比率4割超へ
(画像=株主手帳)

2021年12月期 連結業績

売上高310億3,200万円前期比 19.1%増
営業利益28億6,700万円同 9.8%増
経常利益31億3,900万円同 17.7%増
当期純利益20億8,200万円同 23.6%増

2022年12月期 連結業績予想

売上高328億4,000万円前期比 5.8%増
営業利益20億4,000万円同 28.9%減
経常利益26億9,000万円同 14.3%減
当期純利益19億7,000万円同 5.4%減

*株主手帳10月号発売日時点

菅 正道社長
Profile◉菅 正道(かん・せいどう)社長
1960年3月3日生まれ、東京都出身。1983年東京大学法学部卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。2010年星光PMC入社。2014年取締役経営企画本部副本部長、2015年取締役経営企画本部長、2017年取締役海外事業部長に就任。2019年常務取締役経営企画本部長兼海外事業部長に就任。2022年代表取締役社長執行役員兼海外事業部長に就任(現任)。