本記事は、齋藤孝氏の著書『呼吸がすべてを整える』(リベラル社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ビジネスマン,深呼吸
(画像=siro46/stock.adobe.com)

ネガティブ感情は呼吸でデトックス

怒りにワナワナと震える、イライラを我慢して歯をかみしめる、不安で手をキツくに握りしめる ―― ネガティブ感情を抱えているとき、人はたいてい身体がこわばっています。

そんなときに、その怒りや不安を臍下丹田せいかたんでんに下ろしていくイメージで、ゆっくり息を吐いてみましょう。こわばった身体がゆるんで力が抜けてきます。

臍下丹田を使って深く吐く呼吸には、ネガティブ感情を体外に排出する「メンタル・デトックス」という効果もあるのです。

呼吸でネガティブ感情をデトックスする。この発想に相通じているのが、野口整体の創始者・野口晴哉はるちかさんによる「邪気を吐く」ことで、停滞している気のめぐりを解消する方法です。

ポイントとなるのは「みぞおち」。

ムカついたりイライラしたとき、あるいは不安や心配事があるとき、みぞおちの辺りがキュッと締めつけられるように息苦しくなることがありませんか。ネガティブ感情にとらわれると、無意識のうちにみぞおち周辺が力んで固くなるのだそうです。

その固くなったみぞおちの力を抜いてリラックスさせることで「邪気」を追い出そうというのが、野口整体のアプローチです。

私が以前、通っていた野口整体の教室で教えてもらった「邪気の吐き方」をご紹介しましょう。


  1. 両手の指先をみぞおちに当て、鼻から息を吸います
  2. 息を吐きながら上体を倒し、両手の指をみぞおちにグーッと差し込んでいきます
  3. 深く吐ききれば、おでこが下に着きます
  4. 鼻で息を吸いながら上体を起こします

みぞおちに手なんか差し込んだら痛そうに思いますが、実際にやってみると大丈夫。それほど痛くありません。

大事なのはやはり、「ゆっくり」と行うことです。息といっしょに、心のなかにわだかまっているネガティブ感情を一切合切いっさいがっさい吐き出してしまう、そんなイメージです。

こうすると、固くなっていたみぞおちのあたりがゆるんで柔らかくなります。

おもしろいもので、これを何度か繰り返していると、どんよりと重苦しかった気分が軽くなってくる。本当にモヤモヤやイライラが身体の外に排出されて、心が浄化されてきます。先にも出てきた「まあ、いっか」の心持ちになってくるのです。

また、みぞおちは横隔膜に近いため、これをすると横隔膜も緩んでしなやかになり、呼吸がより深くなるというメリットもあります。

講演会などで会場の空気が固いときは、お客さんにこの呼吸法をやってもらうことがあります。「みなさん、みぞおちに手を置いて指先をグッと差し込んで~」「緊張を吐き出すように息を吐いて~」「はぁ~~」とやると、それだけでも緊張が解けて場の空気がほぐれます。お客さんの表情からも固さが消え、こちらの問いかけやジョークへの反応もよくなって、その後の講演もだいたい上手くいきます。

ネガティブ感情を抱えているとみぞおちは固くなる。ということは逆に、みぞおちが固くなっていると、気持ちはネガティブに傾きがちになるとも言えます。

そうならないためにも、普段から意識してこの呼吸法を実践し、みぞおちを柔らかく維持しておきましょう。

呼吸がすべてを整える
(画像=呼吸がすべてを整える)
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齋藤孝
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー作家、文化人として多くのメディアに登場。主な著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『知的な話し方が身につく 教養としての日本語』、『齋藤孝こころの教室 こども般若心経』(共にリベラル社)など多数。著書発行部数は1,000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

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