本記事は、内海正人氏の著書『上司のやってはいけない! 令和版』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。
やってはいけない!
部下に仕事を任せない
社内で人気の上司の多くは、人間的な魅力にあふれています。もちろん仕事もバリバリこなします。人気のある上司は公私共に素敵な人が多いです。しかし、人気取りのために顔色ばかりうかがっていては仕事になりません。
実際、最近のマネージャーを見ていると部下に仕事を任せず抱え込む人が多いです。私の会社も例外ではありません。「部下に仕事をお願いしないと、自分が苦しむだけだよ」と話をしても、お願いすることが苦手で自分で手を動かしています。
仕事に精通しても、部下を動かせなければ次のステージには上がることはできないのです。
「何が原因なのか?」ということで本人に聞いてみましたが合点がいきません。
ただ、私の感じたところとしては、自分でやったほうが質とスピードに優れていると思っていたり、まだ部下にはお願いしづらかったり、という理由であるようです。私には部下に対する不満をこぼすこともあったのですが、部下には「簡単な仕事」「ルーティンの業務」をお願いしているだけでした。
これでは部下の成長が望めないし、マネージャーの教える力も伸びません。このことをマネージャーに告げると「自分でやったほうが早い」「部下はゆとり世代なので、きついことを言うとやめてしまうかも……」と言ってきたのです。
確かに、短期間のことを考えたらマネージャー自身が動いてこなしたほうが、業務の進捗も早いでしょう。
しかし、長期的に考えたら部下の成長が望めないため、いつまでたっても高度な業務をこなすことができないのです。これでは部下が成長しません。せっかく部下が成長できる場面を、自分の都合で奪ってしまっているのです。
チーム全体のことを本当に考えたら、部下を育てないというのはありえません。
上司は短期的な業務の進捗のみで物事を考えるのではなく、中長期的な視点で業務と向き合うことが重要です。部下の育成をすることがマネージャー職としての重要な仕事ということを理解しないといけないのです。
中間管理職は上席と部下の板ばさみに合い、とてもストレスがたまるといわれています。実際ストレスも多いです。
しかし、それもマネージャーに求められた業務なのです。
やってはいけない!
仕事の任せ方が下手
事業が成功し拡大を望むならば、会社は人を増やしてさらに成長を目指すことでしょう。そして、従業員に仕事を任せて、経営者は経営のコアな部分に注力すると、更なる飛躍が望めるのです。
この考え方は多くの人が主張し、マネジメントの教科書的な書籍でも数多く記載されています。しかし、多くの会社がこのセオリーどおりにいっていないのも事実です。
実際に私が相談をいただくケースでも、「仕事を部下に任せたいのだが、スキルが追いついていない……」「仕事がこなせるようになって、全面的に任せようと考えていたら、退職届が出てきた……」。こんな声が多いのも事実です。
大企業なら多くの社員の中で選抜して管理職を育てるので、代わりの人材にシフトすることは難しいことではありません。しかし、中小企業ではそんなことは簡単にはできません。ギリギリの人員で仕事を回しているし、人材教育への投資も限られています。そんな厳しい状況で仕事を動かしているのです。
仕事が任せられないのであれば、上司自らが動くしかありません……。しかし、これではまるで仕事を大きくするチャンスを自ら潰しているようです。
ここで考えなければいけないことは、仕事を部下に任せる、その任せ方です。
部下も「十人十色」で個性もあれば、仕事への考え方も人それぞれです。
仕事を単に丸投げして「あとはよろしく!」と言っても、「私は社長に信頼されている」「ここは自分を高める大きなチャンス」と考えて動く人と、「プレッシャーに負けてしまう」「私はこんな仕事はできない」と考えてしまう人もいます。部下一人ひとりを見極めて仕事を任せましょう。
仕事の中で伸びる人には「本人のスキルより少し高い仕事を与える」ことで成長を促しましょう。また、プレッシャーに弱いタイプには「確実にこなせる部分」をお願いして、こなせたら次のステージに進んでもらいましょう。
それから、自分と比較しないようにしましょう。あなたが「コレぐらいは簡単にできる」と思っても、なかなかできない人もいます。多くの上司はそこで、「こんなこともできないのか!」とひとごとのようにぼやきます。しかし、それは上司の思い違いです。環境や状況が変われば、できること、できないことは異なります。この部分をよく理解して、部下の成長を促すことが重要なのです。