この記事は2022年9月30日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「10~12月期の原油価格は1バレル=65~85ドルで推移」を一部編集し、転載したものです。


10~12月期の原油価格は1バレル=65~85ドルで推移
(画像=Maximusdn/stock.adobe.com)

2022年9月26日時点のWTI原油先物価格は1バレル=76.71ドルと、約9カ月ぶりの安値を付け、価格はロシアのウクライナ侵攻前の水準に回復した(図表)。

2022年9月20、21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、前回会合に比べて2022年11月以降の利上げ幅の上振れが示唆された。積極的な金融引き締めが米景気の減速懸念につながり、エネルギー需要が抑えられるとの見方が浮上している。加えて、最終消費財の価格高騰と需要減の影響などが原油価格の下押し要因となっている。

一方で、原油価格の下振れは一時的とみる。対ロシア制裁は世界的なエネルギー不足に拍車を掛けており、脱ロシアの潮流から中東産原油に対する依存度も高まっている。

石油輸出国機構(OPEC)およびOPEC非加盟の主要産油国で構成するOPECプラスの2022年9月の会合では、10月からの原油減産を決定した。国際通貨基金(IMF)による推計では、サウジアラビアの2022年の財政収支均衡となる原油価格は1バレル=79ドル台。今後もOPECプラスでは、この価格水準を下支えするとみられる。

原油価格高騰への対応も順調だ。米国では高インフレにおけるガソリン高を抑制するため、2022年3月から石油戦略備蓄(SPR)を放出する際の数量目標を累計で1億8,000万バレルとしてきた。SPR放出は2022年10月に同1億6,500万バレルに達する見込みであり、2022年11月に追加で1,000万バレルを放出するとの報道もあることから、年内にはほぼ目標を達成する見込みだ。

なお、米政府は原油価格の上昇に対応しているだけでなく、急落に備える構えもあるようだ。実際に、原油価格の1バレル=80ドル割れでSPRの買い付けを検討しているとみられる。

例年、米原油在庫は秋から冬場にかけて積み増される傾向にある。夏のドライブシーズンが終了し、10~12月期になると、ガソリン需要減退から原油在庫は増加に向かい、いったん価格調整となる。今年の冬は、備蓄補充などによる需要増から、例年より米国内の価格の下押し圧力が低そうだ。

気になるのはイラン核合意復帰による増産の動きだが、こちらも価格下落への影響は限定的だ。同国の生産余力は推定日量130万バレル(2022年8月時点)。その全量回復には設備の調整等に時間を要するとみられ、2022年の輸出増加は日量数十万バレルにとどまるだろう。

以上から、WTI原油先物価格の2022年10~12月期の予想レンジを1バレル=65~85ドルとみる。

10~12月期の原油価格は1バレル=65~85ドルで推移
(画像=きんざいOnline)

みずほ証券 マーケットストラテジスト/中島 三養子
週刊金融財政事情 2022年10月4日号