この記事は2022年11月10日に「第一生命経済研究所」で公開された「2022年・冬のボーナス予測」を一部編集し、転載したものです。
民間企業の2022年冬のボーナス支給額を前年比+2.6%と予想する。2022年夏のボーナス(前年比+2.4%)に続き、比較的高い伸びが実現するだろう。
背景にあるのは企業業績の改善だ。一度引き上げると削減が難しい月例給与に比べて、ボーナスは業績に応じて比較的柔軟に変動させることが可能であるため、業績さえ良ければ経営側も引き上げへのハードルは高くない。コロナ禍で大幅に落ち込んだ2020年度の大幅な落ち込みからの反動によって2021年度の企業収益は大幅増となっていたが、2022年度に入ってからも原材料価格の高騰という逆風が吹く中でも底堅い推移が続いている。こうした業績の改善が、ボーナス増の後押しとなるだろう。また、中小企業を中心に人手不足感が強まっていることも、人材確保の観点からボーナスの引き上げに繋がる可能性がある。
2020年、2021年には、厳しい経済状況を受けてボーナスの支給を見送る企業も大かったが、今冬のボーナスでは、業績の持ち直しを受けてボーナスの支給を再開する企業が増加することが予想される。前述のとおり、冬のボーナス支給額を前年比+2.6%(ボーナス支給がある労働者平均)と予想するが、ボーナスの支給がない労働者も含めた平均では前年比+3.8%と、伸びがさらに高まる形になるだろう。
もっとも、今回のボーナス増加については、コロナ禍によるこれまでの落ち込み(2020年冬:▲2.6%、2021年冬:+0.1%)からの戻りという面が大きく、水準で見るとコロナ前の2019年冬並みの金額にとどまる見込みである。また、ボーナスの支給がない労働者も含めた平均でみると、2020年冬に▲6.1%も落ち込んだ分を取り戻すことはできない。冬のボーナスがコロナ前の水準を明確に上回るのは2023年に持ち越しとなるだろう。
物価上昇も懸念材料だ。足元で物価上昇は加速しており、2022年10~12月期の消費者物価指数の上昇率は前年比で+3%台半ば~後半に達する見込みである。今冬のボーナスが比較的高い伸びになるとみられることは好材料ではあるが、それでも賃金の増加ペースが物価上昇に追い付かない状況には変わりがない。今冬のボーナス増加が個人消費の活性化に繋がる可能性は低いだろう。