新型コロナの影響で客足が遠のいたり、原材料価格が高騰したりと、飲食業を取り巻く経営状況は厳しさを増している。経営者は、経営改善に向けてさまざまな対策に取り組んでいることだろう。経営を改善するためには、まずは収益の改善が必要だ。しかし消費者の財布のヒモも固くなっている状況下で原価増加分を価格に転嫁するのは、消費者離れを引き起こしかねない。

全体的なコスト削減に努め、収益改善に取り組むにはどうすればいいのだろうか。

目次

  1. 飲食業でコスト削減が求められている実態
  2. まずはコストの現状把握から
  3. 飲食店の経営指標と実態比較
    1. FL比率
    2. 売上高営業利益率
  4. 具体的なコスト削減方法
    1. 家賃
    2. 水道光熱費
    3. 仕入れ費
    4. 人件費
    5. リース費ほか
  5. コスト削減のカギは選択と集中
飲食業のコスト削減のキーワードは「選択と集中」
(画像=ComugneroSilvana/stock.adobe.com)

飲食業でコスト削減が求められている実態

まずは、飲食業界の現状を確認してみよう。経済産業省が公表している「2021年企業活動基本調査確報-2020年度実績-」によると、飲食サービス業の売上高営業利益率は2019年が3.7%だったのに対し、2020年では-2.7%となっており、6.4ポイントもダウンしている。ちなみに売上高営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合だ。計算式で表すと以下のようになる。

  • 売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

売上高営業利益率ダウンの理由は、売上高の低下と費用増加が主な要因。日本では、2020年1月15日に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の国内初となる感染者が確認され、またたく間に広まり、同年4月には緊急事態宣言が発令された。以後、政府や自治体による外出自粛要請が出されるとともに、飲食店へも営業時間の短縮など、業績に影響を与えるさまざまな要請が行われた。

2020年10月には、飲食店を支援する政府の「Go To Eatキャンペーン事業」が始まったが、勢いを増す感染拡大には対抗できず同年11月半ばに人数制限する動きとなった。なかには、開店休業状態であった店舗もあるのではないだろうか。

2022年2月下旬には、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、世界的に原料価格の高騰に見舞われる。2022年5月の企業物価指数は、前年同月に比べて9.1%も上回ることになった。こういった複合的な要因により厳しい経営状態に陥っている飲食業者は多いだろう。ロシア・ウクライナ情勢は、長引く見通しであるとともに、コロナ禍の飲食事業者への継続的な要請を出している自治体もある。

このような状況のなか今後も事業を維持・継続していくためには、売上高営業利益率の改善に向けたコスト削減が必須となってくる。