本記事は、内藤誼人氏の著書『世界最先端の研究が教える新事実 人間関係BEST100』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

相手が使っている言葉をそのまま使うと好印象

相手が使っている言葉をそのまま使うと好印象
(画像=Camerene P/peopleimages.com/stock.adobe.com)

人付き合いの上手な人は、相手に合わせて話し方を変えます。相手が話している言葉と、同じ言葉を使って話すのです。

お互いに、似たような言葉を使っていると、「身内」や「仲間」という意識が芽生えます。また、「こいつ、意外と自分と合うな」という気持ちを生み出すこともできます。ですから、人付き合いにおいては、なるべく相手と同じ言葉づかいをするのがポイントだといえるでしょう。

米国イエール大学のバラツ・コバクスによりますと、言葉の使い方が似ている人ほど、友人になりやすく、しかも強い結びつきを感じて、関係が長続きする傾向があるそうです。

「若者言葉が嫌い」という大人は多いと思うのですが、そういう嫌悪感があるから、若者と距離ができてしまうのではないでしょうか。

若い人と話すときには、若い人が使うような言葉を織り交ぜて話したほうが、「意外に、話のわかるおじさんだな」と思ってもらえるはずです。私は、社会人に話をするときには、基本的に丁寧な言葉を使うように心がけていますが、大学の先生もしているので、大学生に話しかけるときには、少しだけ砕けた話し方をするようにしています。

たとえば、社会人に心理学用語を説明するときには、「近接きんせつ性で、愛情が高まります」といった感じで話をしますが、若い学生には、「近くにいる人には、『きゅんです』」といった若者言葉を使います。少し古いかもしれませんが(笑)。いい年をしたおじさんが、「きゅんです」という言葉を使うのも気持ち悪いかもしれませんが、意外に学生からのウケがよいのです。

職場に若い新人が入ってきたとき、堅苦しい敬語をきちんと話せるように指導してあげることは大切だと思いますが、休憩時間などには、こちらも相手と同じような言葉を使って話しかけてあげると、喜ばれるかもしれません。文章でも、相手のスタイルに合わせるのがおススメです。相手が、お堅いビジネスメールを送ってきたときには、こちらも同じくらいきちんとしたメールを返信したほうが喜ばれるでしょう。わりとフランクな感じのメールを送ってきたときには、こちらも同じように「りょ~か~い(了解)」と多少はふざけた感じのメールのほうが、お互いの親密感を高めるのではないかと思われます。

もちろん、言葉を合わせたほうがいいかどうかは、ケース・バイ・ケースですので、どうしても砕けた感じにするのが苦手なのであれば、丁寧な言葉づかいで一貫しておきましょう。

だれに対しても、丁寧な言葉を使っていれば、好印象を与えることはあっても、嫌われることはないからです。

どんな話でもとりあえず笑っておけばOK

自分の意見を述べるのは、なかなか勇気がいることです。たとえば、会議において、「お前は、今度の計画について、どう思う?」と社長から尋ねられたとき、賛成したほうがいいのか、反対したほうがいいのか、迷うこともあるはずです。自分の素直な意見や感想を述べるのが、困難だと感じている人のために、ものすごくためになるアドバイスをしましょう。それは、とにかくどんな意見を言ってもいいので、「とりあえず笑っておけ」というアドバイスです(笑)。

なんだかいいかげんなアドバイスに聞こえるかもしれませんが、とんでもない。このアドバイスは、きちんと科学的な研究の裏づけがあるものなのです。

米国パデュー大学のヴィクター・オッタティは、ある男性議員が、女性レポーターの取材を受けているビデオを作成しました。議員もレポーターも、どちらも俳優が演じました。

男性議員は、デイケア、ホームレス問題、銃規制、麻薬などについて自分の意見を述べるのですが、このとき、無表情で語るバージョンと、笑顔で語るバージョンの2通りのビデオを作成しておきました。このビデオを238名の大学生に見せて評価してもらったところ、男性議員が無表情でしゃべっているときには、大学生たちは、話の内容をしっかりと吟味ぎんみしてから印象を決めようとしました。ところが、同じ男性議員が笑いながらしゃべっているときには、参加者は、話の内容などよく聞きませんでした。とにかくにこやかにしゃべっている、というだけで男性議員にいい印象を抱いたのです。結局のところ、ニコニコしながらしゃべれば、それが賛成であろうが、反対であろうが、保守的な意見であろうが、革新的な意見であろうが、あまり内容は関係ないのです。ただ笑っているだけで、好印象を与えるのです。

返答に困るような質問を受けたときには、とにかく笑って答えましょう。そうすれば、うまくその場を切り抜けることができます。私は、いろいろな人から相談を受けますが、正直なところ、まったく判断できない質問もよく受けます。「内藤先生、うちの商品AとBでは、どちらのほうが売れる見込みが高いと思いますか」といった質問です。

こういうときにこそ、笑って答えるのです。「いやあ、さっぱりわかりません。私はAだと思います。根拠はありませんが、私ならBは買わないと思います、アハハ」などと答えておくと、それが相手に気に入ってもらえる返答なのかどうかはわかりませんが、そんなに悪い印象は与えないものです。

そういえばテレビのトーク番組においても、司会者からなにを聞かれても、とりあえず笑って答えておけばOKという話を、有名人のだれかが言っていたように思います。いったいだれの言葉だったのか、思い出せなくて申し訳ありませんが……。

世界最先端の研究が教える新事実 人間関係BEST100
内藤誼人(ないとう・のりと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は釣りとガーデニング。

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