この記事は2022年10月17日(月)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田・松本賢 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『日本が英国を参考にすればデフレに逆戻り』を一部編集し、転載したものです。

インフレ,デフレ
(画像=Parradee/stock.adobe.com)

要旨

  • 市中のマネーを拡大したり、家計に所得をしっかり回したりするためには、企業と政府の合わせた支出する力が必要だ。日本は、企業と政府の支出する力であるネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)が消滅(0%)してしまい、デフレ不況と家計の疲弊の原因になってきた。望ましくない円高の原因でもあった。現在は、新型コロナウィルス問題に対処する財政支出の拡大で、ネットの資金需要は望ましい−5%(GDP比)となり、リフレの力が、コロナ禍にある日本経済を支える力となっている。

  • 財政支出の拡大により、米国のネットの資金需要は−16.5%、英国は−13.3%まで拡大していた。この巨大な企業と政府の合わせた支出する力が、供給制約と合わせて、強いインフレ圧力を産んだ。インフレ圧力を緩和するには、ネットの資金需要を望ましい水準に縮小していく必要がある。英国のトラス政権の減税策は、ネットの資金需要の再拡大につながるため、インフレと通貨安の懸念を悪化させてしまった。

  • 日本のネットの資金需要はわずか-5%程度である。米国の長期平均−7.0%、英国の−6.2%と比較すると大きくはない。市中のマネーを拡大し、家計に所得をしっかり回し、デフレを完全脱却するために必要な水準である。今後、コロナ対策の財政支出は減っていくため、新しい資本主義の成長投資やコスト高に対する家計・企業支援などの財政支出の拡大で補い、ネットの資金需要を-5%程度に維持しなければならない。状況が全く違う英国の財政政策の失敗を意識し、日本の財政支出が過小となれば、ネットの資金需要はまた消滅してしまう。市中のマネーが拡大しなくなり、家計に所得が回らなくなり、日本はデフレ不況に逆戻りしてしまうだろう。

▽日本のネットの資金需要

日本のネットの資金需要
(画像=出所:内閣府、日銀、岡三証券、作成:岡三証券 注:2022Q2まで

▽米国のネットの資金需要

米国のネットの資金需要
(画像=出所:FRB、BEA、Refinitiv 、岡三証券、作成:岡三証券)注:2022Q2まで

▽英国のネットの資金需要

英国のネットの資金需要
(画像=出所:Refinitiv、岡三証券、作成:岡三証券)注:2022Q2まで
会田 卓司
岡三証券 チーフエコノミスト
田 未来
岡三証券 エコノミスト
松本 賢
岡三証券 エコノミスト

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