この記事は、2022年10月24日に三菱UFJ国際投信で公開された投資環境ウィークリーを一部編集し、転載したものです。全体をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。加えて、デイリーレポートについては、mattoco lifeをご覧ください。

インフレ
(画像=polkadot/stock.adobe.com)

目次

  1. 消費者物価コアは前年比+3%に加速
  2. 円安を背景に大幅な貿易赤字が継続
  3. 日本株は上値の重い展開

消費者物価コアは前年比+3%に加速

2022年9月の全国・消費者物価コア(生鮮食品を除く総合)は前年比+3.0%と13カ月連続で上昇し、2022年8月の+2.8%から加速しました(図1)。消費増税時を除けば1991年8月以来の高い伸びとなります。

コアインフレ率が上昇基調
(画像=三菱UFJ国際投信)

政府による価格抑制策の効果でエネルギー価格の押し上げ寄与は横ばいとなるも、食料や家庭用耐久財の価格上昇が押し上げました。また、生鮮食品・エネルギーを除く総合は前年比+1.8%と2022年8月の+1.6%から拡大しインフレ加速が示されました。

今後も輸入コスト上昇を背景に食料価格の値上げが見込まれ、家電製品価格の上昇など原材料コスト高が広範囲に波及するとみられます。消費者物価コアの上昇は当面続くと考えられ、2022年10月27~28日の日銀金融政策決定会合では展望レポートにおいて物価見通しの上方修正が予想されます。

円安を背景に大幅な貿易赤字が継続

2022年9月の貿易統計において、輸出金額は前年比+28.9%(8月+22.0%)と増加、季節調整値でみると前月比+3.2%(同▲0.7%)と2カ月ぶりに増加しました。

輸出数量は前年比+3.7%と7カ月ぶりに増加、輸出価格は同+24.3%と19カ月連続で上昇しています。また、輸入金額は前年比+45.9%(同+49.9%)と伸びは鈍化、季節調整値でみると前月比▲0.6%(同+1.5%)と9カ月ぶりに減少しました。

輸入数量は前年比▲1.8%と5カ月ぶりの減少、輸入価格は同+48.6%と19カ月連続で上昇しました。貿易収支は原数値で▲2兆940億円(同▲2兆8,200億円)、季節調整値で▲2兆98億円(同▲2兆3,378億円)と前月から改善するも大幅な赤字が続いています(図2)。

鉱物性燃料価格の高騰が貿易収支悪化の主因
(画像=三菱UFJ国際投信)

原油、液化天然ガスなど鉱物性燃料の輸入増が背景にあり、商品市況はピークアウトするも円安に歯止めがかからず輸入価格が上昇する中、貿易赤字の拡大は暫く続きそうです。

日本株は上値の重い展開

先週は米長期金利が上昇するなか、堅調な米企業決算を受けて米国株は反発したものの、日本株は上値の重い展開でした。為替市場ではドル円相場が一時150円台に上昇し、円安が一段と進行したため国内経済への影響が懸念されています。

ただし、物価対策を含む大型経済対策の検討や、円安による輸出・グローバル企業の業績改善への期待が日本株の底堅さにつながっています。企業収益と為替相場の推移をみても、円安下で企業は収益を伸ばす可能性が示されます(図3)。

企業収益は円安効果が支えとなる可能性も
(画像=三菱UFJ国際投信)

また、世界的に高インフレが継続し各国中銀の引き締め強化が警戒される中で、日本株の相対的な割安感、コロナ規制緩和に伴う日本経済再開の動きが注目されるとみています。

三菱UFJ国際投信株式会社
戦略運用部 経済調査室 シニアエコノミスト
向吉 善秀