本記事は、内海正人氏の著書『上司のやってはいけない! 令和版』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。
やってはいけない!
Z世代の特徴を理解しない
Z世代は、1990年代後半から2000年代に生まれた世代のことを言います。物心がついたときからスマホを代表とするデジタルツール・SNSに慣れ親しんでいるZ世代は、従来の世代と異なる特徴があります。社内での出世欲が強くないことや、従来の常識、慣習を重視しないことに対して戸惑う方もいるかもしれません。しかし、Z世代の価値観をうまく活用することで、市場のニーズや取引先の要望にうまく応えられる可能性が高まります。
Z世代の特徴としては、Webコミュニティ世代ともいわれ、インタラクティブ(双方向のコミュニケーション)、ソーシャル、自己学習を好むといわれています。そして、エコや個人情報保護に対する意識が高いともいわれています。さらに、Z世代の特徴を端的に表す言葉はスマホとSNSです。
Z世代は、ICT機器を駆使して、情報をリサーチする力に長けています。そして、SNSを利用して、共感や承認を重視する傾向があります。また、Z世代は、リーマンショックを若い歳に経験しているので、経済の見通しや雇用の安定性に対しては懐疑的です。地に足のついた現実主義的な一面をもっています。
Z世代の強みは、「デジタルネイティブである」「社会問題や国際社会との距離感が近い」「常識にとらわれない」ことです。これらの背景には、SNSやインターネットを通じて、海外の情報が手軽に入手できるようになったことです。そして、情報の入手経路の多様化が、これまでの常識やメディアの発信する情報を鵜呑みにしないという特徴につながっています。
では、Z世代の弱みとは何でしょう? 例えば次のようなものがあります。デジタルデバイスに頼る傾向が強い(インターネットなどが使用できないアナログ環境で、物事に対応できないケースがある)。インターネットの日常的な利用には長けているものの、リテラシーが高いとは限らない(炎上問題など)、といったものです。
ビジネスにおいて、しばしば「ICTツールやSNSの情報発信をZ世代に任せるとよい」といった趣旨のノウハウも存在しますが、個人でのSNSの使用と企業の情報発信とは別物です。インターネットでの情報発信は、一瞬で世界中に広まるため、慎重に対応しましょう。
やってはいけない!
Z世代のコミュニケーションに腹を立てる
「今の若い人は……」「育った環境が違う」「理屈ばっかり言うな」「仕事は盗んで覚えろ」など、古臭いと感じる方も多いと思います。しかし、今の管理職、マネージャーのポジションの方は、一度ぐらいはこんな感情をお持ちではないでしょうか? そして、若い人、特にZ世代といわれる人たちとのコミュニケーションに悩んでいる中堅以上の人たちが多いでしょう。
たとえば「LINEで休みの連絡を入れる」このことについて、皆さんはどのようにお考えでしょうか? 「LINEで休みの連絡を入れるとはけしからん」と考えるべきでしょうか? それとも、「LINEで連絡することで、受け手側のタイミングで処理してもらえる」と考えるほうが正しいのでしょうか? この件に関して、正解・不正解はないでしょう。そして、この思考の違いについて考える必要があります。単に「LINEで休みの連絡を入れる」ことについて、上司と話したくないので、「テキストで送っている」と思い込み、結果、「けしからん」と上司の感情がなってしまうことについて、その前に「なぜこのような行動になってしまうのか?」と考えてみましょう。本人は「電話だと上司の行動を中断してしまうので、申し訳ない」という気持ちからかもしれません。
ここまで上司が想像を働かせることは難しいかもしれません。しかし、今後は少し立ち止まって考えてください。決して「時代が変わった」「世代間のギャップでついていけない」などと考えてしまい、ついつい「外部環境」が原因として、その後の対応をさぼってしまうのです。これではいつまでたっても「部下に対する愚痴」を言っているだけで、一歩も先に進みません。
まずは、相手との関係を「客観的にとらえる」ことです。行動や発言の背景が理解できれば、相手を受け入れやすくなるのです。まずは、相手への理解を進めることが大切です。とはいえ、特別な手法があるわけでもなく、特殊なこともありません。先入観を取り除いて、相手の話を聞いて、わからなければ質問するということの繰り返しで、先に進むのです。「Z世代だから」、「若手と距離がありすぎるから」、「若手は違う思考を持っている」ではなく、1人の人間として「コミュニケーションをとる」というシンプルな考え方を持って、業務をすすめることが大事なのです。
やってはいけない!
マネジメントスタイルをアップデートしない
多くの会社で今、管理職、マネージャーの立場にいる上司は戸惑いを隠せないでいます。「上司の言うことは絶対」「我慢が肝心」など、自分がされてきたことと同じスタイルで部下に対してお説教でもしようものなら「パワハラですよ」「モラハラになりますよ」などと言われてしまいます。
つまり、上司が経験してきたやり方が、部下の世代には通用しないということです。そして、「どのように伝えることが正解なのか?」「何がギャップを感じさせているのか?」などの悩みは尽きません。
特に20代のZ世代といわれる人たちに根性論は通用しないのです。そして、どのような距離感を持てば良いのかもわからなくなってしまっているのです。
そこで、第一に考えることは、時代とともに上司である私たちも変わらなければならないということです。生まれ育った時代背景、景気の動向そしてインフラツールの大きな変化など、コミュニケーションの背景が時代によって大きく異なっています。まずは、その背景を意識することがポイントとなります。だから、今まで習ってきたマネジメントスタイルについて「このままでいいのか?」と疑うことから始めてみましょう。
そして、今までは上司から部下への指示を出すことで、部下が行動してくれましたが、今の部下は「なぜこれを行うのか?」と疑問を持ってしまったら、即行動とはならないのです。そんなとき、具体的にはどのようなことをすればよいのでしょうか? それは「話を徹底的に聞くこと」です。「聞くだけ、問題解決ですか?」と疑問が起こるかもしれませんが、「聞くこと」は意外に大変なのです。「話してくれる環境を整えて」、「話の途中に割って入らず」、さらに、「自分の意見を途中で押し付けないで最後まで聞くこと」を守ることは意識をしないとできません。さらに、話を聞くことは議論することとも違います。部下の話が漠然としていて、よくわからない話であれば、わからないということを素直に伝え、質問をしましょう。ここも、「話がわからない」と部下を否定するのではなく「言いたいことの解像度を上げるための質問」を行いましょう。これにより部下が「何を伝えたいのか」がクリアになってくるのです。ここまでやってコミュニケーションが完結します。
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