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日本ヘルスケア投資法人 <3308> が2014年11月5日に上場予定である。ヘルスケアREITが注目されている理由は、我が国の高齢化はいよいよピークを迎えつつあり、高齢者の安定した住まいの確保という観点から高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を2005年の0.9%から2020年には3~5%まで高める方針(「住生活基本計画」(2011年3月))が掲げられ、今後、有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅等のヘルスケア施設の供給を質、量の両面でいかに促進していくのかが、我が国の厳しい財政状況の中で重要な課題となっている。

このヘルスケア施設の拡充という課題に対しては、アベノミクスの第三の矢である“民間投資を喚起する成長戦略”として日本の個人金融資産約1,600兆円を如何に有効に活用していくのかという点からもヘルスケアREIT創設に向けての環境整備が進められ、すでに複数のヘルスケアREITの上場が予定されているのである。

ヘルスケアREITが上場し、不動産投資市場から直接資金を調達することができるようになれば、自己資金や間接金融等で資金を賄う場合と比べて、長期的に安定的なまとまった資金を調達することができるようになる。このことにより大規模なヘルスケア施設の供給が可能になる。また、資産運用会社がヘルスケア施設を所有して維持管理し、オペレーターは運営業務に専念できるようになり、つまり、所有と経営の分離により、サービスの質の向上が期待できる。さらに、ヘルスケア施設の市場が形成されることによりヘルスケア施設の流動性が高まるようになるからである。ちなみに、日本ヘルスケア投資法人のオペレーターは、ニチイ学館、ワタミの介護、さわやか倶楽部、スーパーコート、シダー、チャーム・ケア、日本介護医療センターとなっている。

投資家の立場から見ると、ヘルスケアREITは、ヘルスケア施設を長期的に保有して、他の投資対象に比べて相対的に安定性のあるキャッシュフローを供給する投資家に魅力的な投資対象であると考えられるばかりでなく、高齢化が進展し、政策的にヘルスケア施設の供給促進を行わなければならない我が国においては、ヘルスケアREITに対する投資は社会的意義が高い投資であると認識されている。

ヘルスケアREITのスキームを一般的なREITのスキームと比べると、一般的なREITのスキームではプロパティメネジメント会社が入るところに、ヘルスケアREITではオペレーターが入ることになる。プロパティマネジメント会社は最終顧客(入居者)との間の事務や運用対象不動産の維持・管理を主な目的としているのに対し、ヘルスケア施設のオペレーターは運用対象不動産を用いた事業としてヘルスケアサービスを最終顧客(施設入居者)に提供し、サービス料を受け取る点が特徴である。

このためにヘルスケアREITが得られる賃料の原資はこのサービス料ということになり、オペレーターの運用巧拙がヘルスケアREITの運用利回りに影響すると考えられる。このオペレーターの運営能力や経営破綻等のリスクを投資家が判断材料に使えるような情報開示が行われるかがヘルスケアREITの課題である。また賃料が介護保険給付等を原資とするために制度改正のリスク等を伴うことになる。

ヘルスケアREITの投資対象である有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅等は、他の投資対象施設に比べて、小規模な物件が多く、投資対象になりやすい大規模な物件が不足している。さらに特別な設備基準、用途変更が困難である等特殊な不動産であるために、オフィスや一般住宅等に比べて流動性が低いことが難点である。

深井 豊(ふかい・ゆたか)CFP、証券アナリスト、宅地建物取引主任者
ウェルスプランニング株式会社代表取締役、住宅ローンFP相談センター代表。ドイツ銀行で日本株PFをグローバルに提供、またヘッジファンド等で日本株の運用に従事。その後UBSで超富裕層に対するコンサルタント経て、ウェルスプランニング株式会社を設立。

会社URL: http://www.weplan.co.jp/

(ZUU online)

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