本記事は、内海正人氏の著書『上司のやってはいけない! 令和版』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。

感情
(画像=oatawa/stock.adobe.com)

やってはいけない!
感情を爆発させてしまう

取引先からのクレームで、上司が急に態度を豹変し、担当者を呼びつけてその場で怒鳴り散らす……。こんな光景がどんな会社でも一度や二度はあるでしょう。上司自身も内心「まずい」と感じても、先に言葉が出てきてしまうことはあります。

上司も人間ですからやむをえないことがあるでしょう。

ですが、周囲の部下からすれば、上司は上司です。感情的になる上司を見て、「この人についていこう!」と思う部下はなかなかいません。

そうならないために、なぜ感情に流されてしまうのかを考えましょう。

上司が部下に対して感情を爆発させてしまうのは、部下の日頃の行動や態度が目に付いているからです。「やっぱり、あいつはやってしまったのか……」。その落胆や憤りが、感情の爆発を招きます。

では、なぜ部下のことが目に付くのでしょうか? 理由としては、2つのことが考えられます。

1つは「本人の態度などに問題がある場合」です。このケースでは、上司が注意を促してもふて腐れてたり、反省とはほど遠い態度をとったりというのが「やはり、あいつが……」につながって行くのです。このような態度を部下がとるのは、「こんなこと大したことないな」と思っているからです。

対処方法としては、一度厳しく指導することです。きっちりと仕事のイロハを叩き込みましょう。それでもダメなら……評価や処遇でことの重大さを知らしめることも有効です。

2つめは「仕事のやり方に問題のある場合」です。たとえば、いつまでたっても基本が身につかない。自分の勝手な思い込みで突っ走ってしまうなど。こうしたケースでは、仕事を任せたくても厳しいですよね。

原因としては、仕事を体系的に理解していない、または、仕事全体を見ていないことがあります。このタイプの部下に対しては、仕事の全体像をおさらいして業務手順を徹底的に教えましょう。ノートを取らせ、できるまでフォローします。ここまでやらないとダメなのです。

このように、原因と対応がわかれば何かのときにお客様につられて感情的になることは避けられます。

やってはいけない!
ガイドラインがない

「最近、若手の部下が金髪にしました。注意したいのですが、他の上司も白髪染めで黒く染めています。この対応をどうしたらいいのでしょうか?」

こんな質問をクライアントから受けたことがありました。

髪型、髪の色に対する価値観は時代によって違います。現代は髪型、髪の色は自由という風潮のようです。「髪の色が茶色=不快」という価値観ばかりではありません。しかし、仕事の内容により、不快になる場合もあるでしょう。

たとえば、金融機関、教育産業などでは「就業規則」、「雇用契約書」などで身なりや服装を制限しています。

こういう公的な規則を作れば、

  • 業務命令として改善を命令できる
  • 従わなければ懲戒処分の対象にできる

といったことが可能になります。

ただし、これだけでは十分ではありません。身なり、服装は〝具体的に〟表現する必要があります。極端な例を挙げれば、「髪の色の明度」で基準を作っている会社もあります。

しかし、多くの会社ではあいまいなまま、ガイドラインもありません。だから、多くの会社では、上司の個人判断で指導しているのです。

個人の判断には個人の価値観が大きく影響します。その結果、判断にばらつきが出て、A部長なら「OK」、B部長なら「ダメ」ということが起こるのです。

そうなると社員に不満がたまり、これがこじれてトラブルに発展する可能性があるのです。だから、最低でもガイドラインを作る必要があります。

たとえば、就業規則などに「身なりなどのガイドライン」を書くのです。「そこまでは……」という場合は、「社員ガイドブック」の作成でもOKです。

「社員ガイドブック」とは、平たく言えば会社生活のマニュアルです。社内での疑問点などを正面からとらえ、範囲を文字化します。

いつの時代も、社長と若手社員の価値観がずれることはよくありますが、これを解消するために、最低限のガイドラインは必要です。

やってはいけない!
「まさか」の事態を想定していない

会社で、突然社員が出社しなくなったらどうしますか?

また、どういう場合ならトラブルのあった社員を退職にできるのでしょうか?

このような話はドラマの中だけではありません。実際、私自身が年に2〜3回は相談されるのです。まずは、退職について見てみましょう。

退職が成立するケースは、

(1)会社と社員が退職につき合意した場合
(2)社員が一方的に辞職を通知し、14日が経過した場合
(3)事前に退職の理由が決めてあり、その理由が発生した場合

の3種類に分かれます。この(1)と(2)の場合は「社員本人の意思表示」が必要です。そして、これは口頭、退職届のいずれでもかまいません。一般的には、退職届が主流です。

しかし、連絡もなく、突然いなくなるケースもあるのです。当然、これは「本人の意思表示」があったとはいえません。だから、これだけでは「法的に退職」とはできないのです。

事前に「(3)事前に退職の理由が決めてあり、その理由が発生した場合」を決めておけばよかったのです。

具体的には、就業規則の退職理由に「従業員が失踪して、1ヶ月以上連絡がとれなかったとき」と記載します。事前に退職理由を決めておけば、本人の意思表示がなくても、一定期間経過後に退職が成立するのです。

ちなみに、この「一定期間」は「14日以上」であれば法的にOKです。もちろん、就業規則が周知されていることも必要です。

あなたは「こんなことウチには関係ない!」と思われるかもしれません。

しかし、私にご相談される方全員が「まさか!」と思ったのも事実です。

どんな事件もないに越したことはありませんが、それでも起こってしまうのが事件です。

想定されるありとあらゆることを事前に就業規則に記載することが、本当に大切です。

必ず可能性があることには事前に対策を打ち、トラブルを防いでください。

=上司のやってはいけない! 令和版
内海正人
1964年神奈川県生まれ。人事コンサルタント・社会保険労務士。日本中央社会保険労務士事務所 代表。総合商社の金融子会社にて法人営業・融資業務・債権回収業務を行う。その後、人事コンサルティング会社を経て、日本中央社会保険労務士事務所設立。2017年9月社会保険労務士法人 日本中央社会保険労務士事務所 代表社員に就任し、現在に至る。人材マネジメントや人事コンサルティング及びセミナーを業務の中心として展開。現実的な解決策の提示を行うエキスパートとして多くのクライアントを持つ。著書に『会社で活躍する人が辞めないしくみ』『会社のやってはいけない!』(ともにクロスメディア・パブリッシング)などがある。

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